何故こうなってしまったのでしょうか?
「さっさとこの国から出ていけ!この悪役令嬢!」
そう言われると同時にポイッと馬車から捨てられた。
痛い。
せめてもう少し別の方法が無かったのだろうか。
普通に降ろすとか。
後ろを向くと馬車は既に遠くの方へと走っていってた。
まぁ足痛むから追いつけないけど。
さっき投げられた衝撃で痛むようだ。
捻ってないし別にいいのだけれども。
「何故こうなってしまったのでしょうか?」
リーリエ=エアデ。
エアデ侯爵の7人兄妹の末娘で、雪のような白髪と新緑の瞳を持った儚くも美しい、深窓の令嬢である……という噂が流れているが、実際自分からしてみれば、これは本当にただの噂でしか無いのだ。
確かにエアデ侯爵家の7人兄妹の末娘であり、容姿も大方間違ってはいない。
ただし儚くもは栄養不足で痩せ細ってるだけだし、美しいは兄姉達が美しいから一緒くたにされてるのであろう。
そもそも何時も前髪を伸ばして顔を隠して来たから家族以外が顔を見れる筈が無い。僅かに瞳が見える位のはずだ。
深窓の令嬢は単純に人間嫌いなのと茶会にはほぼ出席しないからだと思う。
あ、上記で栄養不足と言ったが別に虐待されてる訳じゃ無い。単純にお金が無くてご飯がロクに食べられないのである。
私が産まれる前に大きな干ばつがあり、お父様が領民を救うために侯爵家の全財産を使い、さらに多額の借金をしたそうだ。その後無事、領民のほとんどは救われ何とか持ちこたえたらしい。
そのかわり、エアデ侯爵家は簡単に返済できない様な多額の借金を負っているが、それは領民には言えない秘密である。
お父様やお兄様達はお城で高位の職や騎士に着いてるが、借金でほとんど返済に充ててるのでろくにお金がたまらない。
お姉様達は干ばつの前に全員嫁に行ったので、密かに支援はしてくれるもののまだまだ足りないという状況だ。
お母様と私は家で刺繍や畑を作ってご飯代を必死に稼いでいる。働かざる者食うべからずである。
そんな訳でよそ行きドレスなど用意出来ないので、笑われるのも嫌だからと基本的に茶会には行っていない。
行くのは王様達や公爵家のような自身より位の高い家が主催するような所か、政治的な関係で絶対に出なければならないという最低限の茶会や夜会位だ。
話が逸れそうなので残りの説明はすっ飛ばそう。
まぁ、何やかんやあっても人間歳は取るもので私もすでに15歳。この国では16歳が成人なので必死にドレス分のお金を貯めるために必死で夜もロクに寝ずに内職してる。隈と肌荒れがひどいので余計に外に出なくなった。
この外に出ないということを前提で話を聞いてほしい。
ある日、王族主催のパーティーに出席する事になり、姉のお古のドレスに刺繍や飾りをして、パーティーに行き、挨拶だけしてあとは壁の花になった。結果。
どうやら私はその時この国の第一王子に惚れられたらしく、婚約していたフォーイアー伯爵令嬢からは悪役令嬢扱いにされている……という話が茶会で話されてるらしい。
正直に言おう。
んなもん知るか。
何故挨拶しかしなかった相手に惚れる要素があるのだろうか、王族の思考がよくわからん。
私はその時は家に籠もって刺繍を続けていたので姉からの手紙で知った。
そして更に数ヶ月後。母と織物店に完成した刺繍を卸に行った帰り、いきなり路地に連れこまれ、馬車に押し込められ、冒頭のことにつながった。
馬車の中でその誘拐犯さんから話を聞くとなんでも町中でいちゃついてたらしい。
王子と私が。
いつの間にか私は外に出て王子といちゃついていたらしい。
私外出てないのに?出来るわけあるか?
そんな事してないと反論する前に、誘拐犯さん、私を森に捨てました。