食事
一階の食堂に降りると、すでに人でごった返していた。この宿は一階が食堂になっており、宿泊客以外でも食べられるようになっているため食事時になると近隣からも人が来る。冒険者ギルドからも近いため冒険者も多く集まってくるのだ。
僕は空いている席に座り、今日のお勧め料理を頼んだ。
お勧め料理は多く作ったメニューが提供されるためコストパフォーマンスがいいうえに出てくるのも早く、僕はほとんどがこの本日のお勧め料理を頼むことにしている。
軽くマンウオッチングをしていると、料理が運ばれてきた。
シュプフヌーデンというパスタにザワークラフトと肉汁の滴る厚切りの焼いたベーコンがついている。
フォークを取って、早速ベーコンを口にする。
厚切りのベーコンは噛むと口の中に香ばしい肉汁が広がり、肉と脂身のコンビネーションが口の中いっぱいに広がって一日の疲れを吹き飛ばしてくれる。
脂身が口にくどくなってきたら、ザワークラフトを口に運ぶ。酢漬けのキャベツの酸っぱさが脂身のくどさを洗い流し、肉のうまみだけを引き立たせてくれる。
もちろんキャベツの歯ごたえも心地いい。
野菜を食べると体にしみわたり、血が綺麗になる感じがする。冬の時期、野菜が不足していた時はひと月以上野菜が口にできなかったことがあり、その時は肉よりもパンよりもまず野菜がほしいと思ったものだ。
ひと月ぶりに野菜が食べられた時は、二日水が飲めなかった後に飲んだ水のような美味しさを感じた。
最後にシュプフヌーデンを口に運ぶ。茹でたジャガイモを小麦粉と混ぜて形を整え、ニョッキの形にして茹でた後炒めた料理で、茹でたジャガイモの柔らかさと炒めた香ばしさがマッチしていてとても美味しい。噛むと小麦の甘みとジャガイモのコクが混じり合って、至福のひと時を感じさせてくれる。
肉と野菜だけではなんとなく満足しなかったお腹が、急に満たされていく。
食べ終わると料金を払い、水場に行って房楊枝を使って歯を磨く。
歯を磨くのを怠ると口臭がひどくなるし、感染症にもかかりやすくなるそうだ。菓子を多食できる身分の人間は虫歯という歯が黒くなり激痛が走る病にかかることがあるそうで、召使に命じて特に念入りに歯を磨かせるらしい。
歯磨きが終わると自室に戻り、タオルで体をふく。
部屋着に着替えるとベッドに横になる。最近干していないので少し湿ったシーツにくるまって目を閉じた。