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第4話「瞬太郎、ありがとう!!」

花見の帰り道のことだ。

イケイケ君こと原沢が意外なことに俺に話しかけてきた。

「おう、葉山。元気だったか?」

そんなことを言うが俺は別に君と仲良かったわけでもないわけだ。どうしてそんなことを聞く?

という言葉を飲み込み、

「ああ、原沢か、中学2年の時以来だな。俺は元気だぞ。お前こそ元気そうじゃないか?」

中々無難な感じかついい感じの返答が出来たぞと、内心ガッツポーズをしていた。

「勿論だ、そういえばお前教室で蔵屋敷と話してたみたいだけど、仲いいのか?」

「え、いや別にそういう訳でもないが。俺が寝てたら、たまたま起こしてくれたみたいでな。というか俺は彼女と初対面だ、それにお前は俺がどんな奴か全く分からんという訳でもないだろう?」

ヘラヘラと笑いながら原沢にそう言うと、

「そうか。まぁ確かにお前は女子と絡めないタイプだったもんな、ハハハ」

こいつ、素で笑って馬鹿にしてやがる、とイラッとしたが種をまいたのは俺だ。

そこで会話を終わらせ、原沢は女子軍団の方へと行った。

というかどうしてあいつがわざわざ俺に話しかけるんだよ、しかも蔵屋敷の話まで?

「あれは、、利用できなさそうだね。」

俺が首をかしげてる横で瞬太郎が小さく笑ってそう言った。

「どういうことだ?」

「わからないのかい?真だって不自然に感じただろう?」

「そりゃいつもなら話しかけない俺に蔵屋敷の話題を振るとは、、、。」

とそこまで自分で言って分かった。そう、考えてみればなんで教室の喧騒の中、数秒話した俺と蔵屋敷を「都合よく」見ていて、それを俺に確認してきた。

「はぁ、、勘弁してくれよ、、。」

「強力なライバル出現ってことだね。」

何故か瞬太郎は愉快そうにニコニコしている。

「どうして笑ってんだよ。お前、レベル5のヒトカゲでチャンピオンに勝てると思ってるのか?」

「あはは、真がヒトカゲかい?」

「かもな、、。」

よりによって当たってはいけない相手に予選トーナメントで当たってしまうとは。

つくづく運が無いな。



学校に戻ったあと委員や係を決定、掃除をして解散となった。

俺は残り物の生物の係となった。因みにこのクラスにいる生き物は小さめの鯉だ、小学校かよ。

そして瞬太郎はクラス副委員長となった。

「さすが、その手腕で他のクラスとの交流を是非深めてくれ。」

と茶化すと瞬太郎は

「僕は外交官じゃない、せめてそれを頼むなら委員長に頼むことだね。」

とニヤリと笑った。

委員長は蔵屋敷、下馬評があったわけではないが他のクラスメートや雰囲気で決まる確率は高そうだと睨んでいたのだが、まさか圧勝で決まるとは。

そのため倍率が恐ろしく高くなった副委員長の席を勝ち取った瞬太郎はやはり只者では無い。

掃除も諸々終わりいざ帰らんとするところ、瞬太郎と蔵屋敷の声が聞こえた。

「相沢君、じゃあこのプリントと、籠を職員室に持ってくの手伝ってもらっていいかな?」

「、、、。」

「相沢君?」

「あ、ああ。あー、そうだ、、。ごめん、今日は外せない用事があるんだった。」

なんてやりとりをしてくれるのは非常にありがたいのだがよもやその代役を俺になんて______

「真、今日『君何も用事なかった』よね?頼んでいいかい?」

俺の背中に向けてそう言ってきた。

ちっ、わざわざ俺がビビッて逃げられないようにするとは、やはり侮りがたし。

俺はなんとか笑いを作って答える。

「ああ、瞬太郎、お前病院だったな。いいぞ。蔵屋敷さんは俺でも構わないかな?」

「ホント!助かる、ありがとう。じゃあ一緒に行こ。」

ああ、可愛い______。

などと少しばかり呆けていると瞬太郎が去り際に俺の肩をさりげなく叩く。

「気を付けなよぉ?」

恐らく、せっかく譲ったのだからヘマをするなよ、というなの意味だろう。

「分かってるよ。じゃあな、お前こそ気を付けて帰れよ。」

そう言って蔵屋敷の近くに置いてある荷物を適当に持ち上げた。

「あ、葉山君、私の分担の分まで持ってもらうのは悪いよ。」

「別にいいよ、これくらいなら重くないし。」

こうも取り繕ってはいるが内心心臓がバクバクである。このセリフでいいのだろうか、、。

「でも全部はさすがに、、。」

そう言って俺の持ってる荷物を申し訳なさそうに見る彼女の顔を見て妥協案を提示してみる。

「じゃあ、これだけ持ってもらっていい?これを持ってもらうと助かる。」

「う、うん分かった。ごめんね。」

そう彼女が言ってくれたから良かったものの、全部持ったら蔵屋敷いらないじゃん!!

あ、あぶねぇ。

この妥協案を出さなければ俺だけ職員室に行くという地獄のようなイベントに早変わりするところだった。

「ふぅ、、。」

職員室に向かう道でため息をつく。

「や、やっぱり大変だよね?私持つよ!汗もかいてるみたいだし、、。」

「あぁ、今のはそんなんじゃないから大丈夫。」

ため息は危険回避をした安堵、汗は極度の緊張からもたらされている為、嘘はついていない。

まだ手が震えるほどではないからそこは助かっている。

緊張で手が震えてるのか荷物による震えなのかなど他人から判別はつくまい、

そうでもしたら彼女が持つなどと言うことは目に見えている。

それは余りにもカッコ悪い。

しかし、、。

「・・・・」

「・・・・」


気まずい!!!

会話が無い!よくよく考えてみれば今日初めて会ったから会話のタネのようなものが全く思いつかない!

、、いや待て。初対面だからこそできる会話があるはずだ。考えろ、俺!

「・・・・」

ダメだ。昨日寝る前にやっていたギャルゲーのセリフしかよみがえってこない。

あぁ、やっぱり寝る前にやったことって脳に定着するんだなー明日から勉強に応用しないとー。

「葉山君は、どこの中学校なの?」

「あ、え?」

連想ゲームよろしくでアメリカ大陸に到達しようかという勢いの俺の思考は蔵屋敷の言葉を受け付けていなかった。

「ごめん、なんだっけ、ぼーっとしちゃって。」

「中学校、どこなのかなーって?」

「ああ、すぐ近くの梅田原ってとこだよ、蔵屋敷さんは?」

「ここからかなり離れた木屋根中学ってとこだよ。知らないんじゃない?」

確かにそんな名前は聞いたことが無かった。

「でも私小学校まではこっちにいたんだ。中学に行くとき事情があって引っ越すことになったの。」

「そうだったんだ、でも大変だよね?」

俺がそう言うと蔵屋敷は不思議そうな顔をする。

「え、どうして?」

「どうしてって、小学校の友達はあっちの中学校にいない訳でしょ?それに今回こっちの香木穴高校に来たってことはそっちの中学校の友達もあんまりいないでしょ?」

詳しくは知らないがきっと親の事情、というやつなのだろう。

卒業するたびに友達が大きく変わるのは俺には正直よくわからない、俺はそのまま中学に行ったし、高校も瞬太郎や仲良くはないが原沢、それに何人も知り合いがいる。

仲良くはないが知り合いがいるのと全くいないのとではやはり違いはあるだろう。

それに中学校に上がるときというのは普通地元の小学校の区域ごとにそのまま進学するからその木屋根というところではグループというものは形成されてたのではないだろうか?

そうなると孤独感を味わうことは十分ありうる。

そんなことをなんとなく伝えてみると、

「うーん、最初は確かにあんまり友達もいなかったけどいつの間にか皆優しくしてくれたし、先生もよくしてくれたからそんなに大変じゃなかったよ。それにこっち戻ってきて知り合いだった子と久しぶりに会ったこともあったしね。」

「へぇ、そんなもんなのか。」

というかこれくらい可愛くて元気で頭が良かったらそりゃ男女問わず人気になるわな。

「はぁ、、。」

「え、ワタシ変なこと言ったかな?」

「いやなに、ちょっとした自己嫌悪だ。いつものな。」

油断したのかいつもの軽口が飛び出る。

「いつも?」

「いや別に何でもない。気にしないでくれ。」

「・・そう?」

そんなことをしながら職員室で荷物を預け、瞬太郎の事は適当に話して俺たちは職員室を後にした。

「いや、ごめんね。本当に助かったよ。ありがとね!」

彼女はその大きな瞳を俺に向け、眩しいまでの笑顔も向けてくる。

うぉ、俺にはいい意味で刺激が強い。決して卑猥ではないぞ、うん。

「そんな大変なことでもないし、平気だよ。用事も滅多にないし何かあったらまた手伝うよ。」

そう言って俺は先に教室に戻ろうとしたのだが、

「あ、葉山君。家って5区の方だよね?一緒に帰ろ。」

「・・・・・あ、うん、いいよ。」

なんですって?一緒に帰る?王道キター!

と心の中でドジョウすくいでもやりそうな勢いの喜びを必死で抑え、俺たちは教室に戻った。


いやぁ、「都合いい」ですねぇ。

さぁ皆さんは違和感に気づきますか?

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