休日
開けた窓から狭いベランダに足を投げ出すように座り、郁子は洗濯が終わるのを待っていた。
彼女の足の横には、実家から持ってきた古い二層式洗濯機が窮屈に押し込まれている。かたかたと振動しながら、ときおり不機嫌なうなりをあげていた。
久しぶりの休みだった。いつもなら仕事なのだが、珍しくオーナーが旅行に出かけるため、郁子もおもいがけず二日も休みがもらえたのだ。
ゆっくりのんびりしよう。そう決めていたのに、早起きの習慣がすっかり染みついていた。
六時きっかりに目がさめてしまい、二度寝もできずに郁子はしかたなく起きあがる。
新聞はとってなく、部屋にはテレビもない。
ロールパンに賞味期限が一昨日までのプレスハムを挟んで朝食にした後、ハンドワイパーでフローリングを一周する。狭いワンルームだから、五分とかからない。
たまっていた洗濯物を洗濯機にほうりこむと、もうやることもなく、時間と暇を持て余すことになる。
うしろ手をついて見上げれば、青空が広がっている。
秋も終わりに近く風はひやりと冷たいが、いい天気だ。散歩がてら買い物に出るのもいいかもしれない。
脱水が終わった洗濯物を室内に干し、郁子は買うものを確認する。
トイレットペーパーが残り一個。お米はまだある。めんつゆはあと一回分くらい。牛乳。パン。安かったら紅茶のティーパッグも。
財布の残額も確認し、たたんだエコバッグをジーンズのポケットに入れ、郁子は家を出た。
歩いて十五分くらい先に、大きなドラッグストアがあり、いつもそこを利用している。
安いし、日用品から食料品まで大体のものはここだけでそろう。さすがに肉や魚の生鮮物はないが、郁子には調理する腕も時間もないので関係ない。
のんびりと歩きながら、つと郁子は首をかしげた。
やっと九時をすぎたところなのに、意外と多くの人が歩いている。
今日は三連休の初日。どこかでイベントでもあるのだろうか。そんな疑問はすぐ先の緑地公園でとけた。
入り口に大きな看板が立てられている。
『あおぞら市・フリーマーケット 九時~十五時 入場無料』
カラフルに塗られたその横で、そろいのハッピを着た人たちがチラシや風船を配り、声を上げていた。
家族連れやアベックが入っていく。大小の袋を提げた人が連れ立って出てくる。
どの顔もみな楽しそうに笑っていた。
郁子も誘われるように中へと足を向けた。
公園といっても、遊具があるわけでない。野外ステージがあり、広い芝生があり、景観よく木立が茂る。
イベントに利用されることも多く、今日はちょっとしたテント村のようだった。種々雑多な品物が売られていた。
子供服、おもちゃ、コミック、手作りのアクセサリーに、家具、古ぼけた電気の傘、なにかわからない大きな部品のようなもの――。
甘い匂いの屋台もある。ワッフル、カルメ焼き、ジェラート。
眺めているだけでなんだか楽しくなる光景に、郁子も頬をゆるめながらそぞろ歩いた。