6話(話を聞かない人は最悪だよね)
初めての依頼達成で良い気分だったのに!!!
カイムさんとアリーシャさんの二人と別れ、冒険者ギルドに向かう。
ギルドに着き、早速掲示板の前で薬草採取系の依頼を探す事にする。
「お~、結構色々あるなぁ。どれが良いかねぇ」
キョロキョロしながら、依頼書を選んでいる。
実はこの時と言うかギルドに入ってから、ギルド内に居た男達はさり気無くマティルダを見ているのだが。
本人は全然気がついていない、元々男のうえ病院暮らしで人に会う機会が少なく自分を見る視線に鈍感なのだ。
昨日の三人組みたいに、露骨に目の前で見られると流石に気が付くが。
それに加え、冒険者ギルドに来た1回目は人が少なく2回目はカイムが自然に男の視線を遮り、アリーシャが男の視線を集めていた。
そんな事情もあり、本人は見られているとも思わず呑気に依頼を選らんでいる。
「おいおい、えらく可愛い子じゃねぇか」
「お前ちょっと声掛けて来いよ」
「確かに可愛いが、胸がもっと大きい方が俺はいいな」
「馬鹿が、あのサイズが良いんだろうが。大きくも小さくもないサイズが」
「あの、手にギリギリ収まるかと言うサイズが最高だ」
「スパッツって良い物なんだな」
「同士よ」
「あのケツもいいなぁ、健康的じゃねぇか」
こんなアホな会話が男達の間でされているとも知らず、町を出て直ぐの森にある薬草採集を受注する事に。
丁度知識にある、薬草の採集依頼があったのだ。
その依頼書を掲示板から剥がし受付に持って行く。
「こんにちはアニムさん、この依頼を受けたいのですが」
「はい、こんにちは。リリエ草の採取ですね承りました、受理するのでギルドカードをお出しください」
ギルドカードを渡し、依頼の受注をする。
「この袋にリリエ草を入れて来て下さい、そう言えば今日はお仲間と一緒では無いのですね」
「うん、最初の1回は自分でやりたくてね」
「なるほど、大丈夫だとは思いますがお気をつけて。良い冒険を」
「いってきまーす」
アニムさんと別れ町の外に向かう。
ちなみに受けた依頼はこちら。
依頼内容:リリエ草を最低10本の採集
ランク:Fランク依頼
報酬:銀貨1枚(1000リプ)
備考:多めに取って来て下さっても結構です、追加で1本につき銅貨1枚(100リプ)をお支払い致します。
「よーし、初めての依頼頑張るぞ~」
町の外に出て気合を入れ、直ぐ傍の森に入る。
暫く森の中を散策していると、リリエ草は直ぐに見つかる。
「お~、案外簡単に見つかるねぇ。取り敢えず片っぱしから採集しますかぁ」
根を傷付かせない様に、優しく引っこ抜き土を落として渡された布袋に仕舞う。
「順調順調♪」
その後も2時間程森を散策し合計で27本を採集した。
「そろそろ、16時過ぎ位だろし戻ろうかな」
この世界には時計なんて便利な物は無い、6時間毎に鳴らされる町の鐘と日の高さで大体を把握するのだ。
町の入口まで戻り、門番にギルドカードを見せ町に入る。
ギルドに戻り依頼報告カウンターの人の列に並びながら、自分でも仕事が達成出来る事に内心凄く喜ぶマティルダだった。
病院暮らしの時は一人じゃほぼ何も出来なかった俺が、こうして誰かの助けになれる。
今日は良い日だなぁと、思いながらカウンターで依頼達成の報告し報酬を受け取る。
「はい、確認しました。リリエ草27本ですね、達成報酬の銀貨1枚と追加報酬の銀貨1枚に半銀貨1枚と銅貨2枚になります」
「どうもです~」
初の依頼達成である、良い気分でギルドから出ると昨日ナンパしてきた三人組にはち合わせた。
うぁ~最悪だ、折角良い気分のまま宿に帰ろうと思ったのに。
三人は少し驚いた表情をした後にニヤニヤしながら話しかけてきた。
「よぉ、昨日振りだなぁ」
「ひどいよねぇ、急に走って行ってしまうんだから」
「今日こそ俺らとパーティー組もうぜ、丁度ギルド前なんだしさ」
面倒だ凄く面倒だ。
「パーティ組む予定の人達が居るので無理です、それじゃさようなら」
横を通り過ぎようとするも、前に男の一人が立ち遮られてしまう。
「じゃあ、折角だから出会った記念に食事でもどうよ?」
「ちゃんと奢るぜ、美味いもん食べさしてやるからよ」
「早速行こうよ」
横に並んで来た男の一人に肩を抱き寄せられた。
ひいいぃぃ、触んな!。鳥肌が立つ!。
男に抱き寄せられる趣味は無い!!!。
「やめろっ!、触んな!気持ち悪い!」
思わず突き飛ばしてしまった、しかも少し素が出た。
「いてて、あー突き飛ばされちゃった」
「おいおい、大丈夫かぁこれは駄目だなぁ」
「君にはこいつの看病もして貰わないとなぁ」
ニヤニヤしながらアホな事を言いだした、看病するほど怪我なんかしてないだろうに。
なんと言うか、事故に遭う前の子供の時に見たドラマのチンピラまんまだなぁ。
「看病するほど怪我なんてしてないでしょう、それとも女に突き飛ばされて怪我するほど軟弱なんですか?」
「てめぇ、調子に乗るなよ」
「女だからって良い気になってんじゃねぇぞ」
「いいねぇ、その気の強い所ベッドの上で泣かせたくなるよ」
騒がしくしてるので、だんだん人が集まり出した。
「チッ、おら来い。しっかり教育してやるよ」
「やめろっ、放せ」
クソッ力じゃ完全に負けてるな、どうする身体強化魔法は人が多すぎて使いたくないし。
「やめたまえ、その子が嫌がってるじゃないか」
俺と男達に話しかけてくる奴が居た。
白の綺麗な鎧を着た、騎士とか言われたら納得しそうな金髪イケメン。
「彼女の手を離したまえ、これ以上僕の目の前で女性に対する狼藉は許さない」
何やら、とてもナルシスト臭がする人だな。
「んだぁ、お前は俺達はこれでもEランク冒険者だぞ」
「俺達とやろってのか」
「ふん、お前達の様な野蛮な者に名乗りたくは無いが」
「僕の名前はビリー・ライオット、このサンテの町と周辺の領地を国王より任されたライオット男爵家の次男だ」
貴族か初めて見たな、この世界で家名があるのは貴族だけである。
「貴族かよ、クソッ行くぞ」
男達は悔しそうにしながら悪態をつき去って行った。
「大丈夫でしたか?、あなたの様な美しいお嬢さんを無理矢理連れて行こうとは」
「まったく無粋な男達だ」
キザと言うか何と言うか・・・貴族ってこんななの?。
「助けて頂いて、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げておく、礼儀はちゃんと守らないとね。
「気にする事はないよ、貴族として当然の事をしたまでだ」
「さて、それじゃ行こうか」
自然に俺の手を取り、歩き始める。
え?、行くって何処に?。
「あの、何処にですか?」
「君の家にさ、今日はギルドに依頼書の出しに来たのだろう」
「それで君の家は何処だい?」
「私は依頼書を出しに行った訳では無くて、依頼完了の報告に行ってたんです。冒険者ですよ私は」
俺の格好見て気がつけよ、どう見ても冒険者でしょうに。
「へぇ、そうなのかい。君の様に美しい子が冒険者か」
うわぁ~なんか嫌だ、この人苦手かもしれん。
「それじゃ、宿屋かな?。どこの宿に泊まってるんだい?、送って行くよ」
「いえ、一人で大丈夫です」
これ以上は関わりたくないよ。
「照れてるのかい?、大丈夫さ君もとても美しいよ。僕と並んでも違和感なんてないさ」
「はっ?、いえ本当に一人で平気なので大丈夫です」
「ふふ、恥ずかしがる君も可愛いね。さぁおいで」
恥ずかしがってないです、呆れてるんです。
あれだ、この人は人の話聞かない人だしかも思った通りナルシストぽい。
非常に苦手な人種だ。
しかも、おいでって何だよその広げた腕の中にでも行けと?行かないよ。
さっさと送って貰って別れよう。
「宿は『憩いの場』って言う所です、場所はここから真っ直ぐ行けば見えてきます」
さっさと歩いて行こう。
「そうかい、じゃあ行こうか僕は貴族だけど遠慮なんてしなくて良いんだよ」
うえぇ~、誰かこの勘違い野郎を何とかしてくれぇ。
「それにしても、君の様な子が冒険者か。何か事情でもあるのかい?」
「事情も何も無いです、なりたくて冒険者になったんです」
「教えてはくれないのかい、平気だよ僕は君の全てを受け止めるよ?」
この人の頭の中で俺は一体どう言う事になってるんだ・・・・・・。
「良い事を思いついた、冒険者なんて辞めて僕の傍付きのメイドにならないかい?」
「そうすれば僕の事が良く分かる様になるから、事情も話しやすいと思うんだ」
頭の中に虫でも湧いてるんじゃないかこの人は。
こんな貴族で大丈夫か?。
「大丈夫だ、問題無い」
「え、なんですか急に?」
「いや、何でも無いよ言わなきゃ駄目だとガイアが僕に囁いたんだ」
ガイアって何だよ・・・・。
「それにしても・・・この歳まで生きてきて、君の様に美しい人を見たのは初めてだよ」
「そうですか、ありがとうございます」
スルーしようそうしよう。
「しまった、僕とした事が忘れていたよ。君の名前を教えてくれないかい?」
言いたくない、凄い言いたくない。
よし、逃げよう。
「あ、もう宿が見えてるので失礼しますね。それじゃ!!!」
バトルドッグから逃げてた時以上に必死に走る。
後ろから大きな声が聞こえた。
「名前を聞かせてくれ!、いや!。何時か君を僕が救ってみせる!!!、その時に改めて名前を聞かせて欲しい!」
聞こえなかった事にして走る。
救ってみせるって・・・・一体俺は何から救われるんだ・・・・人の話を聞かない所か自分でストーリー作ってないかあの人。
あの人の事は考えない様にして、宿に入り受付のおっちゃんに挨拶する。
「ただいまです」
「おう、お帰り。依頼はうまくいったかい?」
「はい、依頼はちゃんとうまくいきました」
「そうかい、それは良かった。連れの二人の内男の方は居ないがエロい姉さんなら部屋にいるぞ」
「分かりました、部屋に戻りますね」
「おつかれさん~」
それにしても、エロい姉さんって・・・確かにアリーシャさんはグラマーな体型だけど。
「ただいまです~」
「おかえりなさい~」
部屋の中には普段着を着崩したエロい人が本を読んでいた。
アリーシャさんだった。
「アリーシャさん、服が凄いです。ちゃんと着て下さい」
「ん~部屋だから良いのよぉ」
そう言いつつ服をちゃんと着るエロ・・もといアリーシャさん。
なんかアリーシャさんも最初にあった頃からだいぶキャラ変わってきたなぁ。
まあ、素を出してくれてると思っておこう。
「あら、疲れた顔してるわねぇ。どうしたの?依頼がうまくいかなかった?」
「いえ、依頼はちゃんとうまく出来ました」
「依頼『は』?って事はそれ以外は駄目だったの?」
うぉぉ、宿のおっちゃんは気が付かなかったのに。
「あ~昨日のナンパ三人組にまた絡まれまして」
「む、大丈夫だった?」
ちょっと険しい顔になるアリーシャさん。
「はい、それは助けてくれた人が居たので平気でしたが・・・」
「なになに?、男だった?惚れちゃった?」
今度はニヤニヤしだした。
「その人はライオット男爵家の次男さんだったのですが」
「ほぉほぉ、貴族ねぇここら辺の領主ね。それからそれから?」
やっぱり、アリーシャさんもこう言う話は例に漏れず好きなのね。
凄く良い笑顔だ。
「その人が何と言うか・・人の話を聞かない人で私が事情があって冒険者しているとか言いだしまして」
「面倒だったので逃げてきました」
「あら、それは何と言うかご愁傷様?」
「折角の初依頼達成で良い気分だったのに台無しですよ」
はぁ~とため息をつく俺。
「しかも、さらに勘違いしたのか。私を何時か救うので、その時に名前を教えて欲しいとか逃げてる時に大声で言ってました」
「あらあらあら、それはアレね。確実に惚れられたポイわね」
「考えない様にしてたのにぃぃ、はっきり言わないでくださいよ」
「うあぁ~、会わない様に頑張って逃げますよ」
「いざとなったら助けてあげるわよ、家の子に相応しいか見定めないとね!」
いつから俺はアリーシャさん家の子になったのやら・・・。
まあ、良いか。なんだかんだ言っても助けてくれるだろうし。
そんな話をしている内にカイムさんも帰って来て、今日も一日が終わる。
明日からは三人での活動が始まるのだ、今日の疲れを残さない為にも早く寝て明日に備えよう。
マティルダの現在の所持金:11700リプ(銀貨10枚・半銀貨1枚・銅貨12枚)
ビリー君はまた出てきます。
まあ、分かってるとは思いますがレギュラーにはなりません。