11話(酒の前では隠し事は出来ない)
ほのぼの?な話になってるかな?
あの後は町に戻り、ギルドに事の顛末を報告し報酬を貰って今は診療所の様な所で腕を見て貰っている所である。
「ふむ、良かったのぉ骨が腕から飛び出んで。これなら普通に骨折の治療だけで良さそうじゃ」
70歳位のお爺ちゃん先生の言葉を聞きつつ思う。
(飛び出るて・・・・怖い事言わないでくれよ先生)。
「全治5週間、一ヵ月弱じゃな」
「分かりました、ありがとうございました先生」
「なに、これが仕事じゃ」
「失礼しました」
「うむ、また何かあれば来ると良い」
挨拶をし室内から待合室の様な場所に移動するとカイムさんとアリーシャさんが待っていた。
「どうだった?」
「大体一ヵ月ちょいで治るそうですよ」
「ん~どうしましょうかねぇ?」
「何がです?」
「私とカイムは元々王都を目指してたのは知ってるでしょ?、それでこの町に留まっていた理由も片付いた訳だし、そろそろ向かおうかと思ったのだけれど」
「良いですね!、行きましょう。私も王都には行ってみたいです」
「良いのか?、マティの怪我が完治するまで町に居ても良いんだぞ?」
「平気ですよ、派手に動かさなければ良いですし。それに王都になら腕の治療出来る魔法使える人が居るでしょうから」
「まあ、そうねぇ。王都までは3週間位だしね途中の町や村にも治癒術師が居るかもしれないわね」
「確かにな、その可能性はあるし王都になら治療出来る奴は居るだろう」
「なら決定ですね!」
王都に向かう事が決定したので明日から準備に取り掛かる事になるのだった。
「取り敢えず、今日は早めに宿に戻るか」
「そうですねぇ、流石に疲れました」
「私も疲れたわねぇ」
「明日は壊れた盾の変えも買いに行かないとなぁ」
「そうだ、この町には教会は無いですけど、王都に行く途中にはありますよね?」
「おう、あるぜ。この町から二つだったか三つ先の町にな」
「マティちゃん、前にこの町に教会あるかとか聞いてたわね。リプリース教の信者なの?」
リプリース教とは、この世界唯一の宗教である。
この世界に生きられる事を感謝しましょう的なゆるい教会だ、特に国政に係わるなどと言った事は無い。
「信者って事は無いのですけど・・・まあ、ちょっとお祈りしたいんですよ」
流石に神様と話したいなどとは言えないマティルダ。
「ふぅん」
「そう言えば、二人は王都に行く途中でしたよね。何しに行くんですか?」
「ん、特に何かをする訳じゅないさ、辺境じゃあんまり良い依頼が無くてな王都なら人が多いし貴族も多い、その分金払いも良い依頼が多いのさ」
「なるほどです」
「平たく言えば金稼ぎね、まあお金には困ってないんだけどねぇ。あって困る物じゃないしね」
何か理由があるかと思いきや特に無かった二人である。
そろそろ、宿に着くと所でカイムが言った。
「今日の夜は酒でも飲むかぁ!」
「おおぉ!、良いですね私は初めて飲みますけど楽しみです」
「そう言えばマティちゃんは飲んだ事が無いって言ってたわね」
「はい、今から夕食が楽しみです」
「ははは、今日位は良いだろう飲みまくるかぁ」
本当なら骨折や怪我している時の飲酒は控えた方が良いが、そんな事を気にする者はここには居ないし、マティルダはそもそも知らない。
「んじゃ、一旦部屋に戻って夕食の時間になれば俺が呼びに行く」
「分かりましたぁ、私も部屋でステータスの確認とかしたいと思います」
「私は仮眠でも取ろうかしらねぇ」
宿屋に入り、部屋の前で別れ各々夕食まで時間をつぶす事になったのである。
アリーシャとマティルダは部屋に入り、まず服を着替える事にした。
マティルダはいつもの白のワンピースに、アリーシャは踝までのマキシスカートにシャツの上から薄い水色のカーディガンと言う服装。
「それじゃあ、私は少し横になるわねぇ」
「はーい」
そう言うとカーディガンを羽織ったままベッドに横になるアリーシャ。
(あれだと寝辛くないだろうか・・・)
そう思ったが何も言わないマティルダ。
(さて、俺はステータスでも見るかな)
頭でステータスと念じウィンドウを出す。
名前:マティルダ
年齢:16
性別:女
種族:人族(未確定)
職業:強化者
レベル:23
HP:560
MP:600
筋力:31
頑丈:20+5
敏捷:60+5
知力:45
器用:40
運:3+50
ステータスポイント:25
スキル:『剣術Lv2』『強化刻印』『鑑定』『双剣剣舞』『ステータスポイント振り分け』
魔法:『治癒魔法Lv2』『身体強化魔法Lv2』
称号:なし
加護:『光ったお爺さんの加護』
装備:フラムベルク(刻印)・鉄の胸当て(刻印)・鉄の籠手[破損](刻印)・革のブーツ(刻印)・アイテムポーチ・ショートソード(サブ)
「およ?、なんかスキル増えとるし鉄の籠手の破損って・・・ああ、盾は砕けて駄目になったけど籠手はひしゃげたから破損か、それに器用の+5が消えてるのも籠手の破損の所為かな?」
「さてさてぇ~、スキルの性能はどんなのかなぁ」
ウィンドウの双剣剣舞をつつく。
双剣剣舞:双剣時のみ敵対者に対し挑発の効果、また敵対して居ない者には目を引いたり良い印象を持たれる等極々軽い魅了の効果。
(なるほど、バトルドッグとの戦闘で取得したのかな?、あの時は必至だったしなぁ)
基本的にはこの世界のスキルは職業での適正でしか取得出来ないが、稀に使用している武器などのスキルを取得する事がある。
その条件については解明されていない。
(でも、滅多にあんな事態にはならないだろうし・・・実質死にスキル?)
その後、ステータスポイントをバランス良く全部に5づつ振り、カイムが呼びに来るまでマティルダも軽く仮眠を取るのだった。
微睡んでいると、カイムの自分達を呼ぶ声が聞こえたので返事をしアリーシャと二人で一階に向かう事にした。
「おう、来たな二人共!、適当に酒も頼んどいたぞ」
「ありがとうございます」
「ありがと」
「どんな味かなぁ楽しみだなぁ」
「飲み過ぎて酔っぱらうなよ」
「流石にそれは無いですよぉ」
雑談をしながら酒が来るのを待つ三人。
「またせたなぁ~、ほれエールにワインと果実酒だ」
そう言って、おっちゃんがカイムの前にエールをアリーシャの前にワインをマティルダの前に果実酒を置いて厨房に下がって行った。
「私は果実酒ですか?」
「まぁ、まずは軽い所からだな」
「初めて飲むんだしねぇ」
「まあ、そうですね。飲んでみます」
コクと少し喉を鳴らし、果実酒を飲んでみる。
地球で言うサクランボの味のお酒だった、この世界だとチェリの実が見た目そのままサクランボだが同じ物なのかどうかが分からないマティルダ。
「美味しいですね、これは何の味です?」
「それは、チェリの実ねぇ甘くて飲みやすいのよ」
(おお、合ってた)
「すきっ腹に飲んでると直ぐに酔っちまうからな、適当に何かつまみながら飲め」
「分かりましたぁ」
言われた通りにナッツの様な実や、モウスの肉を燻した物など色々とつまみながらお酒を飲む。
「んぅ~、初めて飲みましたけど・・・本当に美味しいですねぇ」
「そうか、気にいったなら良かった」
「まあ、まだ果実酒しか飲んでませんけどね」
「これ飲んだら次はワインを飲んでみたいです」
「おう、じゃんじゃん飲め」
その後も、色々と食べながら飲み段々と時間が過ぎて行った。
「・・・・・」
「・・・・・」
「きいてぇ~まゆか~キャイムさん!」
「・・・・・」
「しょの・・・きんにくがぁ」
「ねぇ」
「なんだ?」
「どうしてこうなったのかしら?」
「すまん、俺が飲ませすぎた・・・」
最初の内はカイムも自重してアルコール度数の低い物を飲ませていたが、だんだんと色々飲ませる内に悪乗りし今の状況が出来あがった。
「ふちゃりとも!」
「ん?」
「おう」
急に椅子から立ち上がると、カイムの椅子の上に座る。
つまりは膝の上である、対面座位である。
傍から見ると、赤毛イケメンに跨って身体を弄る金髪美少女。
「おおお?」
「あらあらあら」
「こにょ、きんにゃく(筋肉)がでしゅよ」
「何で、さっきから筋肉の話しばっかりなんだよ・・」
「あれかしら、マティちゃんは筋肉フェチなのかしら?」
「それよりも膝の上よカイム」
「お、おう」
「どうかしら?」
「な・・・何がだ?」
「感触とか?」
「も、黙秘でお願いします」
「私がお風呂で身体を洗ってあげる時は柔らかかったわぁ、すべすべだし」
「お前は俺を焚きつけて、どうする気ですか!?」
「ん~本気で何かしたら怒るけど?、明日マティちゃんが自分が何をしてたか教えたら面白そうだなぁと」
「ついでにカイムが、照れてたって教えて逆に照れるマティちゃんがみたいなぁとか?」
「ろくでもない事を考えてますね!」
何故か敬語になるカイムと依然としてカイムの膝の上に陣取り筋肉の話しをするマティルダに色々駄目なアリーシャ。
結構カオスな場が出来あがっていた。
「まあ良いわ、でも変な事しちゃ駄目よ?」
「するかっ!」
「こにょ!!」
「うおっ!」
何を思ったがマティルダはカイムの服を捲り、腹筋を触り始めた。
「ちょおまっ、待て何してる!?」
「あらあら~」
ペタペタさわさわと撫でたり腹筋を押したり等々やりたい放題である。
「いいにゃ~、きんにゃく(筋肉)・・・おへ(俺)だって」
「うおぉ。これは・・・」
「変な事考えちゃ駄目よ」
「いや、これは・・・色々キツイんだが?」
右往左往するカイムに、少し怖い雰囲気を醸し出すアリーシャ。
そんな、二人の様子にも気が付かず喋り出したマティルダ。
だが、その内容は二人には予想だにしない物だった。
「おれだっちぇ、こにょせかい(世界)にくりゅまえに・・・じこ(事故)であるけにゃくなっちぇなければ」
「何だと?」
「マティちゃん?」
「ちゃんとした、けんこうにゃからだだったら」
「おれだっへ、きんにくあっちゃはずにゃのに・・・」
「せめちぇ、おちょこ(男)だったら・・・にゃんで・・・おんな(女)になっちゃたんら・・・」
酔いの所為で、ずっと隠していた事をぽろっと話してしまう。
「あるけりゅ様になっちゃにょは良いけにょね、からだが・・・おんにゃになちゃたのがにゃぁ」
「くしょぉ・・・くしょぉ・・」
そのままカイムの膝の上で泣きながら寝てしまった。
マティルダは考えない様にしていただけで、女になった事を仕方ないと思いつつも悲しんでいた。
その思いが、お酒に酔って素の言葉と素の心として出てしまった。
「どう言う意味だ?」
「さあ?、それに自分の事を俺って言ってたわね今」
「この世界に来る前とか歩けなかったとか、どう言う意味だったんだろうな」
「さあねぇ、女の子になったとかも言ってたわねぇ」
「意味がわからねぇな・・・」
「そうね、でもその内話してくれるかもしれないわね」
「聞かなくて良いのか?」
「まだ、一緒にパーティー組んで10日位だけど信頼関係は築けてるとは思うの。それでも話してくれないのはよっぽどの事よきっと」
「まあ、そうだな・・・」
「それより、部屋に寝かしに行きましょうか」
「そうだな、まさか膝の上で寝るとわ思わなかった」
「ふふふ、少し役得かしら?、でも変な事したら本当に怒るからね?」
「だから、そんな事しねぇっての。お前にとってマティが妹なら俺にとっても妹みたいなもんなんだよ」
「分かってるわよ、冗談よ冗談」
冗談と言いつつ、膝の上で身体を弄られている時の自分を見る目が笑って居なかった事をカイムは思い出していた。
(俺も少し危なかったけどな・・・)
カイムも流石に美少女に膝の上に乗られ身体を弄られて反応しないのは難しい。
取り敢えず食事代を払い、マティルダを部屋に寝かせて今日の酒宴は終わるのだった。
変更したステータスなどは次の後書きで表記したいと思います。
読んでくれてありがとうございました。
少しタイトルを変更しようか悩んでいます、今のタイトルは思いつかなくて適当につけた物なので。
もしかしたら変更するかもしれませんが、これからも宜しくお願い致します。