10話(決着)
遅くなりました。
誤字脱字が在りましたら、教えて頂けると嬉しいです。
「ザコとは言えこの数はヤバイ、軽く50を超えてやがる!」
リトルフェンリルの攻撃を防ぎ距離を取りながらカイムさんが叫ぶ。
「どうすっクソがっ!!」
喋る暇も無く、リトルフェンリルが襲いかかってくる。
どうする?、どうするのが正解だ?
バトルドッグに合流されると不味い・・・。
幾らカイムさんでもリトルフェンリルを引きつけながら、バトルドッグの相手は無理だ。
確実に乱戦になる、アリーシャさんの属性魔法は強力だけど乱戦には向かない。
「カイムさんっ!、バトルドッグが来るのはリトルフェンリルが来た方向ですか?」
「そうだっ!!」
なら、俺が行くしかない。
「アリーシャさんはカイムさんのフォローを!、私はバトルドッグを引き受けます!」
「大丈夫なのね?」
「はい、敏捷強化魔法を使えば敏捷に限りAランク冒険者に並びます」
「分かったわ」
「身体強化魔法を使ってから行きますね!」
カイムさんに2個目の頑丈強化のガードブーストを、アリーシャさんと自分には敏捷強化のスピードブーストをそれぞれ使い。
一気にカイムさんが攻撃を仕掛けるタイミングでリトルフェンリルの横を走り抜ける。
「二人とも死なないで下さいね!」
「任せとけ!」
「平気よ、マティちゃんも直ぐ終わらせて来るのよ!」
横を通り過ぎ、バトルドッグを目指す。後ろは振り返らない、あの二人なら大丈夫だと信じてる。
お互いに邪魔にならない様に、二人も戦いながら移動している様だ。
戦闘音が遠くなってきた所で、此方に走ってくるバトルドッグの先頭が見えた。
「直ぐに全滅させてやる!!!」
向うはまだ攻撃しようとはしていない、走る速度を急激に上げすれ違いざまに先頭の一匹の頭を剣で突き殺す。
「つぎぃぃ!」
どんどん走ってくるバトルドッグを、剣で突き時には斬り次々に屍を増やす。
攻撃しようとするバトルドッグも居るが、マティルダの速度に反応が追い付いていない。
「あああぁ!!!」
クソッ、多いな。
今やフラムベルクだけで無く、攻撃に蹴りやサブ武器のショートソードすら抜いて二刀流スタイル。
その状態で二人の所に敵が行かない様に、引きつける様にワザと声を出したり大げさな動きを織り交ぜながらの攻撃。
その、おかげでバトルドッグ達はマティルダに引きつけられている。
「このまま、数を減らせば勝ちだ!」
早く早く二人に合流しないと、いくら二人でもアレ(リトルフェンリル)はヤバイ。
負けるとは思わない、でも怪我をしないとも思えない。
数は減った後数匹、もう少しで終わりだ。
そう、思った時に気が付いた、残った四匹は少しバトルドッグと違う。
毛色が少し黒い?、そう思い鑑定を使う。
名前:ブラックウルフ
種族:狼魔獣
レベル:14
備考:狼系の魔物で、バトルドッグやバトルウルフなど下位の狼魔獣を纏める存在。
だが、自分よりも上位の狼魔獣が現れた時にはボスの座を譲る賢さを持つ。
「ここにきて、新しい魔獣かよ」
バトルドッグに紛れて気が付くと、既に四匹に囲まれて居る状況になっていた。
「確かに頭は良さそうかな」
チラリと後ろを見つつ呟く。
「一匹ずつ殺るしかないか」
「ハァァ!!」
左手のショートソードで前方の、ブラックウルフの顔に向けて剣を振るう。
その攻撃は歯で噛み付かれて受け止められるも、その攻撃を囮に後ろから跳びかかって来た方の頭を右手のフタムベルクで刺し貫く。
剣を左手から放し、右側から足を狙って攻撃してくるブラックウルフの身体を蹴り。
その反動で身体の向きを変え、右手の剣を瞬時に左手に持ち替え左側のブラックウルフを斬りつけながら横を走り抜ける。
「ハァハァ・・、後三匹か」
ショートソードを銜えていたブラックウルフが剣を口から捨て。
斬られ怪我をした一匹を庇う様に間に入って来た。
「ガウゥゥアアァ!!」
蹴られたブラックウルフが怒りながらも足に噛み付こうと走ってくる。
それと同時に無傷のブラックウルフも後ろから走ってついて来る。
足に跳びつこうと身を屈めた瞬間、後ろから付いてきた方が前のブラックドッグを踏み台に跳びかかってくる。
「なっ、あっぶ!! ハァ!」
なんとか盾で跳びかかって来た方を防ぎ、足を攻撃して来た方を剣を地面に突き立て自ら剣に跳びこませる。
「ギャウゥゥ」
自ら剣に跳びこみ一匹が絶命する。
地面から剣を引き抜き。
「後、二匹・・」
怪我をしているブラックウルフに走る途中で、さっき捨てられたショートソードを拾い投げつける。
直ぐに後ろに振り返り、追って来たブラックウルフの攻撃を盾で防ぎ、剣で腹を下から身を屈めて刺し殺す。
「ハァハァ・・フウゥゥゥ・・・終わった・・」
「早く、戻ろう」
身体の感覚的にまだ強化の効果は切れて無い、10分は経ってないと言う事だ。
ショートソードを回収し二人の元へと向かう。
何処だろう?、来た道の方に耳を澄ませながら戻る。
少し遠くから、何かがぶつかる音が聞こえた。
「あっちか」
走って音が聞こえた場所を目指すしながら、二人の無事を願う。
やがて少し開けた森の広場の様な所で、リトルフェンリルと対峙する二人が見えた。
「良かった無事だった」
広場に突入し、二人の様子と相手の様子を確認する。
カイムもアリーシャも服装が乱れ擦り傷などはあるが、酷い怪我はしていない。
逆にリトルフェンリルの方は、白銀の毛並みに所々血が滲んでいる。
「カイムさんアリーシャさん無事ですか?」
「おうさ!、マティの魔法のおかげでヒデェ怪我はしてねぇよ」
「おかえり、マティちゃん。そっちも無事ね」
「はい、私は大丈夫です」
リトルフェンリルは合流した俺を見て、様子見をしている様だ。
「ヒール!」
二人の傍に寄りヒールを二回使い怪我を治す。
「うし、細かい怪我も治ったな」
「私はカイムが挑発してくれるから、怪我らしい怪我は無かったけどね」
「さて、あとはアレ(リトルフェンリル)だけです!」
「おうよ、行くぞ野郎共!」
「はい!」
「ちょっと、私とマティちゃんは女よ」
あ、俺も一応女だ。
まあ、良いか。
「ッダリャアアア!!」
「ハァァ!!」
カイムが正面から斬り掛かり、その攻撃に合わせマティルダが素早く横に回り腹を突く。
「ガルゥゥギャゥウウ!!!」
カイムの攻撃を前足の爪で弾き、マティルダの突きを身を捻って尻尾で迎撃。
尻尾で叩かれ地面を転がるマティルダ。
「ゲホゲホッ、いったぁぁ」
「大丈夫か?」
「はい、平気です。後ろに跳んで避け様としたんですがカスリました」
カスっただけで地面を転がる程の衝撃である、魔法で強化されたカイムの筋力と頑丈で無ければ攻撃を防ぐのは難しいだろう。
「正直、直撃だと私は上手く武器や盾で防いでも骨は確実に折れますね。下手すれば死にます」
「だろうな、俺でも正面から攻撃受止めると衝撃がキツイ」
「それでも、やるしか無いんですけどねっ!」
「だな!」
「ウィンドアロー!」
今度はアリーシャの風魔法に合わせてカイムとマティルダが左右から攻撃しようとするも。
リトルフェンリルがカイムの後ろにジャンプして攻撃を避ける。
「グルゥアァァ!!」
「ウィンドボール!」
そのまま、カイムに噛み付こうとするも、もう一度アリーシャが放った風魔法が腹に当たり僅かに動きが鈍くなった所を避ける。
「この、クソったれが!!」
避けながら下から掬いあげる様に剣を振るい、リトルフェンリルの頭を斬り付け左目を斬った。
「グギャルゥゥ」
「よし、これでアイツの左側は隙が出来る筈だ」
「ガァァァァ!!!」
左目を斬られたリトルフェンリルが狂った様に攻撃しだした。
「キレやがった!、来るぞ!」
カイムに前足で土を散弾の様に飛ばし、直ぐにカイムに向かって走り出す。
「うおぉ、くお、の野郎!!」
「カイムさん!」
カイムをフォローする為にマティルダも走り出す。
クソ、強化魔法が切れてる!、間に合うか?。
「ああぁぁ!!!」
カイムをリトルフェンリルの攻撃がくるギリギリ前に突き飛ばし、自分は左手の盾で防ぐ。
「ギャウウウ!!」
リトルフェンリルの攻撃を食らった盾は砕け散り、マティルダも吹き飛ばされ木に激突し止まる。
「あうぅ、ゲフゲホッ」
何とか気を失う事は無かったが、攻撃を受けた左手は折れてしまっている。
「マティ!!」
「マティちゃん!!」
「だい・・じょ・です」
「大丈夫じゃねぇだろ!、腕折れてるだろそれ!」
「マティちゃんは自分にヒールして!」
「ヒー・・ル!」
言われた通りに自分にヒールをするも、ヒールでは折れた腕は元に戻らない。
骨折は最低治癒魔法Lv3のハイヒールが必要である、ちなみに治癒魔法Lv2で覚えるのは異常状態回復のリフレッシュ。
折れた腕にショートソードを添え木にスカートを破りその布で縛る。
ヒールのおかげで何とか動ける所まで回復する事が出来た。
「カイムさんアリーシャさん、アイツの足止めて!」
「おい!、動いて良いのか?」
「まかせて、マティちゃん!」
「しゃーないか、まかせとけ!」
カイムが突っ込み、アリーシャが魔法を使う、そしてマティルダはカイムの少し後を走る。
「ウオリャァァァ!!!」
リトルフェンリルが右足でカイムを弾き飛ばそうとした時。
「スピードブースト!」
マティルダがカイムに敏捷強化を掛けた。
カイムは右足での攻撃を当たる瞬間に身を屈め、足の下を潜り抜け左足に剣を突き立てた。
「ギャウウゥゥ」
「アリーシャ!」
「ええ!、もう森が燃えても良いわ!良くも家の子に怪我させたわね!!!」
「ファイアアロー!」
アリーシャの火魔法が顔に命中する。
「ガアアアア!!!」
「これで、終わりだあああぁぁぁ!!!」
最後にマティルダがカイムを踏み台にしリトルフェンリルの身体の上に乗り、頭を剣で突き刺した。
「ガギャウゥ」
ズシーンとリトルフェンリルの巨体が地に沈む。
「ハァァァァ・・・終わった・・・」
「やっとか・・流石にフェンリルの子供名だけあったな、もう既にBランク相当のだろコイツの討伐は」
「そうねぇ、流石に疲れたわ。MPもスッカラカンよ」
「同じくMPもう50位しか無いです」
「マティ腕はどうだ?」
「私の使える治癒魔法じゃLv的に骨折は直せないですね」
「そうか、町に戻ったら取り敢えず医者だな」
「そうねぇ、サンテの町じゃハイヒール使える人なんて居ないだろうから普通に医者に見せるしかないわねぇ」
「分かりました」
ダランとショートソードを縛り付けただけの腕をアリーシャさんがちゃんとした布で首から吊ってくれた。
三人でリトルフェンリルの素材を剥いで居ると、アビーさんと援軍の冒険者達が来てくれたので俺が倒したバトルドッグとブラックウルフに素材を剥ぎ終わったリトルフェンリルの後始末を頼み先に町に帰らして貰う事になった。
「それじゃ、すいませんが後を頼みますねアビーさん」
「はい、後は僕達に任せて下さい。サンテの冒険者ギルドに報告をお願いします」
「んじゃ戻るか、早くマティも医者に見せないとな」
「そうね、私も今日は疲れたわぁ」
「私も疲れました、そうだ聞いて下さいよ。Lvが今日の戦闘で一気に5も上がりましたよ」
「ほぉ、流石にあの数のバトルドッグにリトルフェンリルに止め刺せばそんだけ上がるか」
「ですねぇ」
三人で雑談しながらサンテの町に戻る。
読んで頂きありがとうございました。
この後は少しほのぼの回を挟んで1章終りになります。
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