1st chapter - III
「なあ、山田、次の第三学区の生徒総会、総選挙、出馬するのか?」
山田のクラスメイト・有原レイが問いかけた。
否、山田が答えた。山田は今年の猛者月に十八を迎える。聖騎士団騎士団規約では二十歳になれば重要役職からは卒業となり、割りかし自由が与えられるのだ。騎士世界白金級昇格試験まであとふた月、無理は許されない。
「あとは全て理長に任せようと思います。年は十二だけど、しっかりしている。あの子はかなり優秀だから」
ええ、有原が頷いた。
「確かに優秀だな。彼女は飛び級こそ無しだが、全ての階級で一発合格している。これから伸びそうだな」
山田が椅子に座った。
すると引戸が開いた。私はお辞儀をする。
「ここにいましたか、山田さん」
ええ、山田が答えた。
「おう、アリア。元気か?」
「お陰様で元気です。今日から第七百九十六代第三学区生徒会の始動となりますね」
ああ、山田は頷いた。
「なあ、アリア」
なんでしょうか、アリアは駆け寄った。
「一寸話がある」
私はキョトンとした。
「来る双児月十日に騎士世界白金級昇格試験がある。それに、私の相棒として参加して欲しい」
「あの、私で良いんですか? もっと優秀な人いるでしょう? 例えば、有原さんとか」
「有原は既に黄玉級だからな」
なるほど、そうだな。アリアは思った。現段階で騎士長と騎士階級が同じ黄金級なのは、アリアだけだった。
「そうですか」
アリアはつぶやいた。
ええ、と有原はいった。
「だから、貴女には、山田を無事に黄金級に昇格出来るように手助けして頂きたい。特別報酬は百万両だ」
「報酬を与えるのはどうかと思うのだが……」
「それは、まあ、なんでもないんだ」
そうか、アリアは言った。
「これは『任務』ということで宜しいのですね」
「ああ、そういうことだな……」