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薔薇庭園

「ではお嬢様、用意ができましたら声をおかけくださいませ」


「うん……」


なんで? 前と同じになっちゃったみたいじゃんか。私は宇宙が出て行った扉の方をみながらしばらくその場に立ち尽くしていた。


「用意しよう」


私は誰にいったわけでもないが声に出した。そして鏡の前にいった。 髪は上半分だけを少しすくい、小さな宝石がついたゴムで縛った。宇宙と話したかった。お母さんに話すのはやっぱちょっと気が引けるし……。とか思いながらもワンピースに腕を通した。


「宇宙、開けるわよ」


ワンテンポ遅らせてドアを開けた。


「お嬢様、今日もまた美しいですね」


やっぱ違う。こんな宇宙やだ……。今日は宇宙と行動しなくて正解かも。


「そうね、お母さんは?」


私は少し前を歩く宇宙に話しかけた。無愛想になってしまう。脳では気づいているのに。今宇宙と話さないとダメだって。何か嫌なことが起こりそうだって。わかっているのだけれど行動できない。


「薔薇庭園にいらっしゃるようです」


あそこは……。嫌……考えちゃだめ。


「そっ……か……」


特に話題もなく歩いていった。状況が悪化していないか? 最初に会ったときよりも。


「お嬢様、僕は何があってもお嬢様をお守りします」


宇宙は薔薇庭園に着き、薔薇庭園への扉を開きそこに立った。私が扉を潜ろうとしたとき、そう言葉を発した。宇宙の顔を見ると、またあの曇った笑顔で言ってきた。


「宇宙、自分だけで抱え込まないで」


私はそれだけをいい、お母さんの元に急いだ。目からは透明な雫が一粒零れ落ちた。


「どうして? どうしてこんなに苦しめられなきゃ駄目なの……」


私は歩きながらそう言っていた。するとお母さんのところについたみたいでお母さんが絢女、と声をかけてきた。


「お母さん……」


「絢女、絢女。ごめんなさい。貴方はきっともっと他の家庭に生まれた方が幸せだった。なのに……」


やめて、この家で十分幸せだよっていいたいのに、口をガムテープで止められたみたいで動かない。言ってはいけない、そんな気がした。言えた言葉は全然思ってなかった言葉だ。


「お母さん、宇宙は辞めないよね? ねぇ、やだよ。婚約者になるなんて。辞めないよね?」


違うよ、私は何を言っているの。宇宙は辞めない……辞めないよ。自分で自分に言い聞かせた。


「絢女、落ち着いて。星野くんは辞めないわよ。北条さんと同じになるわけではないわ。ただ……」


何? 次に発する言葉は? 私は今すぐにでも耳を塞ぎたかった。聞いては何かが変わってしまう。


「今はまだ言えないのだけれど、絢女、貴方はね……きっとこれから先、宇宙と嫌というほど一緒にいるわ」


それは、どういうこと?


「じゃあ、行きましょうか」


お母さん……それは二人っきりってこと? 宇宙が、今日お母さんと行動してと言ったことと関係しているの?

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