第三話「レベルアップ?」
「じゃあ、お前・・・気がついたらここにきてたってことか・・・?」
唖然とした顔でつぶやく男の人に、あたしも神妙な顔でうなづいた。
口は悪いけど、いい人そうなその男の人に、あたしはすべてを話したのだ。いや、話したといっても、あたし自身何が起きたのかよくわかっていないので、話すことも少なかったのだけど。
あたしは、もともとの世界ではいわゆる学生という身分だったこと。
普通に過ごしていたら、なぜかこんな不思議なところで寝ていて、おまけにゲームとかでしか拝見できないようなおかしなモンスターに襲われたこと。
そして無一文で、この世界がどのような世界で、そしてこれから何をすればいいのか全くわからない状態だということ。
それらすべてを話すと、男の人は唇を噛んだ。
「使者・・・か・・・?」
へ?
な、なんかかっこいい言い方されましたけど、実際あたしただの迷子なんで。なるべく地味にそっとしておいてもらえればいいんですけど。
・・・でも、あれ?なんかおかしい。
こんな状態になったら、普通はすぐ家に帰りたいとか、こんな世界にいたくない、とか思うはずなのに。不思議なことに、今あたしは全然不安を感じていない。
逆に、元の世界に戻りたくないとすら思っている。
・・・いや、こんなこといったら、下の世界に友達いないさみしい子みたいになっちゃうから!と焦って自分の言葉を取り消そうとしてみる。
学校には仲のいい友達だっていっぱいいたし、別に孤独なんて感じたことなかった。普通の女の子だったら、
早く帰りたーい、なんてなるほど非常識な展開ではある。
なのになぜ、あたしはこんなにこの世界に順応しようとしているのだろうか。
「・・・ああー、考えるのやめ!こんなこと考えてたら暗くなる!!」
そんなに考えるのは好きじゃないし、そもそもあたしの脳みそには全然しわがないんだ。くだらないことでしわを刻むわけにはいかない。
そんな気持ちで頭をぶんぶん振りながら叫ぶと、男の人が心配そうな顔でこちらをみやってきた。
「お前、頭大丈夫か・・・?」
「い、いや!だから大丈夫だってば!そんなかわいそうな子を見るような目で見ないでください!」
「ならいいんだが・・・使者は、記憶喪失になっていることもあると聞く。お前、この世界にくるまで何をしていたかとか、記憶あるか?」
「・・・・・・」
「おい、まさか、」
「いや、ある!あるから!」
男の人のかわいそうな顔に耐えられなくて、必死に記憶を手繰り寄せようとする。
えっと、昨日は確かー・・・
「そうだ、土曜だったから、朝は少し遅めに起きて、朝昼一緒に美味しい作って、食べて・・・・そんで、」
「そんで?」
「花、買いにいったんだ。病院にお見舞・・・・・っ」
言いかけた途端、脳裏に鋭い痛みが走った。脳みそが火にあぶられたかのような、どこか生々しい痛みだ。
「いっ、た・・・」
「おい、大丈夫か」
崩れかけた上体を支えてくれた彼にうなづいたものの、生々しい痛みはあとをひく。少し落ち着いてから、あたしはまた口を開いた。
「わ・・・わからない。あたし、病院にいったところまでは覚えているんだけど・・・」
「そこに何をしにいったのか、とかは全くわからないってことか?」
「・・・記憶が、飛んでる。何かに邪魔されてる、みたいな・・・」
「決まりだ」
一層低められた声が、あたしをまっすぐ見つめていった。
「お前は、使者だ」
♪たらららったらー
迷子から使者にレベルアップした!




