第80話・崩壊、その後……
長くなりすぎたので二つに分けました。
切り離した話を今日明日中に投稿します。
俺は軽い痛みにより目が覚めたが、その痛みは一時的なものではなく持続的に続いている。
そして、目を開けたにも関わらず辺りは真っ暗で何も見えない。
恐らく、城の崩壊で瓦礫の中に生き埋めになった感じだろう。
不幸中の幸いで大きな瓦礫が幾つも重なり、丁度俺が倒れた範囲に空間が出来た様だ。
ガラッと小さな瓦礫が落下した音が聞こえたのと同時に俺の目の前に小さな隙間が出来たと共に光が差し込んできた。
ただ、これは日の光ではなく、どちらかというと赤々と燃えている火の光といった所だろう。
そして、その光のお陰で俺の周辺がどうなっているのか大体分った。
辺りを見回すと立つ程度なら問題ないほどの高さがある様だ。
俺はうつ伏せになった状態から両腕を地面に付け起き上がろうとしたが、巧く行かず仰向けに転がった。
先ほどから感覚のない左腕に視線を向けると左肘から先がなく、瓦礫によって押し潰され千切れていた。
持続的に痛みが続いていたのは、こういう訳だったんだな。
このまま放置すると死にかねない程ダメージを受けていたので、腰に装備したポーチから緊急用のHPポーションと包帯を取り出し応急処置をした。
生憎、ポーションの瓶には耐久値などが設定されていないので割れるなどはしない。
取り合えず状況把握だ。
周りの瓦礫を軽く叩いてみる。
どれも軽い音ではなく重い音で、力任せには出られない様だ。
まぁ、格闘術などを使えればまた違っていただろう。
次は耳を澄まし、隙間から外の音を拾う。
誰かが戦っている音、瓦礫が崩れる音、燃えている音、誰かの呻き声……大体この四種が聞こえる。
次は、パーティメンバーおよびレイドメンバーの生存確認だ。
画面上部に意識を集中させると、リザルト画面の様にプレイヤーの名前とHP・SP・MPとバフ・デバフ効果のアイコンが出現した。
ちなみに、パーティメンバー表は、集中しなくても小さく画面上部に出っ放しだ。
「……」
状況は絶望的という言葉がしっくりくる状況だ。
城が崩壊する前のレイドメンバーは百四十名近くいた筈なのに、現生存者は約八十名ぐらい戦闘開始前の半分しかいない。
その上、八十名の内、三十名のHPがレッドゾーンつまり瀕死状態か気絶状態で、回復役である法術師は全員戦闘不能だ。
それ以外のプレイヤーは、恐らくだがサタンと戦っているのだろう。
一人ずつ確実に減っていっている。
法術師がいない事のでジリ貧は間違いなく、このままだとほぼ敗北へまっしぐらだ。
◆◆◆
何も出来ないまま十数分経った。
鈍い打撃音と共に瓦礫が砕ける音と崩れる音が辺りから鳴り響いた。
ほんの少し空いていた隙間が大きく広がり外の様子を見る事が出来る様になった。
しかし、脱出出来るほど大きくはない。
外の様子を伺うとサタンを取り囲む様に生き残ったプレイヤーと戦闘不能になったプレイヤーが倒れている。
正に地獄絵図といったところで皆満身創痍だ。
『深緑』のメンバーで生き残ったのは、アヤカ、クロイツ、エミリアさん、モニカさんの四人だ。
そして、俺の様に戦闘不能にはなっていないが、生き埋めになっているのがヴィルヘルムさん、エーツーさん、マティアスさん、ベアトリスさん、そして俺の五人。
すでに戦闘不能になっているのが、ヘンリックさん、ジナ、アイリスさん、エレナさんの四人だ。
「くそっ」
みんながあそこで戦っているのに俺はそれに参加出来ず見る事しか出来ない。
誰が指揮をしていうるのだろう、炎が燃え盛る音が混ざっている上に瓦礫内にある幾つもの空間で反響していて分らない。
少なくとも生き埋めになっているヴィルヘルムさんやトリスタンさんではない。
アイさんかレオンさんあたりだろうが、アイさんは見えているが指揮をしている様子はない。
サタンへ攻撃を加えているが一向に効いている様には見えない。
まぁ、あのサタンの苦しんでいる表情なんて想像すら出来ないが……。
『百槍』の集中攻撃を跳ね返した『鏡面のリラックス』の後、再び『絶望のモストマスキュラー』をサタンは使った。
そして、もう落下死はなくなったが、右・左からのアッパーによる三連撃によって多くのプレイヤーは為す術なく吹っ飛ばされて行く。
数人のプレイヤーが瓦礫に直撃した様な音が瓦礫内に反響して響く。
そして、これによって俺の行く手を阻んでいる瓦礫がまた少しずれる。
もう少しで出られる。
けど、その時には外にいるプレイヤーが全滅している可能性がある。
すでに残り五十名にまでなっており、外にいるプレイヤーは二十名ほどという事になる。
しかし、そのほとんどがHPだけでなくSPやMPも底に付きかけている。
中にはSPもしくはMPが切れて気絶している者もいる。
その時、獣の咆哮と思われる叫び声が反響しながら聞こえた。
それと同時に獣人のプレイヤーが一斉にサタンへ飛び掛った。
恐らくは、獣化だ。
敵味方の判別が出来なくなるが、圧倒的な力を一時的に得る事が出来る。
これで勝てれば御の字だが、後で仲間同士の殺し合いが待っている。
負ければ、俺達レイドの敗北が決まるだろう。
獣人達の暴力の風を受けながらもサタンは、一層楽しそうな表情をしながら彼らを倒していく。
やはり、敵わなかった様で、サタンの一撃目を耐えているが二撃目で力尽きている。
全ての獣人が戦闘不能となり、外にいるメンバーは残り十五名ほどとなる。
外の様子を伺っているいるが、戦闘が開始する様子はなく静寂が続いている。
そして、戦闘不能となっていたレイドメンバーが、次々と王都シドレードへ戻って行っていた。
つまり、サタンとの戦闘は敗北に終わったという事だ。
外で何とか生き残ったメンバーはまだ良い。
俺の様に生き埋めになったメンバーは、自力で出られない今、外からの助けを待たなければならない。
外のメンバーにその余力が残っていれば良いが、無ければ外からの救出をひたすら待つしかない。
もうちょっと自由に動ける空間であったならば、自力でも可能なのだが、最悪、瓦礫の中で餓死か自爆で死に戻りだな。
どうやってここを出ようかと思案中、久しぶりの電子音が鳴った。
オラクルクエストだ。




