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E/O  作者: たま。
oβ・クラン
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第67話・龍の聖域Ⅱ

「て、撤退」


 ワイバーンの猛攻の中、隣にいるモニカさんとその先にいるクロイツに合図を送る。

 とは言え、囲まれている為そう簡単に撤退出来る状況ではないと思う。

 俺の合図に二人は無言で頷く。

 そして、後退りしながら猛攻の隙を伺う。


「クロイツが先頭で、モニカさんは致命的な攻撃にのみ対処、ボクは殿しんがりをする」

「それなら俺がしn「この状況で隊列を変えられないよ」……わかった」


 俺としても殿しんがりなんて危険なポジションにいたくはないが、階段を登る際に先頭を歩いていたので仕方がないと言える。

 

 ほんの一瞬だったがワイバーンの猛攻が途絶えた気がした。


「走れ!!」


 俺はこの機会を逃さない為にワイバーンの羽音に負けないボリュームで叫んだ。

 クロイツは、走りながら愛銃であるショットガンを前に突き出し、退路を妨げるワイバーンに対して一撃で倒せる距離まで引き付けて撃つ。

 狙いは正確無比と言い切っても問題ないほど頭部のみ確実に撃ち抜いていた。

 モニカさんの出番があるとすればクロイツがリロードに入った時ぐらいではないだろうかと思われる。

 これなら何とかなりそうだ。

 

 ま、俺が背中を守りきれればの話ではあるが……。

 二人がある程度離れたのを見計らい、使用武器を『嵐山』に切り替えて全力の抜刀術を繰り出す。


『壱式抜刀術』


 至近距離にいる前と右のワイバーンには、斬撃と鎌鼬の二重攻撃で葬り、その後ろで攻撃準備に入っていたワイバーンには鎌鼬による牽制をする、

 流石に鎌鼬だけで倒せるとは思っていないが、少しでも階段を下りる時間を稼げる。

 クロイツ達には、距離が離れている事や段差もあるので間違っても鎌鼬に当たる事はないだろう。

 鎌鼬が都合の良い事に多くのワイバーンを惹きつける事が出来た様でクロイツ達に固執している数はそんなに多くはない。

 代わりに俺が脱出するチャンスもそれだけ失われているけどな。


 いっそ、逃げられないなら派手に暴れまわってやろう。


『捌式抜刀術』


 様子を伺っていたワイバーンの内、早々攻撃に転じてきた個体に対してカウンター技で一閃した。

 後期習得技かつカウンターによるクリティカルはワイバーンを一撃で倒した。

 カウンターが空中で発動した為、俺の体も空中にある。

 着地してから技を使う余裕はないので、そのまま次の技へ移る。

 パーティメンバーが二人戦闘不能になった効果でテンションが良い感じに上がっている。


『零式抜刀術』


 ウンターガング戦と違い今度は空中で繰り出す。

 ついでに狙いを単一から複数に切替え……まぁ、切り替える動作なんて必要ないが……。

 手近のワイバーンに対しての残像+抜刀術による第一撃目を与える。

 この技の唯一弱点は、相手が複数だと標的の選択が完全なランダムの所だろう。

 第二撃目以降は、何の法則性もない完全なランダム攻撃となったが、自分に近い所から順に攻撃するので明後日の方向へ攻撃する事はない。


 そして、最後の第九撃目は、今まで攻撃した八頭のワイバーンを桜吹雪を纏った鎌鼬が巻き込みながら地上へ叩き付ける。

 特大の鎌鼬が地上に触れると暴発した様に辺りに桜吹雪を纏った小さな鎌鼬が散らばる。

 抜刀術での攻撃で悪くても瀕死にまで追い込み、最後の暴発によって切り刻まれ完全に絶命していった。

 攻撃が当たっていないワイバーンにも散らばった鎌鼬が牽制の役割を果してくれた様で一時的にだが、俺の周囲から僅かながら遠のく。


 当然、俺はこのチャンスを逃す訳もなく、技硬直が治まり次第すぐに地上へ向けて階段を駆け抜けた。

 けど、逃げ切れそうにない。


「チィッ」


 階段は、幹の周囲を螺旋階段の様に配置されている為、”ほぼ”直線的な動きしか出来ない『縮地法』では、駆け下りる事が出来ない。

 使ったとしても途中で曲がり切れず落下死となる可能性が高い。

 E/Oのキャラが幾ら身体能力が高いと言っても限界がある。

 流石にこの高さは死ねる。


 というか、前からもワイバーンが来た……。

 それはそうか、俺は階段に沿ってしか移動出来ないに対し、奴らは空中を飛んでいる為、三次元的な動きが出来る。

 虚を突かれたが、この程度!


『捌式抜刀術』


 ワイバーンの噛み付き攻撃を蜃気楼と共に消え、抜刀術で両断する。

 前から攻撃してくれたお陰で、技による移動分の距離を稼ぐ事が出来、後方からまだ追って来ているワイバーンとの距離が少し離れる。


◆◆◆


 賢いワイバーンは、前方あるいは上空からの強襲に移りつつあったが、 それらを何とか回避や『捌式抜刀術』を駆使し、順調に階段を下りる事が出来ている。


 が、それもそろそろ終わりを告げようとしていた。

 初めから分っていた事なのだが、数が多すぎる。

 超必の『零式抜刀術』や『捌式抜刀術』の乱発と全力ダッシュによるSPの消費が思いの外大きい。


 つまり、SPが切れそうです。

 乱発しまくった『捌式抜刀術』のお陰で、大分ワイバーンの数を削れたと思うけど、それでも精々半分といった所だろう。

 

 大分、下まで来ているし、ダメージ覚悟で飛び降りるか……。

 果てさて、ワイバーンはどこまで追ってくるだろうか。

 下りきり木を離れても追って来たら詰み確定だな。

 

 っと、あまり悠長に考えている暇はないな。

 俺は意を決して階段から地上へ向けて飛び降りた。


 流石にまだ高かった様でHPの四分の一が一気に減った。

 そして、上を見上げる。


「……詰んだ……」


 まだ、追い掛けて来てるよ。

 パッと見た感じ四・五匹程度に見えるがそれ以上追ってきているかもしれない。

 

「くそ」


 俺は悪態をつけながら逃げる方向を見る。

 ボスエリア外と思われる高原入り口の向こうにいたクロイツとモニカさんと目が合う。


「アキラ! もう少しだ」

「アキラ姉さん、早く!!」


 若干諦めた気持ちを奮い立たせ俺は足に力を入れた。


『縮地法』


 俺は一気に高原入り口へ駆け抜けた……筈だった。

 完全に発動する前に俺の右足首を最も早く追いついたワイバーンが咥えていた。

 迷っている暇はない。


『炎の妖精よ。フェアリーボール』


 初級魔術とは言え、至近距離で頭部に当たればダメージはそれなりに与える筈だ。

 炎の魔術は、一応上級も使えるが上級魔術の詠唱文を唱えている暇がない。


 期待した道理、頭部にダメージを食らった事で足首を一瞬だが放した。

 ここで逃げ切れるなら良かったのだが、『縮地法』の発動を待って貰える程の距離ではない所に三匹のワイバーンが迫っていた。

 

 まずは、右の方から口を大きく開け噛み付こうとしているワイバーンを標的にする。


『伍式抜刀術』


 抜いた刀の柄頭でワイバーンの眉間を打つ。

 カウンター気味に入った攻撃は、致命傷ではなかったがスタンに陥れる事に成功する。

 今は時間がないので殺す必要はなく、そのまま放置した。

 次は、何時の間にか前に回りこんでいたワイバーンに標的を変更する。

 ワイバーンの位置は、微妙な高さだ。

 漆式では技発動が若干遅い、弐式では高さが足りない。

 余裕はそんなにもないが、それならばと俺はタイミングを計り、『参式抜刀術』を放つ。

 以前は、魔術を防ぐ為に使った衝撃波を、今度は攻撃として使う。

 俺の間合いに入ってすぐに放たれた衝撃波がワイバーンの鎌首を切断した。

 

 抜いた刀を鞘に納め、次は左から来るワイバーンに備える。

 ここまでは順調だったが、まぁそう簡単に事は進んでくれない。

 標的を左の奴に合わせた瞬間、予想よりも早く近付いており俺の左肩に噛み付いた。

 咄嗟に刀を抜き噛み付いていたワイバーンに攻撃するが、無理な体勢かつ技として発動しない攻撃では噛まれている肩から放す程のダメージを与えられない。

 闇雲に攻撃しても埒がないのだが、左肩の痛みが増すばかりで成果がない。

 しばらくして、『出血』の状態異常が画面に現れると共に視界全体が薄い赤で点滅し出す。

 それに伴い微量であるがHPゲージも少しずつ減っているのが分る。

 唯でさえ、ワイバーンによる幾多の攻撃や落下ダメージ・噛み付き攻撃で、HPゲージは半分以下になろうとしていたのに『出血』による継続ダメージは拙い。


「くっ……」


 離れろ!

 左肩から骨が砕ける様な音がし出す。

 本格的にヤバくなってきたかも知れない。

 あまり長引くとスタンしていたワイバーンが復活する。

 そうなると絶望的な状況になってしまう。

 とは言え、不幸中の幸いと言うべきか俺を追いかけていたワイバーンの生き残りは、今噛み付いている奴とスタンしている奴の二頭にしかいない。

 これを乗り越えればなんとかなるが、……皮膚は裂け骨が完全に砕け残すは筋となる。

 ワイバーンは、完全に食い千切ろうと後方へ鎌首を振るう。

 ここで状態異常の『出血』が『大出血』に変化し、視界全体が赤い点滅から常に視界が赤い状態になる。

 痛覚抑制限界つまり耐えられるギリギリの痛みなんじゃないかと思う。


「くぅああぁぁぁぁ!!」 


 ブチブチと厭な音が耳に響く。


「「アキラ(姉さん)!!」」


 左腕が食い千切られたのとほぼ同じタイミングで、この状況を見兼ねた二人がわざわざ安全地帯から戻ってくる。

 そして、クロイツはショットガンで俺の腕を食い千切ったワイバーンの頭部をヘッドショットし仕留める。

 モニカさんは、スタンから回復しそうだったワイバーンの頭部へ二本の短槍を突き刺し仕留めた。


 俺は二人に抱えられ安全地帯へ向けて駆け出した所で意識を手放した。

アキラはまだ戦闘不能でも死んでもいません。

状態異常が、『気絶』になりました。

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