第26話・選択肢が多いのも困る
「いや~、待っていたよ」
翌日ログインすると早速スロゥスの元へ強制連行されてしまった。
ゲーム内時間5日ほど経っているので、「まだ来ないのか?」を始め様々な小言や嫌味をハイアとヴェルは言われたらしい。
ログインするなりハイアが「さぁ、行くぞ」と用件も言わなかったので余程の事だろう。
ヴェルに関しては何も言わなかったが、明らかに不機嫌だった。
でだ。
最初に戻る訳なのだが…謁見の間に通された俺を待っていたスロゥスは言葉とは裏腹に額には青筋を立てていた。
「君が闘技場で優勝してからもう5日…やっと来ましたか」
と言われましても入社以来皆勤を貫いていた俺に仕事を休むという選択肢はない。
「まぁ、それはさておき…」
あ、そう言えばクエスト内容を確認しないとな…。
★オラクルクエスト『力の発現Ⅰ』
【内容】
種族スキルレベル30達成おめでとうございます。
これにより、血族スキル『限定解除』『封神具修練』が解放されました。
メインクエスト『魔王側近の討伐Ⅱ』にてこれらのチュートリアルを行います。
スロゥスとの会話が終了後に『封神具』が解放されます。
少し、クエスト内容が変わっている。
っと、まずはスロゥスとの会話を終わらせないとな。
「でだ。君には私からささやかではあるが、プレゼントをしようと思う。
まぁ、闘技場優勝の報酬と思ってくれれば良い。
これらはベルフェゴール様のコレクショ…」
話が長い…早く終わってくれないかな。
というか、こいつ自分に酔いしれてないか。
腕を広げ若干上を向きながら目を閉じ、意かにこれらのアイテムが素晴らしいものかから始まり、ベルフェゴールに対する忠誠心やら自分がどれだけベルフェゴールに愛されているなど、どんどん話が逸れていっている。
仕舞いには、カリーネさんが如何に愚かで醜くベルフェゴールの側近には相応しくないとかどうでも良い話が続く。
こいつ自分が好きで好きで仕様がないのだな。
「気持ち悪…」
「で…ん?何か言ったかね?」
「いえ…」
「そうか…どこまで話したか…」
「スロゥス様、彼女に報酬の方をお渡しする所までです」
「おお、そうか。もう、そこまで話が進んでいたか…。
ふむ、ではこの中から好きな物を1つ選びたまえ」
脇に立っていたスロゥスの部下らしき騎士が、スロゥスの長話を終わらせる。
グッジョブ、騎士Aの人。
スロゥスが指を鳴らし合図を送ると謁見の間の脇の方から武器立てが十数個ズラリと並べられる。
どこに有ったんだ?
スロゥスの会話が終了したので、もう一度クエスト内容を確認する。
★オラクルクエスト『力の発現Ⅰ』
【内容】
種族スキルレベル30達成おめでとうございます。
これにより、血族スキル『限定解除』『封神具修練』が解放されました。
メインクエスト『魔王側近の討伐Ⅱ』にてこれらのチュートリアルを行います。
武器立てには『封神具』が混ざっています。(金色でハイライト)
尚、『封神具』以外を選択した場合クエストは失敗となり『魔王側近の討伐Ⅱ』は『魔王側近の討伐』へ変化します。
次回オラクルクエストまでスキルと『封神具』を入手する事が出来なくなりますので注意して下さい。
要は、『封神具』を選択しないと血族スキルの入手と『封神具』は次回までお預けを食らい、さらに通常ルートのメインクエストへ合流するという事だな。
俺はハイライトされている武器を確認する。
「近くで見ても良い?」
「じっくり選ぶと良い」
一番右にある武器立てには騎士剣が6本立てかけられており、その内2本がハイライトされている。
クエスト報酬という事もあり、解析スキルのない俺でも武器の詳細は見える。
銘剣ではあるようだが、特別なスキルが付与されている訳でもない。
特別な所は見当たらない。
本当に『封神具』なのだろうか。
その隣の武器立てを見る。
今度は槍だ。
こちらも6本ありその内2本がハイライトされている。
騎士剣同様で特別なスキルどは一切見られない。
全ての武器立てを確認、全部で10種類20本の武器から選択出来るようだ。
先ほども言ったようにどれも特別な力はなくレア度は「Rare」止まりだ。
いわば、入手するまで効果が分らない上に同じカテゴリの武器でも別の効果が付いている可能性がある。
ちなみにその10種類は以下のアイテムだ。
●銘剣・ウィンダム⇒風属性の騎士剣
●銘剣・アズライト⇒無属性の騎士剣
●銘槍・ブリューナク⇒光属性の長槍
●銘槍・クリスタルゲイジ⇒水属性の騎槍
●銘弓・ライジョウドウ⇒雷属性の弓
●銘弓・ヴィランティス⇒無属性の弓
●銘刀・国綱⇒炎属性のイスカ刀
●銘刀・三条 ⇒光属性のイスカ刀
●銘鎌・五芒陣⇒光属性の鎖鎌
●銘鎌・グリムリーパー⇒闇属性の鎌
●銘杖・火之迦具土⇒火属性の杖
●銘杖・カドゥケウス⇒風属性の杖
●銘槌・ミョルニル⇒火属性の大槌
●銘斧・金太郎⇒地属性の巨大斧
●銘器・ブラックジャック⇒闇属性の鉄製極薄トランプ(材質不明)
●銘器・アリアドネ⇒炎属性の極細鉄糸(材質不明)
●銘双刀・青鬼赤鬼⇒水属性と火属性の双頭刀
●銘双剣・ウロボロス⇒地属性の双頭剣
●銘銃・パニッシャー⇒見た目デリンジャーみたいな小型の拳銃が2丁
●銘銃・シモノフ⇒対戦車ライフルのシモノフPTRS1941そっくり
10種の中に銃が含まれているぐらい本当に多種多様だ。
使い慣れているという意味で刀を選ぶのが一番良いような気がする。
しかし、銃も別の意味で惹かれるものがある。
何でデリンジャーっぽいのとシモノフなんてマニアックな銃を選んだんだろう。
どちらも本流とはかけ離れたキワモノの銃だ。
「ん~」
よく考えるとこれらは『封神具修練』に関連する武器だ。
既存の修練系のスキルとは関係がない。
要するにアキラが持っている『刀剣修練』が適用されないのだ。
だから敢えて刀剣以外の武器を選ぶのも面白いかもしれない。
よし、これにしよう。
「それではこれを…」
俺が選択したのは、銘銃・パニッシャーだ。
「ほう、それで良いのか?
君の流派にあったイスカ刀もあるぞ」
「イスカ刀は夜月がありますから…」
「そうか。ならば持って行くと良い」
銀色の銃身に金色の十字架が栄える綺麗な装飾銃。
銃口が2つある事から2発同時発射か2連射が出来るのだろう。
弾倉は2発しか入らないが、2丁だから4発は撃てる。
とは言え、これは素の状態での話しで『封神具』としてはまた違うかも知れない。
「では、報酬も受け渡しが済んだ事だし場所を移そうではないか」
「移る?」
「そうだ。私と君との一騎打ちをベルフェゴール様に見て頂く為の特別な場所だよ」
「闘技場ではないの?」
「うむ、ベルフェゴール様の事情もあってな。では、こっちだ。来たまえ」
スロゥスは、謁見の間の奥へ俺を誘導する。
「この先は、彼女しか入る事を許されていない。
資格のない者は去り給え」
俺に着いて行こうとしたハイアとヴェルを制止する。
ハイアとヴェルは大丈夫かと目で訴えたが、俺は頷いて大丈夫だと返した。
さて、どこへ連れて行かれるのだろうか。
着くまでクエストを確認しよう。
★オラクルクエスト『力の発現Ⅰ』
【内容】
種族スキルレベル30達成おめでとうございます。
これにより、血族スキル『限定解除』『封神具修練』が解放されました。
メインクエスト『魔王側近の討伐Ⅱ』にてこれらのチュートリアルを行います。
スロゥスとの戦闘が開始した際、次のように言って下さい。
これは声に出さないと発動しませんので注意して下さい。
まずは、封神具を出し構えて下さい。
そして、『封神具・パニッシャー限定解除申請』
システム音声にて『承認』と返ってきた場合、次のように返して下さい。
『封神具形態変化解除、第一から第二を解除』
システム音声にて『承認』と返ってきた場合、次のように返して下さい。
『パニッシャー性能更新・第一から第二を更新』
システム音声にて『許可』と返ってきたら完了です。
敵性を排除して下さい。
尚、『封神具』の限定解除は、メインクエスト並びにオラクルクエストでしか使えません。
口を出して言わないと駄目なのか…何か恥ずかしいな。
とは言え、ボソボソと言って『承認』が返ってこなかったらもう一度言わないといけないしな。
ここは覚悟して言おう。
◆◆◆
「ここだ」
スロゥスに誘導され辿りついた場所は、謁見の間よりも大きい闘技場のような空間で観客席などはない。
いや、全くない事はない。
そう…ベルフェゴールの席だ。
ベルフェゴール……俺の知っているグレゴリと印象が全く違う。
一言で言えば”肉の塊”…いや、正直に言えば”巨大なデブ”だ。
どれくらい巨大かと言うと平均的なグレゴリの体型の10倍近くはある。
しかも、ただのデブではない。ちゃっかりと筋肉質で力士風といった感じか。
防具等は一切しておらず、上半身は裸だ。
腰に金色の刺繍がされている紺色の布を巻いている。
靴は履いていない。
「ベルフェゴール様、ここにいますのが今回闘技場で優勝しました囚人28号です」
「ぶほほ、よく見えぬな。もう少し近う寄れ」
よく見えないのは、その豊かに実った頬肉のせいじゃないですかね?
とは口に出しては言えないな。
俺が近くに寄ろうとするとスロゥスは制止し、もっと離れろと手で合図する。
スロゥスも見えない理由を察しているようだ。
俺は今いる位置より少し離れる。
「ぶほほ、よう見える。今回はあの獣人ではないのだな」
「ええ、今度はお楽しみ頂けるかと…」
「ぶっほっほっ、それでは両者とも存分に楽しませてくれるとワシは喜ぶぞ」
「それはもう期待して下さい。ベルフェゴール様」
「ぶほほほ」
どうでもいいが、「ぶほほ」が非常にウザイな。
「中央の左側に記しがある。そこに立ってくれ」
スロゥスはそう言うと、彼はその反対側に移動する。
俺は断る理由もないので、言われた場所まで移動する。
「ベルフェゴール様…」
所定の位置に立つとスロゥスはベルフェゴールへ呼びかける。
「ぶほほ、準備は良いかの?」
俺とスロゥスは同時に頷く。
「ぶほ、始めよ!」
《縮地法》
俺は合図と共に後ろへ一旦下がる。
スロゥスの方はというと最初の位置から微動だにしていない。
そして、その場で詠唱を始める。
立体魔法陣かつ魔法陣の数が多い事から相当高威力の魔術もしくは禁呪に相当する魔法の可能性がある。
『封神具』の限定解除よりも先に詠唱を潰した方が良い気がするが、この前の魔術師と違い何の対策もしていないとは思えない。
恐らくは『詠唱妨害無効』などのスキルを習得している筈だ。
俺は『封神具』の限定解除に入る為に、銘銃・パニッシャーを両手1丁ずつ構える。
『封神具・パニッシャー限定解除申請』
大声でもなく小声でもない音量で言う。
恐らく、これだけ離れていたらスロゥスやベルフェゴールに聞こえない筈だ。
『…承認…』
無機質なシステム音声で返ってくる。
『封神具形態変化解除、第一から第二を解除』
『…承認…』
立体構造の魔法陣が発生し、パニッシャーを飲み込んでいく。
すると、飲み込まれた部分が分解されていき再び再構成されていく。
元々大きくはないパニッシャーなのであまり時間を掛けず形態を変化させる。
変化したパニッシャーは、元々の大きさからは想像出来ない程大きくなり凡そ10倍から20倍の大きさになっていた。
そして、無意味なほどに神々しく輝いている。
『パニッシャー性能更新・第一から第二を更新』
『…許可…』
すると、デリンジャー形態だった時の弾倉部分に立体魔法陣が出現しゆっくりとしたスピードで回転し始める。
それとほぼ同時にタービンエンジンっぽい何かが起動する音が内部から聞こえ始める。
そして、白く輝く十字架のようなエフェクトがパニッシャーの周りを覆う。
これ以上何も起こらないところを見るとこれで完了のようだ。
スロゥスの方を見る。
あちらはまだ詠唱中のようだが、こちらの様子を見て驚愕している表情が離れていてもよく分った。
ベルフェゴールの方は…よく分らない。
表情があったとしても全て肉で隠れてしまっているからだ。
それでは、どのくらいの威力なのか試し撃ちをしますか。
標的は勿論詠唱中のスロゥスで…。
俺は、躊躇なく銃口をスロゥスへ向け引き金を引いた。
《Name》銘銃・パニッシャー
《User》アキラ=ツキモリ
《Rank》Rare
《Level》封神具修練or銃修練Lv8
《Base》ハイスタンダード・デリンジャー
《Effect》不意打ち時、クリティカルダメージ+100%、弾数2
《Detail》ハイスタンダード・デリンジャーを基とし銃身の9割を白銀で造り中央にある十字架やアクセントは黄金で飾っている装飾銃。
弾は2発込める事が出来るが、2発同時に発射されるので実質1発しか撃てない。22口径ロング弾。
《Name》神銃・パニッシャー【限定解除】
《User》アキラ=ツキモリ
《Rank》Myth
《Level》封神具修練
《Base》アームズ
《Effect》結界貫通、弾無制限、光・炎属性付与エフェクトダメージ有り(武器攻撃力5%分)、メインクエスト及びオラクルクエスト限定
《Detail》セレスティア・セラフィム・ネフィリム専用武器。
【限定解除】をした銘銃・パニッシャーで『封神具』としては、本来の2分の1の性能ながら非常に強力な武器である。
内部に魔導エンジンがあり空気中から魔力を取り入れ魔力の銃弾へと変換される為、使用者の魔力を消費しない。また、弾制限もない。
別名・神の鉄槌モードと呼ばれる形態でゲームシステムにそぐわない行動を繰り返す違反者に対して義体活動をしているGMが使うとされている。また、この武器で死んだキャラは復活できない。
※アームズ…魔力を込めた銃弾を放つ魔導銃。
構造はデリンジャーと同じ中折れ式で【限定解除】したパニッシャーの様に内部に魔力を作り出す機能はない。




