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E/O  作者: たま。
cβ・チュートリアル
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第1話・開始前の乱入者

1章分書き終えてから投稿する予定でしたが、思ったより長くなりそうなので取り合えず書き終えた話を連日で投稿しようと思います。

「ふられたぁぁぁぁ」


 と言い、いきなり俺こと雨月亮あまつきあきらの部屋に涙の流しながら飛び込んで来た、この人物は従姉で1歳年上の雨月絢華あまつきあやかだ。

 年が近い上に住んでいる所も公共機関を使えば10分ほどなので行こうと思えばいつでも行ける距離だ。

 まぁ、行きたいと思う事は少ないけどな。


 絢華は、いわゆるキャリアウーマンで広告代理店に勤めている。

 俺が社会人三年目に対し、彼女は大学には行っておらず十八歳の頃から働き始め今年で社会人九年目となる。

 話を戻すとして絢華はよく振られる。

 不細工ではないむしろその正反対で誰がどう見ても美人と評する容姿をしている。

 性格も悪くはないし、料理もプロ並とは言わないがどこに嫁に出しても恥ずかしくはない程の腕前だ。

 強いてあげるならば、酒癖が悪いぐらいで世間一般的に絡み酒と言われているやつだ。

 では何故こうも振られるか…それは彼女が完璧過ぎるからだ。

 二十七歳という結婚適齢期を若干外れた年齢を差し置いて、年収一千万・容姿端麗・頭脳明晰・家事全般完備・五ヶ国語堪能とまぁ良い所を数えればキリがないほどだ。

 ああ、そういえばもう一つだけ欠点があったな。まぁ、人によってステータスだ…とか希少価値だ…なんて呼ばれている。

 そう…あれだ。貧乳なのだ。

 以前、絢華は、「モデルの人に巨乳なんていないでしょ」なんて言ってたっけか…。

「お前はモデルじゃないだろ」と思ったが本人には言っていない。

 そう言えば、彼女が好きなタイプには特に拘りがないようで、強いて挙げるならば包容力のある人だとか…。

 年収一千万以上でイケメンで浮気してもOKな人みたいな無茶振りはしていない。

 と…言う事で、誰か貰ってやってくれませんかね?

 ふられる毎に俺の部屋に来ては、愚痴と絡み酒をされるのは勘弁して貰いたいんですよ。

 ああ、胸の事は育てれば良いのですよ。


 っと、そんな事を考えている場合じゃない。

 俺は「チラッ」とデスクの上にあったデジタル時計を見る。


「Cβ開始まで後十分か…」

「何が後十分なのぉ?」

「絢華には関係ないよ」

「つれない事言わないでよ~?」


 絢華は俺の首に腕を回す。

 本人は気付いていないだろうが、絢華の胸が俺の背中に当たっている。

 貧乳と言えやはり柔らかい…。

 絢華が、従姉とは言え俺も健全な男だ…これ以上されると理性のロックが外れないとも言えない。


「フゥ~」


 そして、アルコール臭い息を俺の耳に吹きかける。

 ちなみに俺は酒が好きではない。

 まぁ、嫌いでもないけど…、好き好んで飲まないという感じだ。

 飲み会には積極に参加するけど、自宅では全く飲まない。


「ちょ、うわ、くっさ。止めろ。まじ、酒臭いから!」

「じゃあ、教えてよ…」

「分った分った。教えるから…マジやめて!」


 俺は、デスクの上に置いたHMGヘッドマウントギアと呼ばれるVR空間にダイブ出来る器械を指差した。


「簡単に言えばだ、これを使ってするゲームだよ」

「HMGで?」

「そ、世界中の人間が広大なVR空間で冒険するゲームだ」

「ああ~、アレだよね。…えーと、…M…ェ…Oだっけ?」

「MMOな」

「そうそれ、亮が昔はまってたゲームだよね」

「遠からず近からずだな。あれは3DMMOで、これはVRMMOな」

「あ~、バーチャルね……バーチャルでゲーム?」


 絢華の顔を見れば分る。

 全然理解していない顔だ。

 ま、3DとVRの違いを話すつもりはないけどな。

 実際、絢華はゲームなんてものほとんど触っていないと記憶している。

 ガキの頃、親戚一同が会する正月の時に数度触ったぐらいじゃないかと思う。

 昔から今日に至るまで数度絢華の部屋に入った事があるが、ゲーム機はなかった。

 PCは昔からあったが、入っていたのはDTP関連のアプリケーションやら仕事関係ばかりだった筈だ。

 そんな絢華には、実際見てもらって理解して貰うのが一番だけど…。


「ふ~ん。よく分らないけど、私もそれやってみたいな」

「いや、無理だし。絢華は、これ持ってないだろ?」


 今、HMGが注目され始めているとはいえ、まだまだ薄型ディスプレイや ホログラムディスプレイの方が市場が大きいし、特にホログラムディスプレイは、場所を取らないので中高年や1Rに住む様な若い世代に人気だ。

 という事で、HMGが主流になるにはもう少し時間が必要だ。

 HMGは一台数十万の代物だ…流石に二台は持っていない。

 というか、規制で二台は持てないようになっている。


「当然、持ってるわよ」

「だろ?普通はないよ……ん?え?!持ってるのか?」

「最近、VR空間に広告を出す企業が増えてきてるよ…。

打ち合わせもVR空間でする事もあるし…それに仕事用とは別に私物用をいつも持ち歩いているわ」


 絢華が鞄から取り出したのは、薄型軽量のHMGで二週間前に発売されたばかりの最新機種だった。


「うわ……マジかよ。これ今出てるHMGで一番高いモデルじゃないか…」

「へぇ~そうなんだ」


 絢華は、こういう機器の類には弱い。

 取り合えず、一番値段の高いのが一番良いものだと思っている。

 おまけに店員に言われるがまま買ってしまっている。

 電気屋の良いお得意様って訳だ。

 だから、絢華の部屋には高価な機器が盛りだくさんだ。

 これだからブルジョワは…。

 俺のは半年前に買った結構良いHMGなのだが、中古なので流石に30万もしない。

 ま、VR空間に入ってしまえば、HMGの性能なんて気にならなくなるけどな。

 ちなみに、絢華のモデルは、PCでいうスペックは俺のとあまり変わらない。

 違うのは、コードレス状態での持続時間と重量と装着者に対する精神的な負担だ。

 特に、精神的負担の軽減はHMGにとって重要な箇所でもある。

 実際、絢華のモデルの精神的な負担は俺のモデルの三分の二程だ。

 脳波から精神的負担を検知しVR空間にダイブしている装着者に警告を発し半強制的にログオフさせるシステムになっている。

 簡単に言えば精神的負担の軽減とは、連続稼働時間の延長という事だ。


「で?これあったら出来るのよね?」

「……出来ない事もないが、何でそんなにしたいのかねぇ?

絢華はこういう類今までした事ないだろ?」

「ないけど、偶には傷心旅行をVR空間でしたい気分なのよ」


 絢華は今引っ張りだこって奴でいつも終電帰りか事務所泊まりが多いらしく遊ぶ暇なんてないらしい。

 まぁ、それでも土日は休みなんだし、どこぞのブラック企業よりは全然マシだ。

 俺か?

 俺は至って普通の企業だ。

 土日休みなのは絢華と変わらないが、サービス残業は普通にある。

 まぁ、遅くなったとしても二十時ぐらいだから全然マシだろう。


「んじゃぁ、HMGのID教えろ。招待送るから」


 E/Oのcβは、二人までフレンドを招待出来る。

 流石にUO2プレイヤーだけに絞るとテストするには人数が少ないと踏んだようだ。

 俺は、UO2を引退し大学入学以降今に至るまでオンラインゲームをしていなかったので、ネット上のフレンドはいない。

 その為、二人分の招待枠が丸々残っていた。


「えーと、GID1086973241よ」

「了解。少し待ってろ」


 HMGのIDとは、HMGに対して個別に割り振られた識別番号だ。

 この番号は、使用者の脳波と個人情報に紐付けされ一人一台のHMGが基本となっている。

 が、法人と個人は別物と判断されており、二つ同時に所有出来たりもする。

 まぁ、二つ所有した所で一昔のMMOと違い2アカウント同時操作なんて出来ないけどな。

 で、俺は今HMG内の個人VR空間内でメールを送る準備をしている。

 従来のOSのデスクトップ画面の左上から並ぶ筈のアイコンがVR空間に浮かんでいるという訳だ。

 そこから、俺はメーラーをタッチし起動させ新規メールを作成する。

 そして、今作成しているメールにE/Oフレンド招待状をドラッグして添付しVRポストに放り込む。

 VRポストから白い鳩のようなマスコットが飛び立つのを確認してから一旦HMGを終了させる。


「多分、招待状届いたと思うし、HMG起動してみろよ」


 起動は大体どのHMGも同じで左右どちらかの耳付近に起動ボタンがある。

 絢華のHMGの場合は右にあった。


「届いていたら、招待状を開いてURLタップな。

んで、公式に飛んだらHMGのIDを登録、規約を読んで承認。

後は、一分ぐらいでクライアントをダウンロード出来るから、後は指示に従って行けば良いと思う」


「OKOK。HMGを仕事以外で使うの初めてだなぁ」


 絢華は、HMGを被り起動させる。

 今現在、ネット回線は一テラバイトの時代だ。

 莫大な量のクライアントデータもすぐにダウンロード出来る。

 専用回線ともなれば十テラバイトぐらいあるらしい。


「っと、今何時だ?………ぅ…う…うわああああ、すでに2分過ぎてるじゃないか!」


 出遅れた…。

 あああ、まだか?まだか?

 …てか、ダウンロードは一分ぐらいだけどインストールに五分ぐらい掛かるよな。

 しょうがない。掲示板でも見るか…。

 俺は再びHMGを被り、いつもお世話になっているVR掲示板『百ちゃんねる』へ向かう。

『百ちゃんねる』は、昔あった匿名掲示板とは違い、HMGに紐付けされた個人情報を通して個人を特定している。

 個人情報で特定していると言っても内部的にであって、実際はHMGIDが表示されているだけだ。

 何か犯罪的な書き込みをしようものならすぐに足が着くようになっている。

 とはいえ、用途や内容はあの匿名掲示板と変わらない。

 ちなみに、GIDを偽って他人に成り済ます事は不可能だ。

 で、俺が覗こうとしているのは、当然『E/O実況スレ』だ。

 全部表示するのは面倒なので、俺に有意義な書き込みをピックアップしようと思う。



◆◆◆


【E/O】Evolition Online【実質UO3】


8 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID023675498

>>1乙

ログインできねぇぇ!

早くハイエルフの♀を作って尻を眺めてぇぇええよ



12 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID118945621

>>8

確か、性別はランダム決定だったと思う

それに一人称視点だから自分の尻は見辛いかと


13 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID023675498

>>12

まじで!?


14 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID087459121

>>12

いや、性別選択が不可能なのはランダム選択だけっぽいぞ

ノーマル選択は性別の選択が出来る

>>8

安心して良い。ハイエルフはノーマル種族だ

まぁ、ランダム選択まで性別選べたら♀幼女で溢れかえるだろうし、俺はこれで良いけどな


15 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID023675498

♀だらけになるのは分るが、流石に幼女だらけにはならんだろう

ハイエルフで幼女にする意味がねぇよ


28 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID023675498

ログインキターーーー

んで、今キャラ選択…

いよっし、ハイエルフの♀で決定!!


30 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID086439871

マジだ…ログイン出来た

よっしゃ、俺はスタートダッシュするぜ

全部初期配置のままOK連打余裕です


31 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID157214567

レア種族キターーーー

ドラゴニア♂

ガチムチキャラだけど、これで良い!


32 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID119856356

>>31

え?どうやってレア種族出したの?


33 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID097648582

>>32

ランダム選択で極稀に出るらしい

けど、ランダム選択は1回しか出来ないしやり直しも利かないから

何回でもやり直せるノーマル選択を薦めるよ


42 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID043920847

確かハーフ種族のランダム選択でシークレット種族があるらしいな

ま、噂だけど…


88 名前:名無しのノーマル種族 ID:GID086439871

30だけど、詰んだわ

俺のキャラ、ヒューマ♀ガチムチBBAなんだけどよ

みんな、適当に選択しない方が良いぞ

特に”生立ち”な、これは絶対慎重に選べよ

はっきり言って容姿も残念だけど、初期スキルが詰んでる

これは取り返しが付かん

っていうかココどこよ?ヘルプミーー



◆◆◆


 ふむふむ、レア種族はランダム選択か…後は、生立ちの選択は慎重にっと…。


「…ねぇ…ねぇってば…亮聞いてる?」

「うぉ!?ビックリした…」


 いつの間にか絢華は、俺の個人VR空間に来ていた。

 フレンド登録かつ入室許可をしているフレンドはいつでも行き来出来るようになっている。


「いくら返事しても聞こえてないんだもん」


 リアルで呼びかけても返事をしないから、VR空間まで呼びに来たようだ。

 HMGを起動させると使用者は自動的にレム睡眠に移行するので、いくら外から呼び掛けても反応は出来ない。

 通常のレム睡眠なら耳元で大声を出せば気付くが、HMGを使用している 間は外部からの音は一切遮断されている。

 ただ、HMG使用中に使用者へ何かしらの痛みが加わると強制的に覚醒させる仕組みにはなっている。

 とは言え、これは緊急措置であり特別な事情がないのなら外部からの強制覚醒はすべきではない。

 HMGの故障だけで済めば良いが、使用者の脳にも何らかの負担が掛かる事から多用は禁じられている。

 これは、E/Oに限った事ではない。


「ここにいるって言う事はインストールは終わったのか?」

「ええ」

「んじゃ、ログインするけど、絢華はキャラの名前どうするんだ?」

「アヤカ=ツキカゲにするわ」

「んじゃ、俺はアキラ=ツキモリにするか。初期街で待ち合わせでもするか…。あっ、そう言えば初期街は種族によって違うんだよな。どうするかなぁ」

「名前が分っているなら、いつか合流できるわよ」

「んじゃ、後でな」

「うん」


 俺は絢華を自分のVR空間に戻るのを見届け、宙に浮いているE/Oのショートカットをタップし起動させる。

 宇宙から見たE/Oの舞台である惑星が表示され、シンプルにE/Oのロゴが中央に表示されているだけであった。

 シンプルではあるが、何か心に来るモノがあり早くキャラメイクをしたい衝動に駆り立てられる。


「ログイン」


旧作の主人公アキラ=ローグライトの初代キャラという設定です。

旧作と共通している部分がありますが、基本別物です。


まだ、完全に世界観が定まっている訳ではないので、後日修正を入れる可能性が大です。

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