第11話・命がけの前座
設定などは本編と別に投稿しています。
シリーズ化したのでその中にE/Oの世界というタイトルで設定を投稿しています。と言ってもまだ全然設定としては未完成ですが…
「やっと、起きたか…」
ログインすると牢屋の前にヴェルがいた。
ハイアが隣にいない…珍しい事もあるものだ。
「28g…いや、アキラ。お前の次の相手が決まりそうだぜ」
「決まりそう?」
「ああ。昨日対戦で負けた奴なんだが…。
1つ上のランクに勝つより同ランクに2回勝つ方へ方針変更したようだ」
「つまり…」
「ご指名ってやつだな。お前はランク1から上がった直後だから狙い目なんだろうよ」
予想した通り同ランクとの対戦になったか…。
「今、ハイアの奴が手続きをしているところだ。
もうぐす戻るだろう」
「指名してきた人ってどんな人?」
どういう人物なのか大まかでも良いので知っておきたいところだ。
事前情報が全くないとでは大分違う。
「対戦相手か…そうだな…。
ハーフエルフの小僧だ…。
ま、小僧と言ってもお前よりは年上だがな」
ああ、ハーフエルフは見た目若いものな。
確か、見た目の年齢は20歳未満…大体16~18歳程度で成長が止まる。
16歳で成長が止まるものならホビットと間違われても仕方がないほどらしい。
「ぉ、ハイアが戻って来たぞ」
「すまん。待たせたな」
ハイアが歩いているところを見ると急ぎではないようだ。
来て早々闘技場へGOは勘弁して貰いたかったので助かった。
「で、対戦はいつなんだ?」
「ああ、2時間後だ。
今、1試合しているだろう。その後2試合あって休憩を挟んだ後になる」
「って事は前座か…」
「ああ」
「前座?」
「お前が奇跡的に勝った獣人の囚人がスロゥス様と対戦するんだ。
これは盛り上がるぜ!」
確か、あの獣人は囚人の中で最高のランクにいたんだよな。
スロゥスとやるより俺を10回殺した方が楽と踏んだ。
でも予想に反して俺が善戦するものだから勝ちを焦って負けた…という具合だ。
ぶっちゃけ勝てるとは思わなかったしな。
◆◆◆
「準備は良いか?」
俺は静かに頷く。
流石に緊張してきた。
…ボス戦や対人戦でもないのに…チュートリアルなのに緊張するなんて思わなかった。
手に汗を握るとはこの事だ……握ってないけど…。
「前座とは言え客の数は多いぜ。精々頑張る事だな」
客の事はどうでもいい。
結局、対戦相手がハーフエルフの小僧という情報しか得られなかった。
同ランクの相手はどれほどの能力を持っているのだろう。
獣人の能力は俺との差があまりにも大きかったので結局分らず終いだった。
というか、獣化を使ってこなかったと言う事は、やはり囚人の首輪で制限されているのだろうか。
俺はハイア達と共に闘技場へと上がる。
”ワァァァァァ”
会場を歓声が覆い尽くす。
本戦の前座という事もあり、初戦と比べて大分客の数は多い。
最高ランクである獣人との戦闘でもここまで多くなかった。
恐らく、獣人が勝って当たり前の対戦であった事から少なかったのかも知れないな。
ここへ来る客は選手(囚人)を見に来ている訳ではない。
囚人同士が泥臭く血生臭く殺し合いをするのを見に来ている訳で一方的な殺し合いを見に来ている訳ではない。
だから、力が拮抗している試合の方が客の入りが良いという事だ。
反対側には事前情報通りのハーフエルフがいた。
しかし、俺の知っているハーフエルフではない。
あ、知り合いじゃないって意味じゃないからな…。
目は…そう…あの獣人と同じで獣の目のようにギラついている。
エルフ特有の耳は健在だが、一般的なエルフと違い筋肉質だ。
無駄な脂肪は一切ない。
そして、一番目を引くのは両手にそれぞれ持った鎌だ。
その鎌は柄の部分が鎖で繋がれている。
所謂、鎖鎌って奴だ。
その刃は俺のハルバートと同様手入れがされておらず、刃こぼれと黒くなった血糊が目立つ。
あの鋸切りのような刃になった鎌で切り裂かれたら痛いだろうな。
つくづく痛覚が実装されていなくて良かったと思う。
防具は俺と同じように布が一枚着ているだけだ。
防具としての機能は全くないだろう。
正にやるかやられるかだ。
そして、死合の合図である鐘の音が響き渡る。
「ハルバートに持ち替えたんすね」
ハーフエルフの少年は攻撃を仕掛けるどころか話しかけてくる。
「前の死合じゃ。徒手空拳だった気がするんすけど…まぁ良いか…。
ハルバートの方が相手し易い…しッ!!」
彼の右手に握られていた鎌が何時の間にか消えていた。
それとほど同時に俺の視線を遮るように何かが飛来してくる。
”ガキンッ”
俺は咄嗟にハルバートで払いのけると俺と彼の中間辺りを鎌が力なく飛んでいく。
しかし、彼が右腕少し引く事で力なく飛んでいた鎌は勢いを付けて手元へ戻っていく。
「反応は…悪くないすね」
物腰とは裏腹に彼の目つきはより一層鋭くなる。
彼は両腕を後方へ伸ばし、鎌の刃を内側へ向ける。
「次、これは避けれるすかねッ!」
今度は両腕を前で交差し外側へ振るう。
また、彼の手元から鎌が消える。
俺は鎌の行方を確かめる為に彼の手元に残っている鎖の行方を捜す。
すると、2本の鎖はX字で交差して俺の方へ押し寄せてきた。
見た目以上に長い鎖に驚く。
これは先ほどのようにハルバートで振り払う事は不可能と判断しバックステップする。
1回のバックステップでは避けきれないと思い数度行うがリングの端に到達してしまう。
場外へ退避する事も考えたが、もし場外で彼の攻撃を喰らってしまうと時間制限以内に戻って来れる自信がなかった。
鎖の弛みを見る感じ場外に出てもまだまだ届きそうに思える。
俺は覚悟してハルバートを構える。
「ハハハハ、これはハルバートじゃ避けれないっすよ!
それどころかっ!」
2振りの鎌が俺の上から襲い掛かってくる。
俺はやや斜め上にハルバートを振るう。
”ギャリ…”
先ほどの金属同士のぶつかる様な音とは別の音が聞こえる。
ハルバートに2本鎖が絡みつき、丁度鎌の部分が鉤の役目を持ちガッチリとハルバートを押さえ込んでいた。
そして、ほぼ同時にハルバートが上空へ跳ね上がろうしたので俺は必死に抑え放さえる。
「へぇ~。何時まで抑えられるっすかね?」
ハーフエルフの少年とは思えない力で引っ張られハルバートが俺の手元から放れ様とする。
「力比べっすか?良いっすよ」
”カッ”
ハルバートから俺の右手が外れてしまい左腕だけで抑え込んでいる状態になってしまう。
「ハハハ、弱いっすね?ほら、後もう少し…」
ハルバートの柄から俺の左手の指が滑り今にも放してしまいそうになる。
何とか踏ん張っている状態だが、少しずつ俺の身体と共に引っ張っていく。
腕の方はもう限界だ。
何れ脚の方も限界になる。
そうなる前に手を打っておかねばならない。
俺はあらゆるパターンを考える。
手放したらどうなるか。
徒手空拳で勝てるか。
魔術で不意打ちして見たらどうだろうか。
・
・
・
色々考えた結果、俺は一つの答えを導き出した。
と言っても、これが正解だとは言い切れない。
いや、むしろこれが最も愚かな選択かもしれない。
しかし、どっちみちハルバートを奪われるのだから結果は同じだろう。
なら、彼に一泡吹かせてやろうと思う。
次、彼が力を入れた時が狙い目だ。
”グッ”
ハルバートが一層強い力で引っ張られる。
俺は身体毎持っていかれそうになる力を利用し前方へステップする。
彼の視界は、自身の鎖とハルバートで見辛く、彼の武器は俺のハルバートに絡み付いている。
この機を逃す事は出来ない。
そして、これは俺のファーストアタックにしてラストアタックでもある。
彼の姿が俺の間合いに入る直前、身体を捻りハルバートの刃先を後方へ持って行く。
そこで彼は俺が何をしようとしていたのか初めて気付く事になる。
「なっ!?」
彼が気付いた頃はすでに遅く、俺のハルバートは彼を真っ二つにせんと袈裟斬りの予備動作に入っていた。
「しまっt!?」
驚愕の表情で自身の鎌を手元に戻そうとするが、すでに遅く防御は間に合いそうになかった。
しかし、流石というべきか咄嗟の判断で回避行動に移り直撃を避けた。
が、俺のハルバートは彼の上半身を深く斬り裂く。
「ッが!!」
彼は苦悶の表情を浮かべ強烈な苦痛を耐え忍ぶが、切裂かれた身体からは夥しい血が流れる。
胃から咽返ったであろう血が彼の口から吐き出される。
「降参…とかしてくれないですよね?」
真っ二つになっていないが深い所は薄皮一枚と言っても過言ではないほどで、第三者の視点から見れば戦闘の続行は不可能に思えた。
流石にこの状態の相手に止めを刺すのは躊躇する。
俺としては降参して欲しい。
「ごほっ…うぶっ…む…無論…す……よ…。
ぼ……僕は、まだ……ま、ま…負け…てないっ…っす」
彼が立ち上がろうとすると傷口が開き大量の血が地面へと落ちる。
すでに左腕に力が入らないのだろう。
彼の手元から鎌がこぼれ落ちる。
右腕もダラリと下がり今にも落ちそうだった。
「ゴボッッ…さぁ…僕は…無、防備っす…よ。
止…めを……。でないと…観客……ま…んごほっ…ぞく…して…く…」
彼は意識が遠のき身体を崩れかける。
「やっ…てく…ださ…い」
「……」
俺は無言で頷きハルバートを大きく振りかぶる。
そして、彼の首を刎ね飛ばした。
結構長め?になりましたが、もし映像化したら一瞬で終わってしまう試合でしょうね^^;




