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結局手に入っていない180万円

作者: 杉崎 朱
掲載日:2026/04/25


『180万円』



 私は、蛇を見ると小金が舞い込んできたり、特をすることがある。

 蛇を見るようになったのは、仕事のしすぎで体を壊した後、父が病気になり介護で田舎に帰ってきてからだ。ここ数年の話。


 いい大人だが、桁外れの父の友人のお金持ちの人からお小遣いを頂いたり、一昨年は3,000円や一万円などの少額だけどなんでかよく宝くじに当選しました。今まで何もなかった保険の還元金が2年前からあったり、直近では銀行の利息がいきなり増えたり。

 

 蛇の他にも、鳥のサギを見ると良いことがある。でも、お金に関する良いことはやはり蛇の方が多い。



 春先はあまり見ず、夏場にかけて増えていく。特に、最近では猛暑酷暑の為、蛇が涼しい場所を求めて民家の倉庫や庭などに入る。我が家ではここ三年で車庫に二回も蛇に入られている。知らぬ間に出て行ってるが。


 そして、寒くなって蛇も見なくなった最近だが、昨日道端でご臨終の蛇を見た。


(あ、ご臨終だけど・・・これでまたちょっとお金が入るな)


 そう思った買い物の途中での道中。その日の夕方、日課のウォーキングで考えた。

 (小金・・・小金・・・どこから入るかな・・・)

 体も治り切っておらず、昨年は少しアルバイトもしたがコロナに罹ったあと回復が三ヶ月もかかり、バイトを辞めることに。春になったら働こう、貯金が決めた額を切ったら働こう、夏になったら働こう。・・・暑いから秋になったら働こう。秋は急な寒暖差で体調が微妙になってきたな、また春になったら働こう。

 こうやって、結構楽天的に生きている私。蛇を見ればお金が入るなんて言っているくらいなので割と楽天的なのだ。


(小金・・・あ、お金で思い出した。確定申告そろそろ書類とか整理しておかないとな。そういえば、共済から書類が来てたな・・・共済・・・仕事休職してた時のお金ってもらえたりしないのかな)

 そう思い頭の中で計算を始めた。

 なんの保険に入ってたか忘れたけど、毎月給料の一割でも貰えるとしよう。それで、休んでた一年半である18ヶ月分もらうとしよう。そうしたらちょっとは生活の足しになる。


 それにもし、給与の三分の一を休職してた一年半分なんて貰えたとしたらとんでもない金額になる。傷病手当金は六割だった。ハローワークの失業手当金は五割くらいだった。それほどまで貰えないとしても三割もらえるというプランに入ってたとしたら・・・?


 ざっと計算しても180万円ももらえると言うことだ。稼ぎ0円の私には朗報である。ただしこれは、蛇パワーが全開の場合だ。そもそも5年も前の話だから『もうダメですよー』とか言われる可能性だってある。

 そんなことを思いながらウォーキングを終えて家に帰った。



 デイサービスから帰ってきていた父。そして机には介護保険証と負担割合証がある。二箇所のデイサービスに通っている父は、毎月初にこの保険証を提出しなければならない。一箇所まだ出していないので、その支度を私が行った。その際、健康保険証もあり、翌日歯医者だったこともあり私は父に保険証を渡した。


「明日歯医者さんだからね。そっちに入れておいて」

 父はなんも変わらないずっと使っていた保険証をなぜかまじまじと見ている。そして私に言った。


「おい、これ期限切れてるけどこれで良いのか?」

「あぁ、九月末で切れたんだよね。・・・新しいの一緒に入れてない?母ちゃんのは届いたしオデも持ってるから一緒に届いてるはずなんだけど」

「・・・?もらった覚えはねぇな?」


 そこから保険証探しの開始である。


 父の大事な物の保管場所は限られている。普段使いのカバンの中。もう一つ革の鞄の中。大事な書類入れ籠。郵便物置き場。どこにもない。


 母はこう言ったことにいつも関与しないで一人だけテレビを見てけたけた笑っている。ムカつく。父と私であらゆるところを探す。見つからない。一旦夕食にした。


 夕飯を食べ終わって、再度片付けみたいな保険証探しが始まった。郵便物やチラシが置いてある場所を一枚一枚確認した。もうどうせ見るならと捨てるもの、取っておくものの仕分けまで始めてしまった。


 結局見つからずに掃除をしただけになった。見る予定のYouTubeの生配信も開始してしまった。幸い、普段午前中や朝予約なのに。翌日の歯医者の予約は15時30分だ。朝から探せば流石に見つかるだろうと切り上げてYouTubeを見た。すぐに寝落ちした。



 翌日、お昼前から探しにかかった。

 机の下、ガタクタ入れ、全部探して見つからない。おかしい。そう言った証明書なんかは絶対に無くさないようにする私だ。新しいのが届いたら絶対に現保険証と一緒に入れておけと言うに決まっている。私か?私が預かったのだろうか?その記憶がない。


「俺は絶対にお前に言われた通りにしてる。受け取った記憶がない」


 割と記憶力がいいが、病気をしてからそれなりに物忘れがある父。言葉を信じ切れない私がいた。

『保険証』なので、病院に行く時のカバンに入れてるのではないか。もらった薬を入れる専用のナップザックに入れているのではないか。

 父の大事なものを入れている鞄パート2。こちらはカバンにこそ入れているが、出掛ける際に持ち出すことは決してないカバンだ。その中も既に昨晩見ている。なんなら今朝父は自分でまた探していた。それでも可能性をかけてもう一度探してみようと中を調べさせてもらった。


 銀行の通帳の間。カバンのポケット。封筒。なんか折り曲げて入っている用紙。メインの財布。色々探す。私が勤めていた時に異動するごとに変わった名刺が全部あったり、高校生の時に修学旅行先から送ったハガキがまだ入っていたり、アルバイト先で誕生日に取ってもらった大学生の時の写真を持っていたりと色々出てきた。


 メインの財布も見たけどやはりない。二回目だしな。


 しかし、ふとその財布の構造に気づいた。長財布なのだが、開いたピロピロ側がなんかおかしい。弄ると、なんと軽くB5はありそうな収納スペースが出てきた。中には旧札が入っていた。聖徳太子をはじめ、500円札などだ。ほほう。ここに諭吉も入れておけばいいと話しながら一枚、用紙を見つけた。


 手書きでなんか書いてある。


 借用書だ。


 父は人にお金を貸す。

 既に、車庫に先方のバイク一台を担保に100万貸しているのだ。それに気づいた私が、父も病気をしたこともあり、もういい加減に返してもらえと三年前に言ったのだ。


 もう働けないし、貸したのも20年前だと考えてわかった私は、父にその連絡をさせた。もちろん『金返せ』ではなく『娘が場所にうるさいからバイクを取りにきてくれ』と言う名目だ。


 まぁ結果は、とりに来ようとしたら奥さんが急病になってしまった。落ち着いたら・・・。なんて言われたらこちらは強く出れないのである。ちなみにその人の借用書はない。父はとんだお人好しだ。


 それとは別に借用書が出てきたのだ。女の名前だ。ったく何してやがんだよコンチクショーめが。そう思って沢山問い詰めた。若いねーちゃんだったらどうしてやんかなとか思いながら聞くと、どうやらうちの母と同じような年齢。自営業で生活が厳しくなってると言うこと。コロナもあったけどよぉと。


 3回に分けて金を貸して、返したのは2021年の年末に3万円を一回だけ。そりゃそうだ。2022年の正月には父は病気で倒れたのだから。それから相手から音沙汰もないらしい。くそ、逃がさねぇぞ。


 全く、総額いくら貸してんだこの親父は。もちろんこの二件だけとは限らない。大体、大事なものカバンを見てた時、私も知っているが人が家を借りる時の保証人書類も出てきた。でも随分と前だ。確認してもらった。


「まだここに住んでんの?引っ越したなら捨てるよ」

「・・・まだここ」

 捨てられねぇのかよ。しかもなんかあったら保証人が金払うんだぞ。


 バイク担保に100万円。で、この借用書に書かれてるのが、85万円・・・で、3万円は返ってきてるから82万円。合計で180万円弱か・・・。



 ん?180万円???



 もし、共済が私の休職期間に給与の三分の一のお金をくれたら・・・の金額だ。


 もちろん、ばっくれられる可能性はあるが、家が貸したお金である180万円が返ってきても別になんの問題もない。悪いことなど一つもない。悪事じゃない。むしろ善事をしたんだぞ、したのは父だが。


 そうか、うちは昨日私が望んだ180万円が手元にくる可能性があるんだ・・・!


 兆しを見つけて満足した私だった。



 保険証は、市のHPを見た時に『マイナ保険証』と言う文字を見てハッとした。


 もしかしたら、父はマイナ保険証に知らぬ間に切り替わっていたのでは?だから保険証が届かなかったのでは?そしたら受け取ってないと言うのも納得だ。そう、父の記憶に間違いは無かったのである。

 そもそも、保険証の発行がない現在、私が使っているのもただの『資格確認証』だった。


 そう、私がしておくべき事は、『マイナ保険証扱いだから、新しい証書は父の分だけ届いていない』と書き置きをすることだったのだ。


 何はともあれ、180万円は逃がさないぞ。

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