詩: コーヒーのほろ苦い話
掲載日:2026/03/06
十八世紀の北の国で
コーヒーは「毒」だと
信じられていました
王は実験をすることにしました
死刑囚の双子を呼び出し
一人には紅茶を
一人にはコーヒーを
毎日 大量に飲ませよと命じました
毒かどうかは
どちらが先に倒れるかで
証明できるはずでした
しかし 見守る医師が先に逝き
王自身も暗殺で世を去り
実験は主を失ったまま続けられました
残された双子は
静かに歳を重ね
紅茶の男が八十三で旅立ち
コーヒーの男はさらに長生きしました
コーヒーが毒かを知ろうとした王の試みが
いつのまにか
長寿の証明になってしまった
歴史の湯気にまぎれた
ほろ苦いお話




