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第4話

サブタイトルは「初陣」です。

「「忘れてた……!」」

 確かに、村長は掃除してもらう、とはっきりと言っていた。

 それを忘れていたのは明らかにミコトとミヤビの責任である。

「じゃあ、すぐに行ってね、って!」

「僕たち、遊んでくるからね、って!」

「お願いね、って!」

 言い終わるや否や走り去っていく子供たち。

「……仕方ない、いくか」

「……そうだね」

 はぁ、と二人ともが同時にため息をつく。


 公屋に到着すると、そこには村長が座っていた。

「全く、何をしとるんじゃ。今回も遅刻か」

「面目ない……」

「あはは……」

「まあ良い、とりあえず今日の夜、交代が来るまではカグラはここで見張り、ミヤビは公屋の掃除をしとれ」

「「はい、わかりました」」

 ミヤビは少し離れたところにある公屋に向かっていく。それをミコトは呆けて見つめていた。


「あ、でも、思ってたより綺麗だ」

 ミヤビは公屋に入りそう漏らす。

「もっとボロ屋みたいになってると思ってた……」

 実際、公屋は隅にはホコリや蜘蛛の巣があるものの、全体で見れば人が暮らせる程度には綺麗に保たれていた。

「よし、これなら準備できる……。時間もあるし……」

「おーい、やってるか?」

 いきなり背後から声をかけられ、ビクッとミヤビの背中が跳ねる。

「!? だれ……あ、フミトさん」

 そこにやってきたのは刀守であるフミトだった。

「なんでここに?」

「あぁ、まぁ、な。……その、なんか申し訳なくて。」

「そんな、いいのに…… ありがとうございます」

「いや、今日は俺も暇だし、大丈夫だ。……ところで、これ、掃除する必要あるか?」

「……ないです」

「だよなぁ…… ま、とりあえずホコリをとって蜘蛛の巣を払うか」

「ですね!」

 二人でやっていくと、もともと一人でもそう時間はかからなそうだったのがもっと早くなる。

 公屋は二階建ての建築物だったが、全部屋掃除するのに一時間もかからなかった。

「「終わった〜!!」」

「でも、思ってたより疲れたな」

「ですね…… 流石に全部屋は疲れました」

 終わったが故にすることがなくなってしまったミヤビとフミトは公屋の中で談笑する。

「じゃあ、俺はミコトのとこに行ってくる」

「……あ、はい!ありがとうございました!」

「ま、たまにはな」

 そう言って颯爽と去っていくフミトを見送り、ミヤビは呟く。

「くそ、邪魔な……。せっかくの機会だったのに……」


 一方、ミコトもミコトで暇を持て余していた。

 そもそも、この村自体が辺境に位置する、いわゆるど田舎なのだ。

 そこの門番なんて、いてもいなくても変わらないようなもの。

 それを任されたミコトは、退屈そうにあくびをかみ殺していた。

 ただ、サボるとまた村長に怒られる。

 そんな中だった。


 ズドォォンと、大地が震え、大きな音が響いた。

「なんだ……!?」

「おい、ミコト!」

「あ、フミトさん! これは……?」

「……あれ、だな」

 フミトが指で指し示した先にいたのは、大きな黒い塊だった。

 そして、それをミコトは見たことがあった。

「あれって……陰喰らい? それにしては大きくないか……?」

「もう、成長しきったんだろうな。行くぞ」

「え? 行くぞって……」

「だから、逃げるんだ」

「なんで……! 術刀もあるんだし、戦わないと……!」

「馬鹿!言っただろう、成長しきった個体だ、あれは!まだ実践経験の無いお前にどうにかできる相手じゃない!」

「じゃあ、どうするんですか!」

「村全員を避難させる。とにかく、『陰祓い』が来るまでは刺激せずに待機だ。……行くぞ!」

 そう言って走り出すフミト。

 対して、ミコトはそれに従うつもりはなかった。

「俺が、みんなを――」

 そう呟いて、陰喰らいの元へ駆け出す。


 いざ陰喰らいと対峙すると、ミコトの心は恐怖でいっぱいだった。

 フミトが逃げると言ったのにも頷ける。

 間近によってわかった。とにかく大きさでの威圧感が強い。

 軽くミコトの十倍はありそうな体躯を持ち、吼えるだけで空気が、大地が震える。

 ミコトも覚悟を決め、〈瑞穂〉を抜く。

 白く光り輝く刀身に、黒く濁った陰喰らいの体躯が写る。

 鍛錬以外で瑞穂を抜くことは初めてであり、術を使えるかも分からないまま、陰喰らいと向き合う。

 深呼吸一度で、不思議とミコトの心は落ち着いた。震える手を鎮め、脚に力を込める。

「グオ゙オ゙ォォォォ!!!!」

 陰喰らいが威嚇の咆哮をしたその瞬間に、ミコトが踏み込む。

 ズバッと、ミコトの手には確実な感触があった。

 しかし、陰喰らいの体には一切の傷もついていなかった。

「なんで……!?」

「グギャア゙アアァァ!!」

 陰喰らいが吼えたかと思うと、ミコトの体は後ろに飛んでいた。

「は……!? ッ!」

 ダンッ、と木に打ち付けられ、息が漏れる。

「早くしないと……」

 陰喰らいに向かって駆け、もう一度対峙する。

 

 ミコトはあることを思い出す。

「瑞穂境術〈境断〉」

 試しに、この前カグラが瑞穂の境内で使った術を言ってみる。

 すると。

 陰喰らいの腕らしきものが落ちていた。

「グアア!? ガァァア゙ア゙ア゙!!」

 驚いたような咆哮をあげて悶える陰喰らい。

「できた――」

「グオオオ!!」

 腕を切られたことで怒り狂ったのか、攻撃を乱発する陰喰らいに対し、ミコトは落ち着いていた。

 だが、その攻撃を避けることができるかは別の問題。

 およそ四、五発の攻撃を受け、ミコトの体にも大きなダメージが入る。

「瑞穂境術〈境断〉」

 ミコトはもう術を一度使う。陰喰らいもその意図に気づいたのか、攻撃を放つ。

 これもまた、お互いに大きなダメージを与える。


 その後も、何度も何度も繰り返しお互いにダメージを与えあっていた。

「瑞穂境術〈境断〉」

 瞬き一度の間だけ、ミコトの術が出る方が早かった。

 そして、ミコトは既視感のある靄に覆われる。

 陰喰らいが消える時の黒い靄だった。

「たお、した――」

 ミコトの周りには靄があるため陰喰らいがどうなっているか分からない。

 しかし、ミコトは倒したと疑わなかった。

 それが、陰喰らいの技だということも知らずに。

 村がある方向へ歩を進めていたその時だった。

 何気なくミコトが咳き込むと、口を覆った手には鮮血が付く。

「は……?」

 そして、咳き込んだ時にミコトは見てしまった。

 自分の胸部から、あるはずのない突起が飛び出している様を。

 ゲホゲホと、もう一度咳き込むと、その手にはさらに大量の血がついていた。

 首だけ振り向くと、そこにいたのはミコトのよく知っていた人物だった――

次回更新は多分ですが3週間後になりそうです。

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