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第1話

時間単位は読みやすさのために時間、分、秒にしています。

追記:漢数字に統一したのと、細かな所を修正しました。

『これが、術刀〈瑞穂みずほ〉だ。カグラ、お前はこれに選ばれたのだ。思う存分、その力を発揮するがよい』

『はっ。我が身命を賭し奴らを消し去ります』

 その後、突如として臭った強い血の匂いと、耳に響いて残り続ける誰かの甲高い叫び声。

 その瞬間、ミコトは目が覚めた。体がビクッと跳ね、痙攣したように震える。

「まただ。また……」

 枕に手をつくと、それはじっとりと濡れていて。服にも汗と思しき濡れた後のシミが大きく何箇所にもできている。ミコト自身、息は上がり、喉は砂を噛んだかのように乾いていた。

「少し休むか……」

 ついさっきまで寝ていたのに休憩する、というのも変な話だが、この状況においてそれが正解なのだ。しかし、休憩するといってももう一度寝ることができるような状況でもない。ミコトは少しの間逡巡した挙句、とりあえず朝食を取ることに決めた。

 

「あ。おはよう、ミコト」

「おはよう。すまんが、枕を洗濯しておいてくれるか。寝汗で濡れてしまった」

「いいけど… 大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。少しよくない夢を見てしまっただけだ」

 そうミコトが答えると、ミコトのことを心配してくれた少女──ミヤビは、安心したように息をついた。しかし、心配が完全に消え去ったわけではなかったのか、チラチラとミコトの方を幾度も覗き込み心配そうにしていた。それでも、これ以上の詮索はされたくないというミコトの思いを感じ取ったのか、そっと話題を切り替え、明るく振る舞った。

「ところで!ついに明日だよね、ミコトの『契約の儀』!」

「ああ、そうだな。俺が使える術刀は何になるのか。いい刀だとよりいいが、それは誰にもわからんからな。俺自身、想像がつかん」

 それを聞いて嬉しそうな顔になったミヤビは、いつも共に過ごしていたミコトも息を呑むほどに綺麗だった。

「まぁ、ミコトなら大丈夫だよ。明日のためにミコトは毎日鍛錬してきたんだからさ」

 

「そうだといいけどな。──まだできないのか?朝食は」

「あ!忘れてた〜!!…焦げてるけど、食べる?」

「……それを、焦げと思うのか?どう見ても炭だ。食えたものじゃない」

「……もっかい作るね」

「ああ、頼むぞ」

 ミヤビは成功するととても美味しそうな料理を作る反面、よく失敗する。〇か百かのギャンブル料理人の名に恥じない成功率も誇る。なお、ミコトは全くと言っていいほど料理ができない。そのため、ミヤビに対してミコトは文句は言わないし言えない。ちゃんとした料理を食べるためには必要なことだからだ。

「──よし、できたぁ!!」

「本当に食えるのか?」

 そう笑いながら言うと、冷めた眼で見つめ返され居た堪れなくなる。

「いらないなら私が食べるけど?」

「すいませんでした食べさせてくださいお願いします」

「必死すぎでしょ」

 土下座する勢いで頭を下げてお願いするミコトを見下ろし優越感に浸ったような顔で笑いながら料理を渡すミヤビ。ミコトはミヤビに対して逆らうことはできないが、これを見ると家庭内の権力はミヤビが全てを握っているようにも見える。

「おぉ、美味しそうだ」

「崇め奉ってもいいんだよ?」

「それは嫌だな。感謝はしている。ありがとう」

「お、おお。ミコトからありがとうなんて聞いたのいつぶりだろ」

「…なんかすまんな」

「…ほら!早く食べないと冷めちゃうよ!」

「じゃあ、頂こうか」

「召し上がれ!」

 ふふん、という声が聞こえてきそうなほどに嬉しそうに胸を張るミヤビを慈愛の眼で眺めながら朝食を取る。ミヤビの成功した料理はとてもおいしかった。

「…美味しい」

「おっ。やっと私の凄さがわかったのかな、ミコトくん?」

「わかってなかったというかわかりたくなかったというか。まあ、料理に関しては尊敬している。料理に関しては」

「なんで2回繰り返したのかな?目を逸らさないでもらるかな?ミコトくん?」

 そんな誰が見ても気の抜ける会話をしている間も、時間は刻一刻とすぎている。

「今、何時だ?」

「話逸らさないでよ。…九時だけどさ」

「11時から刀霊殿(とうれいでん)刀守(かたなもり)の方と顔合わせだ。それに遅刻はできん」

「あ、そっか。じゃ、早く食べないとじゃん」

「そんな時間はかからんから大丈夫だ」

 そう言っていたのに。時計が示すは十時五八分。

「やばいやばいやばいよ!ほらミコト、急いで!!」

「ああ、わかってる!」

 家では、二人がバタバタと慌てていた。理由はもちろん、遅刻しそうだからだ。ちなみに、遅刻しても何もないが、刀守が怒る。まだ見ぬ刀守を怒らせたくないミコトたちは、本気で焦っていた。

「じゃあ、ミコト!頑張ってね!」

「ああ!行ってくる!!」

 バタバタと転びそうになりながらも用意しきり、なんとか間に合わせようと全力で走り出す。刀霊殿の前に着くと、そこにはすでに刀守と思しき男が立っていた。

「すみません!ミコトです!!」

「おお、そんな焦らなくてもいい。というか、なんでそんな焦ってるんだ?」

「…え?だって、時間…」

「今はまだ十時だぞ?一時間も早いじゃないか」

「……えぇ?え?い、一時間、早、い?」

「? ああ。ちょっと待ってろ」

 そう言い残し、刀霊殿の中に刀守が入る。一分ほどしたところで、刀守が手に時計を持って出てくる。その時計が示していた時間は、十時五分。

「本当だ…?」

「だろ?一応、他のやつにも聞いてみるか」

 そう言って、他の家へと歩き出す。ミコトもついていく。

「今何時かわかるか?」

「え?あぁ、今は十時過ぎだね。ほら」

 家から出てきた村人が時計を見せてくれたが、その針はしっかりと十時過ぎを指していた。

「なんで……」

 あれだけ急いだのは全て無駄だったのか、と落ち込むミコトを見て、刀守は歩きながらミコトに声をかける。

「まぁ遅れてないんだし大丈夫だって。……じゃ、自己紹介しようか。俺はフミト。この村の六代目の刀守だ」

「俺はミコトです。親はいないので、術刀について何も知りませんがお願いします」

「まぁ、別に知識なんてあってもなところはあるけどな」

 そう言い笑うフミトにつられるようにミコトも微笑みをこぼす。

 刀霊殿に戻り、刀守から術刀について学ぶ。

「じゃあまず、術刀とは何か、だけど───」

 そうして三〇分ほど教え込まれた頃には、脳の容量がギリギリになり今にも頭が破裂しそうなミコトが完成した。

「おぅ、大丈夫か?」

「はひ。らいりょうふれす」

「まるで大丈夫ではなさそうだな。まあ、大事なことは教えてあるから、そこさえわかっておけば大丈夫だ」

「ふぉんとれすは?」

「その話し方やめれるか?すごい鬱陶しい」

「ふざけました。すいません」

 その言葉を聞いて、喉を鳴らすような独特な笑いかたをするフミトに苦笑いで返すミコト。空気はとても気まずかった。

「あ、ミコトー!!」

「ミヤビ?なんでここに?」

「いや、時計をいたずらで早めたの忘れてて……」

「犯人はお前かよ……」

「ごめんて。ところで、その人は…?」

「ああ、俺はフミト。この村の刀守だ」

「へー。若いですね!刀守の人ってもっとおじさんなんだと思ってた!」

「俺は最年少で刀守になったからな。それでも君らよりは五つ以上上だよ」

「そうなんですか!?ってことは──」

「ミヤビ、もういいだろ。もう話は終わったから帰ろうとしてたとこだし」

「へ?そうなの?」

「ああ。じゃあ、明日、契約の儀で。今日はちゃんと精神整えとけよ」

「はい!」

 フミトと別れ、ミコトとミヤビの二人で家に戻る。 

「時計は言っておいてくれんと困る」

「いやぁ、忘れちゃってて。ごめんごめん」

「謝る気なさすぎだろう」

「許してよミコト〜」

「まぁ良い。明日までには直しておけよ」

「りょーかい。任せてよ」

 そうして家に着き、夕食までは各々好きに過ごす。

 そして事件は夕食で起きた。

「ミコトー!出来たよー!」

「ああ、今行く!」

 そうして席に座ったミコトの前に置かれたのは真っ黒な炭になった何か。

「は?おい、これを、俺に、食わせるのか?」

「え?うん。あったりまえじゃん」

「ミヤビ…お前…」

 ふるふると震える拳を隠し、できるだけ普段通りに振る舞う。

「別に、要らないなら自分で作れば?」

 なぜか怒ったような拗ねたような声でミコトを突き放し顔を背けるミヤビは笑っていた。

「それなら、俺はこれをちゃんと食う。その代わり、俺がお前のを作る。いいか?」

「えー?嫌だよ。ミコト料理できないじゃん」

 ミコトはこの時まだ気づいていなかった。何故ミヤビがこれを出したのか、その理由に──

初めての投稿です。

もし続けて読んでくれる人がいるならぜひお願いします。

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