表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍華の英雄〜亜人戦記と弓を握りし臆病な少年〜  作者: オルレアンの人
第三章『過去の罪』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/58

51.未来を生きる

 (よし....何とか紅蓮隊長を助け出せた....!突然変なこと言い出してビックリしたけど、あとはこいつを倒すだけだ....!!)


「紅蓮隊長!まずは脱出しましょう!」

「いや、その必要はない」


 フォルネストの体内にいる祐基と紅蓮。

 祐基がどうにかして外へ出ようと行動を始めた中、紅蓮はそれを拒否した。


「え、必要ない?」

「奴の核の場所は、少なくとも胸の中心ではなかった。過去に一度、そこを突いたがこいつは死ななかった」

「胸の中心じゃない.....じゃあ核はどこに!?」


 祐基の声に焦りが滲む。


 蔓絡人マングルマンの心臓ともいえる核。

 祐基は、フォルネストも当然胸の中心に核があるものだと、そう思っていた。


 それじゃあこいつには核がないのかと言えば、恐らくそれはない。

 孫覇によってフォルネストの顔は半分吹き飛んだ。

 だが、フォルネストは死ななかった。

 しかも苦しむ様子も、痛みを訴える声もなかった。


 これは普通の蔓絡人と同じことで、核があるからこそだろう。

 核があるからこそ、致命傷にならない。

 フォルネストは今、外で体を再生させているはずだ。

 

 核を潰さない限り倒せない。

 だけど核が何処にあるのかわからない。

 

 (無敵かよ......)


 喉がごくりと鳴る。

 だが1人頭を悩ます祐基だったが、その握られた手に力を感じた。


「けど心配するな。お前には私がいる」


 そう祐基の手を握りながら、紅蓮は微笑みを見せた。

 自信に満ちた声と、迷いのない一言。

 その一言に祐基は、底知れない安心感を感じた。

 根拠はないが、この人がいれば大丈夫な気がする。

 屈釖に似た、そんな何かを。


「隊長....!」

「確証と言える程ではないが、核の場所に心当たりがある。私に任せてくれ」

「はい!」


 祐基は考える間もなく答えていた。

 迷いも疑いも一切ない、真っ直ぐな返事を。


「.....あの、ところでそろそろ手、離してもらっても....?」

「あ...あぁ!すまない!」


 紅蓮ははっとして、力強く握っていた手を離すと、慌てて偃月刀を両手で握る。


 (.....女性の手....初めて握ったけど、温かかったな.....)

 

 祐基は初めての経験に胸の鼓動が早くなる。


「......終わったか.....別れの言葉は.....?」


 その声が響いた瞬間、二人は反射的に武器を構えた。

 その声、フォルネストの声に。


「.....やってくれたな.....人間.......我の体を破壊し.....我の栄養を解放するとは........」


 真正面、蔓の壁より徐々にそいつは現れる。

 蔓絡人...だが普通の個体とは少し違う。

 図体が一回り大きく、顔は西の大陸で見られる騎士の兜を模したような形をしている。

 全身が蔓、尻尾が生えているところは普通の個体と確かに同じだが、明確な“格”の違いを一目で感じさせた。


「蔓絡人.....?」

「いや、おそらくこいつが.....フォルネストの本体だ」

「本体....!?」


 紅蓮の言葉に、祐基は思わず息を呑んだ。


 (こいつが本体....!?じゃあ今までのあの体は.......)


 到底信じがたい。

 だが、祐基の脳裏にフォルネストの言葉が蘇る。


『......これらは我の子供の様なもの.......全ては我が生み出している.........どこでだろうと......何体だろうと生み出せる..........』


 実際、フォルネストは蔓絡人を目の前で生み出していた。

 姿形は皆同じだったが、もし仮に形を変えて出せるとすれば、あの体はフォルネストが作った鎧。

 フォルネスト本体が操っていただけという考えは確かにできる。

 とすれば、目の前にいる奴が本体であってもおかしくはない。


「.....ほう......何故だ.......?」

「お前を見た時....お前がフォルネストだと、あの叫び声と直感で確信した....孫覇も同じようにな。だが気になる点が一つあった。それは...昔見た時と、お前の姿が違っている点だ」


 紅蓮は続ける。

 

「過去に軍が捕らえた蔓絡人を実験でバラバラにした事がある。何度も何度も、環境や閉じ込める場所を変えて。だが何度再生しようと蔓絡人は必ず同じ姿に戻った。恐らく...蔓を伸ばすことはできても、腕や足を増やしたり、体の形を変える事はできないんだろう」


 紅蓮は偃月刀を、ゆっくりとフォルネストへ向ける。


「じゃあ.....なんでお前だけは形を変えられた?生物はどれだけ鍛えようと体の形は変えられないぞ」


 フォルネストを鋭く睨みつけ、紅蓮が問いただすが、何も答えない。

 ただ紅蓮を見据えるのみ。


「違う個体の可能性....と一瞬思いもしたが、お前はあの日の私を知っていた。お前は蔓で自分の体を作ったんだ。あの巨体は人間で言えば服のように着ているにすぎない。核が胸の中心にないのはそれが理由だろ。じゃあ核の場所は何処か....お前の胸だろ」


 紅蓮は確信の眼を向けていた。

 その考えが間違いない、正解であると確信しているように。


「.....なるほど.....面白い仮説だ.....で.....?仮にそれが正解だったとしてどうする.......その服とやらがなかろうと.....我は他の蔓絡人よりも遥かに強いぞ........」


 だが、フォルネストは動じなかった。

 それが正解なのか間違っているのか、顔は一切教えてくれない。


「.....どちらにせよ」


 祐基はフォルネストに弓を向ける。


「この距離なら...俺の矢は絶対外れないッ!!」


 そして放つ。

 いかづちは一直線にフォルネストに命中する....が、矢は衝突と同時に弾かれ、地に落ちた。


「っ.....お前もかよ!?」

「.....当然だ.....蔓の硬度は変わらんぞ.....」


 (つまり矢は効かない......状況は大して変わってないか.....!)


 祐基は自身の力不足に歯を食いしばった。

 

 (俺にこの蔓をどうにかできる力があれば....こいつも外の体も倒せたはずだ....!孫覇さんだって.....死なずに済んだ.....!俺が....もっと強ければ.....!!)


 胸の奥に、どうしようもない悔しさが渦を巻く。


「祐基」


 だがその肩に、優しく手が置かれた。


「大丈夫だ、私がいる」


 その紅蓮の姿に、祐基は屈釖の姿を見た。

 ずっと屈釖に感じていた、きっとどうにかなるという安心感。

 その一言で、胸のざわめきが嘘のように消えていた。


「.....また助けられておいて.....まだ沈まないのか........あの時のように恐怖に染まれ.....人間......」

「確かに....私は助けてもらってばかりだ、私を助けたせいで死んだ人もいる。今までの私は....罪だけを背負い、死んで楽になりたいと死に場所を探し続けていた」


 紅蓮は胸を張り、声を張り上げた。


「だが、私は決めた。託された想いを...罪と共に背負い生き続けるとな!」


 そして、力強く叫ぶ。


「フォルネスト!お前をここで倒し、私は先に進む!祐基と共に...未来を生きる!!」

「.....何度も言わせるな......!我の名を......気安く呼ぶな......!!」


 フォルネストが怒りの宿る声を上げると、腕が畝り伸び、迫る。

 紅蓮と祐基はそれを躱し、祐基は即座に矢を放つが、当然弾かれた。

 

「くっ...紅蓮隊長.....!」


 紅蓮が祐基に寄り、耳元で小さく告げる。

 

「祐基、10秒欲しい。それで奴を倒してみせる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ