14.到達
「バリスタ部隊!!魔道機人を狙えッ!!!弓兵部隊は蛇蜻蟲だッ!!!」
弓兵たちは素早く弓を引き絞り、次々と矢を放つ。
空中を滑空していた蛇蜻蟲は、幾本もの矢を浴び、墜落していく。
だが、群れはあまりに多く、そのすべてを撃ち落とすには到底足りなかった。
羽音を轟かせ、残った蛇蜻蟲たちがついに、長城の歩廊に次々と降り立ってしまった。
「ジュジャァァァッッ!!!!」
降り立つと同時に蛇蜻蟲は、兵士たちに対し威嚇のような奇声を上げた。
「近接部隊!!敵を長城から追い出せッ!!!」
指揮官の怒号が飛び、剣を構えた兵士たちが前へと躍り出る。
剣を振る音、甲高い叫びが交錯し、歩廊の上は瞬く間に戦場と化した。
そして。
「うわっ...!!?」
祐基たちの前にも、数体の蛇蜻蟲が降り立った。
その複眼が赤く光り、顎がカチカチと鳴る。
まるで獲物を見つけた捕食者のように。
「きっ...来たっ....!!!」
「や、やるぞっ!!」
新兵たちは慌てて武器を構えた。
手が震え、刃先がかすかに揺れている。
それでも、必死に仲間と共に立ち向かおうとしていた。
「第三偵察部隊!!!」
紅蓮の声が、戦場を裂くように響く。
次の瞬間、紅蓮の偃月刀が走り、降り立った蛇蜻蟲の胴を一閃。
さらに、返す刀で残りもまとめて薙ぎ払う。
緑色の血が石畳に飛び散り、虫の体が崩れ落ちた。
「た....隊長!」
「蛇蜻蟲は大顎と短剣にさえ気をつければ大したことはない!!」
紅蓮は偃月刀を構え直し、強い眼光で新兵たちを見据える。
「訓練施設の基礎剣術で十分に対応できる亜人だ!!恐れるな!!私に続き、長城から奴らを追い払えッ!!!」
「「「お....おぉぉぉッ!!!」」」
新兵たちは武器を握り直し、雄叫びを上げた。
その声に呼応するように、再び蛇蜻蟲が1体、2体3体と降り立つ。
「その....通りだッ!!!」
だが、その蛇蜻蟲が動くよりも早く、背後から屈釖の柳葉刀が、蛇蜻蟲の胴を真っ二つに切り裂いた。
「屈釖....!!」
「お前らには俺がいる!!誰1人死なせやしねぇよ!!」
屈釖が豪快に笑い、血を払う。
その姿に新兵たちの表情が変わる。
恐怖に引きつっていた顔が、徐々に兵士の顔になっていった。
さっきまで恐怖していた蛇蜻蟲1体を相手に、ピタッと真っ直ぐな剣を向け慎重に囲い、そして。
「今だっ!!」
掛け声と共に、蛇蜻蟲を囲っていた新兵たちが剣を振り下ろす。
蛇蜻蟲の体を何本もの刃が貫いた。
緑色の血が飛び散り、軍服と地面を汚す。
初めての亜人討伐を果たした新兵たちは、歓喜の声を上げ、次の敵へと鋭い視線を向けた。
「こういう時は頼りになるな、屈釖」
「いつだって俺は頼りになんだよ!紅蓮隊長よ!」
屈釖は笑いながら次の敵へ向かう。
だが、死角から蛇蜻蟲の短剣が迫る。
「ぬおっ!!?」
間一髪で剣で受け止めたものの、足を止め押し合う形となった。
その最中、大顎が音を立て屈釖の顔を噛み砕こうと迫った。
祐基はすぐに矢を番え、放つ。
矢は蛇蜻蟲の頭に命中し、蛇蜻蟲は呻き声を上げ、そのまま崩れ落ちた。
「ふぅ、ありがとよ祐基!」
「うん!援護は任せて!!」
祐基はすぐに次の矢を番え、空を飛び回る蛇蜻蟲へ狙いを定める。
矢は次々と空を飛び、全ての矢が蛇蜻蟲の頭を正確に撃ち抜き、墜としていった。
「亜人、50メートルにまで接近!!!」
「第一、第二近接隊!!!手投げ爆弾を使えッ!!!」
兵士たちは木箱を開き黒い球体を取り出す。
導火線に火をつけると、勢いよく荒野へと投げ放った。
それらは地面に落ちた瞬間、ドンッ!!!と閃光と共に爆風を巻き起こし、亜人たちは肉片と共に空へと舞い上がった。
兵士達は休まず、次々と黒い鉄球を投げ続け、下からは止まない爆発音が鳴り響く。
だが、それでも亜人の動きを止めれず、ついに亜人達は長城へと辿り着いてしまう。
「亜人到達っ!!!」
「総員、気合いを入れろッ!!!何としてもここを死守するんだッ!!!!」
蔓絡人と毒蠍人が壁を這い、長城をよじ登ってくる。
さらにその後方から、幾つもの粗雑な木製の梯子を抱えたオークや鱗魚人たちが、次々と長城に梯子をかけ始める。
「弓兵!!!梯子を登る亜人を狙えッ!!!」
弓兵たちは狙いを切り替え、梯子の亜人を狙う。
「火魔法来るぞッ!!!」
「くそっ!!」
だが、魔道機人の放つ火球が長城にぶつかり、爆ぜる。
亜人を狙いたいが、魔道機人の攻撃に身を伏せるしかない弓兵たち。
その隙を突くように、亜人たちは次々と梯子を登ってくる。
祐基もまた、狙いを梯子の亜人へ。
矢を休むことなく放ち、登ってくる亜人を射ち落とすが、あまりにも数が多すぎる。
矢の数が追いつかない。
そしてついに、蔓絡人と毒蠍人が鋸壁の上に姿を現す。
さらに、梯子を登り切り、歩廊へと降り立つ鱗魚人とゴブリンたち。
亜人たちは、ついに長城へと登りつめてしまった。




