0.プロローグ
龍華帝国。
それはこの星にある2つの大陸、その内の一つである東の大陸の最南端に位置する半島、そこに存在する大国だ。
かつて世界を支配していた魔王が勇者によって討ち倒された2000年前に正式に建国された、皇帝を頂点とした龍を信仰する国家であり、西の大陸の『ローグ王国』、大洋に浮かぶ島国の『日の国』と並ぶ歴史ある国だ。
国内は皇帝の絶対的な権力と、強力な軍隊によって治安が保たれ、世界でも有数の安全な国となっている。
技術面では黒色火薬を発明しており、科学的に進歩しているがその反面、魔法技術には遅れ、国内の魔導士の数は他国と比べると驚くほど少ない。
それも、いるのは主に回復系魔法を使える『僧侶』ばかりだ。
そのため魔法に関しての知識は国全体で低い。
国の周辺には、西に海を挟んで日の国。
北西には聖の神を信仰する聖のオークと、闇の神を信仰する闇のオークが手を組み作り上げたオーク信仰領。
そして北東には多数の危険な亜人が生息するゴバ荒野が存在する。
日の国は鬼族の女王が君主の国家であるが、住んでいるのは人間ばかりの、同じ人間国家であるため、軍事と技術面での協力をしあっている友好国だ。
近隣で他の人間国家は、荒野を超えた先にあるアスティカ森林国という亜人国家とインガ王国という、人もいるが主に亜人の国家。
その2カ国を超えた先にあるアメリア王国が最も近い人間国家であるため、日の国との協力は国家が生きていくために必要不可欠だ。
というのも、亜人達は人間を遥かに凌駕する身体能力、種族固有の特殊な力を持っており、もし荒野の亜人達が手を組み攻めてくれでもすれば、たちまち龍華帝国は滅びてしまう。
幸い荒野の亜人同士は仲が悪く、争ってばかりのためそんな事が起きたことはないが、だからこそ人間国家同士の協力は、この過酷な世界で絶対に必要なのだ。
しかし、一握りの亜人達が攻めてくるのは珍しくもなく、国が建国したばかりの頃は、その度に数えきれない民と兵士が犠牲となり、国の発展どころではなかった。
初代龍華帝国皇帝は、そんな亜人に対抗すべく半島を横断する全長500キロを超える城壁を作り上げた。
いかなる攻撃だろうと決して崩れることのない堅牢の城壁、名を『龍鱗の長城』。
壁の上や各所に隣接されている砦には、計150万を超える兵士が常に駐屯しており、無限の如く配備されている矢に、射程400メートルの投石器が数多く設置されている難攻不落の長城。
兵士一人一人も屈強な体と精神を持っており、世界最強の軍隊であると言われるだけの軍事力を誇っている。
初代皇帝が作り上げたこの長城は、龍華帝国の歴史上、ただの一度も荒野の亜人達を国内へ侵入させたことがない、国家の誇りそのもの。
もしこの壁が崩れた時、その時が国の終わりであろう。
そんな言葉が民の間で流れており、それだけ龍華帝国の市民にとって壁の存在は絶対であり、亜人達への恐れが現れているのだ。




