第18話「清算の旅~職人の真心~」
四ヶ所目、錦舞国で座ったあの姿勢は、正座というもので、国の伝統らしい。
足が痺れて、しばらく立てなくなる。不思議な座り方だ。
『今回は、お城には行かずに洋服を作っているところにお金を渡してほしい』と手紙に書いてあった。
洋服を作るところは、私も気になっていた。
それと、着物というものにも興味がある。
ドレスとは違う独特の華やかさ。
私が着てみたら、どう見えるのか。
......気になる。
「着きましたよ」
ラスファールが馬車の扉を開けている。
馬車の中には、私ひとりだけが座っていた。
「ルナセインとラグマールさんはどちらに?」
「洋服の工場です。先に向かわれました。リリシラ様、寝ていましたから」
「ええ、私も向かいます」
「お願いしますよ、リリシラ様。一時間待ったんですから」
恥ずかしい気持ちを抱えつつ洋服工場に向かった。洋服工場の外見は王宮と民家を組み合わせた見た目で白を基調としている。
ルナセインとラグマールのいる部屋に通されると、ちょうど会話が盛り上がっているところだった。
「ちょうど来ていただきましたし、着物を着てみていただきますか?」
「是非お願いします」
ルナセインとラグマールは同時に頭を下げる。
「リリシラ様、行きましょうか」
ただ言う通りについていく。
寝ていたからか、現実味がない。
今も夢の中だろうか。
案内された部屋には、多くの人がいて作業をしている。きっとサンタクロース関係のことだろう。
「始めましょうか」
案内してくれた女性の方が、次々と布を持っていき、私と布を交互に見て、また新しい布と私を交互に見るのを繰り返し行っている。
もしや、今から私に合う着物を作ろうとしているのかもしれない。
彼女はああでもない、こうでもないと呟きながら布と私を見ている。
「もしかして、今から着物を作ろうとしてます?」
とぼけた質問を投げてみる。
「そうよ。普段、どんな色のドレスを着ているのかしら」
「黄色とか赤、オレンジ、ピンクの明るい色を選びます」
この色たちを選ぶ理由は一つ。
気分が上がるから。
落ち着いた色も試してみたけれど、いつもしっくりこない。
結局、暖色系に戻ってしまう。
寒色系でも合う着物とかないのかしらと考えていると、鮮やかな緑の布を持ってきた。
彼女は私と布を見て満足そうにうなずく。
「良いのが出来そう」
彼女はそう言い残して、奥へと消えていった。
近くに椅子があったので腰を下ろし、周囲を眺める。
私の存在が見えていないのか、それとも気にしていないのか。
洋服づくりに夢中である。
長い針がちょうど三周まわった時、彼女が戻ってきた。
「最高の着物が出来ました」
彼女が持っているのは、さっき見ていた鮮やかな緑の布を使った着物。
「これを着ましょうか」
彼女の言葉に三人の女性が来た。
「リリシラ様に合う最高の着付けを」
「初めての着物に感動を」
「私たちが作り上げます」
三人とも、張り切っている。
着物の着付けが始まった。
ドレスの着方とは違っていて、布を体に纏わせるのが特徴だ。鮮やかな緑に蝶々と花の装飾が描かれた布を自分の体に合わせて調整していく。
それと、足袋というものを初めて履いてみた。
靴下に似ているが、少し違う印象。見た目も独特。
「リリシラ様、どうでしょうか?」
「悪くないわ」
鏡を見ながら、自分の格好をみる。明るい緑にピンク色の蝶々と花の装飾に薄紫色の帯がかなり自分に合っている。
なかなか着ない色の組み合わせだから新鮮だ。
「見せに行きましょうか?」
「――え?」
「ルナセイン様、ラグマールさん楽しみにしてるんですよ」
「――わかりました」
草履を履いてルナセイン、ラグマールさんのいるところに向かわないといけなくなるのか。
初めて履くもので、向かう途中で転んでしまうか不安だ。
「行きましょう」
ルナセインとラグマールがいる部屋に戻った。
私の着物を見たルナセインとラグマールは、じっと見つめていた。
「……美しいです、リリシラさん」
ルナセインはしんみりと答える。
「麗しいでございますぞ、リリシラ様」
ラグマールは驚いたように言う。
二人とも満足しているようだった。
今まで着ていたドレスに着替え、馬車のある場所へ向かう途中、
着物のときから一緒にいた女性が、馬車に乗り込むまで見送りをしてくれるようで、一緒に歩いていた。
馬車に乗り込むとき、彼女から木箱を渡された。
「特別な日に、この着物を着てくださいな、リリシラ様」
「ええ、わかったわ」
私はそう答えて、木箱を受け取った。
箱の中には、あの着物が綺麗に畳まれて入っていた。
桐の木箱に収められていて、この箱に入れておくと長持ちするらしい。





