第52話 川崎夢花
新しい生活が始まった。
結婚式のあとに役所に向かい、婚姻届を提出したんだ。
これで俺と夢花は恋人から夫婦になったんだ。
役所にて二人で結婚届を出す。
「川崎夢花⋯に、なっちゃいました!」
嬉しそうに自分の名前を連呼している夢花。
結婚式で疲れているかと思ったがそうではなかったな。
若さもあるからか?
俺は若干の疲れが⋯⋯⋯いや、そんなことはないと思わないとな。
これから俺は長生きするんだ。
夢花と共に歩むために。
結婚式をする前から徐々に大地さんと住む新居の準備を進めていた。
大地さんの家じゃ少し狭いからと言って、新築のマンションを購入してくれた。
今日からそこに大地さんと住むんだ。
ドキドキが止まんないよ~。
もう荷物は全部運び終わっている。
あとは二人で住むだけ。
購入したマンションは私の実家から徒歩5分くらい。
いつでも帰ってきていいってお母さんに言われてる。
「何このマンション。素敵じゃない。お母さんもここに住もうかしら。部屋も余ってるし、大地さんに私も甘えちゃってもいい?」
なんて言ってる。
大地さんも優しいから、いいですよ~なんて言っちゃってるし。
だめに決まってるじゃん!
私と大地さんと、子供の家なんだからね!
⋯⋯⋯子供?
わわ、私なんてことを⋯
まだ子供なんて早いよね。
それにまだ⋯⋯キスしかしてないもん。
しかも一回。
え、まってまってまって!
今日からずっと二人きりなんだよね。
ちょっと、まって、本当にまって。
わかってたけどまって!
舞い上がってたけど、そういうことだよね?
むり、恥ずかしすぎて無理!
「さぁ、入ろうか」
途中から顔を真っ赤にして黙りこくっていたが大丈夫だろうか。
声を掛けても心ここに非ずってかんじだったな。
玄関を開け部屋に入る。
まだまだ新築の香りが空間に充満していく。
今日からここで、新婚生活が始まるんだ。
「なんか緊張しちゃうな」
「そ、そそそ、そうですね!」
リビングの3人掛けのソファに腰掛ける。
なんだか微妙に距離が離れてないか?
いつも二人きりならピッタリくっついてくるのにどうしたんだ?
ダメダメダメ!
考えないようにするともっと考えちゃう、もう無理だよ、頭がパンクしちゃう。
「夢花のウェディングドレス、似合っていたな。とっても綺麗だった」
そんなこと言わないで、ドキドキが増しちゃう!
「だ、大地さんも、その、あの、カッコよすぎて⋯⋯⋯」
全然まともに話せないよぉ。
「お、お茶!お茶入れてきます!」
急に立ち上がったかと思ったらキッチンへ駆けていく夢花。
大丈夫⋯か?
俺より緊張してそうだな。
「きゃっっっ!」
湯呑みの割れる音と共に夢花の悲鳴が上がる。
俺もキッチンへと駆け寄った。
「大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫⋯です。でも、大地さんの新しく買った湯呑みが⋯」
「夢花に怪我がないならいいんだ。湯呑みはまた新しいのを買いに行けばいいんだしな」
「ごめんなさい、せっかくの新生活の初日に⋯雰囲気台無しですよね⋯⋯」
「俺だって緊張しているんだ。いつも通りにいかなくてもいいじゃないか」
「はい⋯⋯⋯」
「これからずっと二人なんだ。さっき永遠の愛を誓ったばかりだろう?」
「⋯⋯⋯⋯はい」
「夢花、何度でも誓うよ。愛してる永遠に。ゆっくりゆっくり二人の生活を始めていこう」
「⋯⋯⋯⋯はい!」
「気をつけて片付けよう」
「わかりました!」
わかってたけど、やっぱり大地さんは優しい。
この人と結婚できて本当に良かった。
お茶を淹れ直してソファに腰掛ける。
緊張して少し離れてたけど、今はもうピッタリとくっつけた。
やっぱりこうしてないと落ち着かない。
大地さんの腕に絡まりながら寄りかかる。
あったかいです。
お茶を啜りながら夢花の温もりを感じる。
⋯⋯嬉しいんだが、動けないんだ今度は。
湯呑みをサイドテーブルに置く。
その手で夢花の頭を撫でた。
「ふぅ、落ち着いたか?」
「はい、もう大丈夫です。でも整髪料で髪の毛ベタベタしませんか?」
「そうだが、こうしたかったんだ」
「えへへ、大地さん」
「なんだかやっと実感が湧いてきたな」
「実感?」
「あぁ、夢花と結婚できたって。夫婦になれたんだってな」
「わぁ、そんな⋯こと言われたら、また⋯」
俺は夢花を抱きしめた。
優しく。
包み込むように。
「二十歳の誕生日おめでとう。そして結婚してくれてありがとう」
「はい⋯ありがとうございます⋯」
大地さんに言われて私も実感が湧いてくる。
恥ずかしいけど、それ以上の幸せを感じているの。
大地さん、あなたと夫婦になれて幸せです。
まだドキドキしちゃうけど、ゆっくりあなたとの愛を育んでいきたいです。
「もう⋯⋯しなくて⋯⋯よな⋯⋯」
「え?なにか言いました?」
「ん、あぁ。なんでもないんだ」
我慢とかなんとか聞こえたような気がするんだけど⋯
大地さんはなにか我慢してたのかな?
危ない危ない。
夢花はなにもかも初めてなんだ。
ゆっくりしないとな。
これからは何も我慢することはないんだ。
夢花の何もかもを愛すことができるんだ。
ゆっくりゆっくり⋯⋯
「はうっ!」
おっと、気が付いたら頭にキスをしてしまったじゃないか。
このくらいはいい⋯⋯⋯よな?
なんでなんでなんで?
一回だけじゃないの?
何度も何度もされたら⋯⋯
なんか変な感じになっちゃうます。
「だ、大地さん⋯も、もう、なんかだめれす⋯⋯⋯」
「す、すまない夢花。このくらいにしておこうかな」
「は、はい⋯⋯⋯」
「もう夜になるし、風呂にでも入ろうか。お互い髪の毛洗いたいもんな」
お、おふろ!
一緒に?
うそでしょ?
ほんとに?
「栓が閉まってるか確認してくるな」
ま、まって大地さん、こんなの⋯⋯
こんなの心の準備ができてません!
お風呂を沸かすアナウンスがキッチンにあるパネルから聞こえてくる。
その音で身体がビクッと反応しちゃう。
「よし、これで大丈夫そうだな。夢花が先に入るか?」
え?私が先?
あとから大地さんが入ってくるってこと?
え、先がいいの?後がいいの?
ねぇほんとうにどうしたらいいの?
「でも後のほうがゆっくり入れるよな。よし、じゃあ今日は俺から入るとするよ」
どういうこと?
大地さんが先ってことは、私が途中から行けばいいの?
は、ハードルがどんどん上がってます!
「夕飯は何か簡単なものを食べればいいよな、ケーキもあるしそうしようか」
ソファにに腰掛けて夢花に声を掛けるが反応がない。
「どうした」と声を掛ける前にわかった。
顔を真っ赤にしてフリーズだ。
一体何を考えていたんだ?
「夢花、夢花?大丈夫か?」
「は、はひ、らいじょぶれすぅ」
風呂前からのぼせてるのか?
大丈夫には見えないぞ。
夢花の火照りを冷ますためにぱたぱたと手で仰いでいると、風呂が湧いたようだ。
「それじゃあ俺は風呂に行ってくるな」
「ふぁい⋯」
なんだか心配だが、少し一人にして上げたほうがいいよな。
行っちゃった⋯
どうすればいいんだろう。
お背中お流ししますってやつなの?
それしないとだめ?
むりむりむり、どうしたらいいの。
夕飯とか言ってたよね大地さん。
⋯⋯⋯そっか!
大地さんが出るまでに作ってればいいんじゃん!
私って天才。
そうしよ!
「夢花、お先に頂いたよ、ありがとう」
風呂上がりからいい匂いがするなと思っていたが、夕飯を作ってくれていたのか。
「あっ、大地さんおかえりなさい!」
おっ、雰囲気もいつも通りに戻ったな。
料理をしている夢花をダイニングテーブルに座りながら眺めている。
これが幸せなんだろうな。
この何気ない日常を、愛する人と過ごす。
最高だ。
「もうできるんで、一緒に食べてから私はお風呂行きますね!」
これで一緒にお風呂は回避できた、よね?
「ありがとう、それじゃあ先に夕飯にしよう」
大地さんにお風呂上がりの水分を出して、料理の盛り付けをしていく。
このあとはケーキもあるし、このくらいでいいよね。
大地さんも簡単なのって言ってたし。
「どうぞ大地さん、召し上がってください」
「ありがとう、いただきます」
食事をしている大地さん。
一口食べる度に美味しいと教えてくれる。
幸せすぎちゃう。
これから毎日この幸せを味わえるんだ。
ずっとずっと。
ずっと愛してます大地さん。
今日から私はあなたの妻です。
夢花と目が合う。
お互い自然と笑顔になる。
何もかもが幸せに思える。
川崎夢花になってくれた君を、俺は永遠に愛してる。
この何気ない日常に彩りを与えてくれた君を。
「ありがとう夢花」
「はいっ!」
fin.....?
最後までお読み頂きありがとうございました。
ラブコメは初めてでしたがいかがでしたでしょうか。
エロなしのラブコメに需要なんてないとわかってて書き切りました笑
それなのに複数人の人達が最後まで読んでいる事実に感動しております。
感謝してもしきれません。
大地と夢花の物語は⋯⋯⋯
少し大人な内容で続きを数話書きたいと思います。
なので本編はこちらで完結です。
アルファポリスで続きは読めます。
ノクターンノベルズにもそのうち上げます
それではまたお会いしましょう。




