第45話 レッパンちゃんと戯れよう
ここがレッサーパンダ舎か。
食事を食べた後に少し園内を見て周っていた。
時間が来たのでレッサーパンダと戯れに来たわけだ。
「大地さん大地さん!ついに会えますね!レッパンちゃんレッパンちゃん、待っててね~」
ウッキウキとはまさにこのことなんだろうな。
繋いだ手をぶんぶん振り回してるのもまた可愛いらしい。
「ここから入れば良さそうだな。触れ合いタイムはこっちって書いてぞ」
「はい、行きましょう!」
レッサーパンダに触れることが出来るのか。
果物なんかをあげることもできるらしいしな。
これはもう俺も鼻血がでるんじゃないかってほど興奮しそうだな。
やっと会えるんだ、レッサーパンダに。
本当に夢みたい。
大地さんと一緒にレッサーパンダと遊べるの!
今までの人生でこんなに嬉しいと思ったことってあったかな。
こんなにワクワクしたことってあったかな。
そのくらい今の私は興奮しちゃってる。
鼻息が聞こえちゃいそうなくらい。
恥ずかしいけど、それ以上に興奮してるのが分かる。
「ようこそレッサーパンダの触れ合いタイムへ!」
受付を済ませ、予約者の集まっている所へ案内された。
飼育員のお兄さんとお姉さんが出迎えてくれる。
参加者が集まると飼育員が説明をしてくれた。
「凄いですね大地さん、個別で触れあるって言ってます!」
「そうみたいだな、早く会いたいなぁ」
俺もワクワクが止まらない。
1組、また1組と案内されて行く。
「次ですね!次!早く早く~」
「落ち着け言いたいところだけど、これは無理だな。早く俺も会いたい」
2人ともソワソワしてるのを隠さない。
今か今かとうずうずしている。
「それでは次の方、こちらへどうぞ!」
つ、ついに来た!
繋いだ手をギュッと握り合う。
今の私と大地さんの気持ちは一緒。
レッサーパンダと戯れる。
その気持ちでシンクロし合ってる。
大地さんを見ると、目が合った。
優しく微笑んでくれる。
いつもの優しい笑顔。
頷き合い、飼育員さんの指示に従い進んでいく。
進んだ先は大きなフロアがあった。
そこに触れ合いタイム予約者が散らばってレッサーパンダと戯れている。
「それではこちらに座ってお待ちください!」
飼育員に言われ所定の場所で待つことに。
「来ますね!レッサーパンダ、来ちゃいます!」
「来るな、俺達のところにも来ちゃうな」
ソワソワが最高潮に達している時、天使が俺たちの前に現れた。
トタトタと歩いて近づいてくる。
「き、来ました!」
「来たな!」
喜びのあまり2人して声を上げる。
ハッと何かに気付いた顔をしたレッパンちゃん。
パタパタと走ってこっちに近づいてきた。
私が事前に渡された果物を持っていたから?
私目掛けて走ってきた。
私の膝に手をかけ状態を起こし、その愛らしい顔で私を見つめてくる。
欲しい?欲しいの?果物欲しいの?
上げる、上げるから、かわいいいいい。
可愛すぎて声が出せない。
「それでは注意事項を守って遊んであげてください。この子は女の子でチョコちゃんです!」
チョコちゃん?名前も可愛すぎる!
「チョコちゃん、よろしくね?食べる?」
「可愛いなぁ、触っていいのかなぁ」
大地さんもチョコちゃんの可愛さにメロメロだ。
これがめろいってやつね。
夢花が巨峰を一つ手に取り口に近づけた。
ジッとそれを見つめるチョコちゃん。
ペロッと舐めてから巨峰をパクリと食べた。
その仕草が可愛いらしい。
俺と夢花は2人して目がハートになっているだろう。
「これは⋯⋯⋯可愛すぎるな⋯」
「はい、これは反則です天使です死んじゃいそうなほどキュンキュンしてます⋯」
俺は語彙力が死んでるし、夢花は意味が不明だ。
「大地さんもこれあげてみてください!」
夢花からカットされたリンゴを受け取る。
チョコちゃんはリンゴも好きなのか?
リンゴをずっと目で追っている。
グイグイ来ない大人しい子なんだろう。
その愛らしい顔を見ていたら自然と頭を撫でていた。
目を細め気持ちよさそうにするチョコちゃん。
リンゴを近付けると両手でそれを掴んだ。
目がキラキラしているように見える。
匂いを嗅ぎパクリとかぶりつく。
ああ、何をしても可愛らしい。
連れて帰りたい⋯⋯⋯⋯
リンゴを食べ終わったチョコちゃんを指でつついてみる。
気になったのね。
顔をこっちに向けてくれた。
とっても可愛い。
お顔に指を近付けると、私の指をぺろっと舐め、指先を甘噛みで咥え、あむあむと口を動かしている。
なにこれ死んじゃう。
脳内から何かが分泌されてるのかな。
もうこの子に、チョコちゃんに夢中になっている。
大地さんも真似をして指を近付ける。
チョコちゃんは大地さんの指も同じように咥えあむあむと口を動かしている。
大地さんとチョコちゃんを交互に見る。
家族にしたい⋯⋯⋯
「楽しすぎたな⋯⋯⋯⋯」
「幸せすぎました⋯⋯⋯」
夢のような時間はあっという間に終わってしまった。
レッサーパンダ触れ合いタイムが終わり、レッサーパンダ舎の外で立ち尽くしている。
なんで連れて帰れ無いのだろうか。
そればっかりを考えていた。
「連れて帰りたかったな⋯⋯」
「はい、うちの子にしたかったです⋯⋯」
気持ちの落差から来るものなのだろうか、俺も夢花も放心状態だ。
手を繋ぎながらとぼとぼと歩いた。
しばらく歩くとベンチがあったので2人で腰掛ける。
「また来ようか」
「はい、絶対にまた」
「月1⋯で来たいな」
「週1でもいいです」
2人ともどっぷりとレッサーパンダとの触れ合いにハマったようだ。
「ありがとうございました」
ふいに夢花にお礼を言われた。
「こんな素敵な時間を作ってくれて、本当にありがとうございました」
夢花は笑顔で俺に告げた。
とても愛らしかった。
それこそレッサーパンダより。
ベンチでそのまましばらくまったりと過ごしていた。
すごい楽しい夢のような時間。
レッサーパンダとの触れ合いもだけど、ゆったり流れる大地さんとの時間が嬉しかった。
このままずっと一緒に居れたらなぁ。
ふと大地さんを見る。
疲れたのかな?
目を閉じていた。
その横顔をじっと眺めている。
ちゃんとって言ってたよね。
今日は動物園だけなのかな。
それともこの後も何かあるのかな。
緊張の糸が切れたのかな、少し疲れを感じてしまう。
肩に重みを感じる。
違和感を感じた俺は目を開けた。
夢花が俺に寄り添って身体を預けに来た。
近づくことで夢花の匂いが俺の鼻腔を刺激し、脳を震わせる。
この感覚は感じたことがない。
聞いたことがある。
匂いが好きだと相性がいいと。
女性の匂いに嫌悪感を抱いたことはないが、ここまで好きになった記憶もない。
遺伝子レベルで俺は夢花に惹かれている証拠なのかもな。
この歳になって初めてだな。
もっと早くに出会いたかったと言うより、もっと後に生まれたかった。
無理なことだし、無駄なことなのに、どうしてもそれを考えてしまう。
「夢花、疲れたのか?」
どのくらい大地さんに寄りかかっていたんだろう。
やっぱり迷惑だったかな。
居心地が良すぎて寝そうになってたし。
大地さんの温もりと匂いが安心材料過ぎて、身も心もリラックスしてるんだ。
「大丈夫です!早起きしたから少し疲れただけで、まだまだ元気です!」
いつもの満面の笑みを向けてくれる。
俺はこの笑顔に弱い。
夢花の笑顔に俺はやられてるのかもしれない。
この眩しい笑顔を俺だけのものにしたい。
ずっとそう思っていたんだ。
繋いだ手を反対の手で包み込む。
「夢花、今日はまだ時間あるか?」
「は、はい、あります」
俺の声が少し真剣なのが伝わったのだろうか。
夢花も同じように真剣に返事をしてくれた。
大地さんに見たい動物がいるか聞かれたので、もう満足したと返事をする。
「それなら動物園はこのくらいにしておこう」
「わかりました!」
返事をして立ち上がる。
「行きましょ!」
大地さんの手を引く。
優しく微笑んだ大地さん。
ゆっくり立ち上がり並んで歩く。
まだ一緒にいられるんですね。
それが分かったら疲れなんて吹き飛んだ。
この後だな。
予定通りあの場所で告白しよう。
⋯⋯⋯やばいな、緊張してきた。
ちゃんと喋れるか心配になる。
俺と夢花は動物園を出て車に乗り込んだ。
「楽しかったですね!」
「ああ、本当に楽しかった。また今度来ような」
「はい、また一緒に行きましょう!」
車内でも当たり前かのように手を繋ぐ。
次はどこに行くか、それを聞かれることは無い。
今日の予定は全て俺に任せてくれているのだろう。
時刻はまだ16時だ。
帰るのは17時頃。
あの場所で夢花に⋯⋯⋯⋯⋯⋯




