第42話 決めた
待てないけど待ちます、か。
ありがとう夢花。
ようやく覚悟が決まったよ。
次の日の昼だった。
夢花はまだ仕事だろう。
予定は早く伝えた方がいいだろう。
昼休憩も終わってるだろうから、返事は仕事終わりかもな。
それまでに色々自分のことをやってしまおう。
仕事が終わった。
今日は大変だったなぁ。
もうこんな時間だ。
早く帰ろ。
帰り支度を済ませ会社を出る。
電車に乗る前にスマホを見る。
もちろん大地さんからのメッセージが来てないかの確認。
あ、来てる。
それだけで今日の疲れが取れるよう。
嬉しさを落ち着かせるように1度深呼吸。
『お仕事お疲れ様。今度の土曜日、会って欲しい。出かけないか?』
お誘いのメッセージだった。
嬉しさが喜びが止まらない。
このタイミングでお誘いだもん。
絶対⋯そうだよね?
ドキドキが止まらない。
返信できないほどに指が震える。
心音がうるさい。
喉も乾いてきた。
電車の音で我に返る。
1回落ち着かないと。
震える身体を何とか動かし電車に乗った。
スマホを手に取り夢花のチャットを確認する。
既読にはなってるようだな。
気長に待つとしよう。
どこに出かけようか。
ずっとそれを考えている。
目的はただのデートじゃない。
告白だ。
デートのプランニングって苦手なんだよなぁ。
一世一代の告白になるわけだし、適当に済ませられない。
デートに誘ったはいいが、予定が全く決まらない。
ドライブはこの前したしなぁ。
どうしたものか。
家に着いた。
ずっと大地さんとのチャット画面を見つめている。
返事はもちろんYESなのに、なんで送れないんだろう。
もちろん行きますって、どこ行くんですか?って送ればいいのに。
家に着いちゃった。
ソファにもたれかかる。
ぼーっとスマホを見つめる。
早く会いたい。
そうだよ、会いたいんだもん。
悩む必要なんてないもん。
もう俺は夢花とお出かけする気満々になっているが、未だに返事が来てないことに気付いた。
まさか断られる?
それとも予定があるのかもしれない。
だから返事が来ないのか?
それとも迷っているのか?
早くメッセージ来て欲しいなぁ。
カップに入れたお茶を1口飲んだ。
もう温くなっている。
テーブルに置くとスマホが鳴動した。
『行きます!楽しみにしてます!』
良かった。
第1段階はクリアだ。
すぐさまメッセージが来る。
『どこに連れてってくれるんですか?めいいっぱいオシャレしていきますね!』
それを今悩んでるんだが⋯⋯⋯
第2段階はそれだ。
どこにしようかなぁ。
スマホを操作しメッセージを送る。
⋯⋯⋯⋯無難なメッセージだなこれは。
『行先はまだ決まってないんだ。夢花は行きたいところはあるか?』
まだ決まってないのね。
行きたいところかぁ。
どこかあったかな?
少し思考を巡らすけど何思いつかない。
行きたいとこ行きたいとこ行きたいとこ⋯
『うーん、思いつかないです。大地さんとならどこでも嬉しいです!』
おっと⋯夢花からも無難な回答が⋯
誘ったのは俺だ、俺が決めるしかないだろう。
温泉は社員旅行で行ったよなぁ。
あの時にレッサーパンダのキーホルダーをお揃いに⋯⋯⋯⋯
レッサーパンダ⋯⋯
なるほど、いいかもな。
『行きたいところないなら、俺の決めたところでいいか?』
大地さんが決めてくれるんだ。
嬉しいな。
どこなんだろう。
聞いてもいいのかな?
『どこでも嬉しいのでお任せします!』
本当に夢花はいい子だな。
動物園にしても大丈夫と思うが⋯
大丈夫だよな?
レッサーパンダのいる動物園はどこがいいかなぁ。
いい所があるといいんだが。
『10時頃に迎えに行くよ。動きやすい格好の方がいいかもだ』
どこに行くかは秘密なのかな?
それはそれで楽しそう。
迎えにってことは車かな?
大地さん車もってるって言ってたもんね。
土曜日が楽しみ。
『楽しみです!明日もお仕事頑張ってきますね!』
俺も楽しみだ。
夢花の喜んでいる姿を想像する。
それだけで癒される。
当日はもっと癒されるんだろう。
『俺も楽しみだよ。明日も無理せずな』
そうだよね、体調管理もしっかりしておかないと。
具合悪いままデートしたくないもん。
あとは何着ていくか考えないと!
動きやすい服って言ってたけど、本当にどこに行くんだろう。
楽しみだなぁ。
あっそうだ!朝からだしお弁当作っちゃお!
ふふ、行き先は秘密だし、お弁当も秘密にしちゃおうかな?
あっ、でも予約してたりしたら無駄になっちゃうかな。
『当日はお弁当作って行きますね!』
夢花のお弁当か。
行き先は動物園だからちょうどいいな。
動物園で楽しんで、夢花のお弁当を楽しんで、その後は⋯⋯⋯⋯⋯
ふぅ、まだ先なのに緊張するな。
自分から女性に思いを伝えるのなんて何年ぶりだろうか。
40代はずっと独りだ。
35からはもう居なかったな。
10年振りの恋か。
それが18歳の女の子とはな。
はは、やっぱりダメだろ。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯はぁ。
でも無理だ。
もう無理なんだ。
夢花が欲しい。
ちゃんとするって約束したんだ。
俺はもう迷わない。
『夢花のお弁当か。楽しみだな。それじゃあ、朝の10時に夢花の家の前に迎えに行くからよろしくな』
ふふ、デートの約束しちゃった。
大地さんの車はどんな車なんだろう。
大地さんはどんな服で来るんだろう。
どこに連れてってくれるのかなぁ。
お弁当はどんなオカズにしようかなぁ。
考えるだけで嬉しくなってくる。
それにこのタイミングのデートってことは⋯⋯⋯⋯ってことだよね?
どうしよう、もっとドキドキしてきちゃう。
こんなの学生の時になかったからよくわかんないよ。
どうしたらいいの?
あーもう、だめ、嬉しいし緊張するし頭おかしくなっちゃうよ。
お互いにおやすみとメッセージを送り合う。
スマホを閉じ眠ろうとするがなかなか寝付けない。
興奮なのか緊張なのか。
心音がうるさい。
俺の歳だとただの動悸の気がしてしまう。
だが今は夢花のことを考えての早鐘だ。
動悸ではないだろう。
次は心臓で入院とかシャレにならんからな。
行先も決まった。
お弁当も作ってもらえる。
夕飯の場所も決めた。
告白する場所も。
そこで俺の想いを伝えよう。
断られる⋯可能性もあるだろう。
それならそれで仕方ない。
腹を括った俺はそのまま眠りについた。




