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【完結】おじさんガチ恋物語〜私の初恋は会社の上司。この恋、社会的にアウトですか?〜  作者: 音無響一


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第40話 繋いだ手

その日はすぐに寝てしまった。


帰ってきてから何をしたかも覚えていない。


相当疲れてたんだと思う。


夜は大地さんにご飯を作りに行きたかったのに。


起きたら朝だった。


急いで準備をして家を出る。


遅刻するかと思っちゃった。


今日の夜は作ってあげたいのに、なんの準備もできてない。


こんなんじゃ大地さんがまた⋯⋯


そんなの絶対にイヤ。


どうしたら大地さんをもっと誘えるんだろう。


帰ったらお母さんに相談しようかな。







夜にメッセージが来て以降、返信がなかったな。


少し⋯いや、だいぶ寂しいな。


夢花とは一時期連絡を取り合うのを辞めていたが、再開してしまうとダメだ。


俺も随分弱くなったな。


歳を取ったせいなのだろうか。


いや、違うな。


それだけ心が夢花を求めているのだろう。


今すぐ夢花の食事を食べて、一緒に過ごしたい。







今日も頑張らないと。


たくさん寝れたおかげか体も元気。


帰ったら大地さんのご飯の作り置きしないと。


ふふ、大地さんのご飯作るのが趣味みたいになってるな。


なんだか嬉しい。


暇さえあれば大地さんのことを考えて料理してる。


その時間がとっても好き。


寝る前に色んなこと妄想するのも⋯⋯


だめだめ、今からしそうになってる。


今日も頑張ったら、ご褒美にたくさんしよ!








もう夕方か。


今日も何もしないで一日が終わってしまうな。


そろそろ夢花の仕事も終わる頃か。


夢花にメッセージを送り、俺は再度ベッドで横になる。


会いたい。


その気持ちが強くなる。


目を閉じると思い出すのは夢花の事ばかりだ。







大地さんからメッセージ来てる!


帰るの電車でメッセージの確認。



『お仕事お疲れ様。気をつけて帰るんだよ』



はい、気をつけて帰ります。


⋯⋯⋯⋯会いたいよ大地さん。







少しは動かないとだと思い、夕暮れの街を歩いている。


行く宛てもなくフラフラと。


夢花のことを考えて歩く。


夢花とのこれからを考えて歩く。


夢花とこれから付き合う為にどうしたらいいか考えて歩く。


下を向きながらひたすら歩いていた。


夢花のことばかり考えていたからだろう。


「夢花⋯⋯⋯⋯」気が付いたら夢花の名前を声に出して呼んでいた。


「はい?」と返事が聞こえた。


幻聴だろうか。


目の前に女性の足が見える。


視線を上げてその人を見る。







「大地⋯⋯⋯⋯さん?なんで?」



今メッセージを送ろうとしていた。


あと少しで家に着くって。


名前を呼ばれたから反射的に返事をしてしまった。


声の先を確認したら大地さんがいた。


私の頭の中は久しぶりにはてなマークでいっぱいになった。


なんで大地さんがいるの?


たくさん会いたいって思ったから、神様が大地さんの幻影でも見せてくれてるの?


それとも私の幻覚?







なんで夢花が目の前にいるんだ?


考えすぎたからついに幻覚と幻聴か?


精神的に病んでるのか俺は⋯⋯⋯


こんなんじゃ今度は別の病院に入院することになりそうだ。


目を擦れば見えなくなるかと思い、ゴシゴシと袖で目を擦る。







「⋯⋯⋯⋯⋯⋯?本物?」



目の前で大地さんが目を擦って何度も瞬きをしている。


本物って、そのセリフは私のセリフです。



「大地さん、私は本物の夢花ですよ?」


「まさか⋯え?夢花?」


「はい、⋯⋯⋯夢花です」



あなたの夢花ですって言いそうになっちゃった。


でも、なんでこんなとこにいるんだろう。


駅の階段を降りたところなのに。


迎えに来てくれたってわけじゃないよね。







「えっと⋯⋯⋯おかえり?」


「はい、ただいまです」



驚いたな。


驚いたが、夢花と会えた喜びが込み上げてくる。



「迎えに来たって⋯わけじゃないんだが、一緒に帰らないか?」



何を正直に言っているのだろうか。



「はいっ、喜んで!」



いつもの夢花の満面の笑みで返事をしてくれる。


悩んでたことが馬鹿らしくなるくらい最高の笑顔だ。


その顔に相変わらず見惚れてしまう。


そのまま立ち尽くしている夢花が俺の胸に頭をコツンと優しく当ててきた。



「嬉しい⋯会いたかったです⋯⋯⋯」



みんな見て⋯⋯⋯ないな、誰も周りにいない。


そっと肩に手を置く。


抱きしめたい衝動に駆られるが、そこをなんとか堪える。



「俺も会いたかったんだ。夢花のことを考えてたんだ。そうして気がついたら目の前にいて驚いてしまったよ」



何をまた正直に言っているんだ。


だが夢花を正直に思いを伝えてくれているんだ。


俺も本音で話さないとだろう。








嬉しかった。


大地さんの匂いがする。


それを胸いっぱいに吸い込む。


大地さん補給しないと⋯⋯



「えへへ、大地さんも考えててくれたんですか?私もずっと⋯⋯⋯」


「夢花、とりあえずここは人目につくかもしれないから歩こう」



優しく身体を引き剥がされる。


名残惜しそうにしていると手を差し出された。


その手はなんですか?


恋愛経験のない私は、すぐに答えに辿り着けない。






数瞬キョトンとした表情になる夢花。


俺は差し出した手をそのままにしている。



「い、行きましょう!」



しっかりと俺の手を握ってくれた。


夢花の小さい手。


それを優しく握り返す。


ただ握られた手を指を絡めしっかりと。







顔が熱い。


身体も熱い。


握り返されたら、また恋人繋ぎになっている。


大地さんの大きくて長い指で私の手が全て包まれる。


大地さんの温もりで、繋いだ手が更に熱を帯びているように思える。


ゆっくりと歩き出す大地さん。



「行こうか」



優しく微笑んでくれる。


大地さんのその笑顔が、優しさが大好きです。







手を繋いだまま歩き出した。


俺も自分のした事を考えると顔が熱くなる。


夢花は耳まで真っ赤になっている。


それがまた可愛らしい。



「夢花も突然だから驚いたよな」


「はい、本当にびっくりしました」


「今日もお疲れ様。仕事はどうだ?みんな元気にしているか?」



そう聞くと、夢花は営業課のみんなのことを話し始めてくれる。






久しぶりのお散歩だよね。


手を繋ぐのも、ドライブの時以来。


この後はどうするんだろう。


家に送ってくれるだけなのかな。


せっかくだからもっと一緒にいてほしいのに。



「この後は何か予定はあるのか?」


「えっと、特にないです」


「そうか⋯⋯⋯⋯」



予定を聞いてくれたってことは、この後も期待していいんですか?







この後の予定なんて聞いてどうするんだ。


また食事を作ってくれと言うのか?


図々しいだろう。


夢花は仕事帰りで疲れているのに。


するなら俺が作るのが筋じゃないのか?


聞いたはいいものの、次の言葉が出ない。



「えっと⋯⋯⋯もう着きます⋯」


「あ、ああ⋯そう⋯⋯⋯だな」



何してるんだ。


俺は夢花とどうしたいんだ。


会いたかったんだろ、何とか言え。







「夢花、この後は⋯そうだな、疲れてないなら⋯もう少し、散歩しないか?」



嬉しい。


大地さんから誘ってくれた。


返事はもちろん⋯⋯⋯



「はいっ!まだまだ元気です!」



返事をして、握った手に更に力を込める。


大地さんも強く握り返してくれる。


2人の気持ちが強まった気がする。







「ありがとう、嬉しいよ⋯⋯⋯⋯」



小さい夢花を見下ろす。


それに気付いた夢花もこちらを見上げた。


にっこりと微笑んでいる夢花は可愛らしい。


その笑みにつられて、俺も微笑みを浮かべる。


手を繋ぎ並んで歩く。


ゆっくりゆっくりと歩いていく。


どこへ行こうか。


もうどこだっていい。


夢花と一緒に居られるなら。



「あっ⋯⋯⋯⋯⋯⋯」



夢花が急に立ち止まった。


どうしだんだ?






「お母さん⋯⋯⋯」



私のマンションまであと少しだった。


見られてしまった。


仲良く手を繋いでいる所を。


どうしたらいいんだろう。


今更手を話したところで言い訳も無理だよね⋯⋯⋯



「こんばんは課長さん。おかえりなさい夢花。ところで⋯⋯⋯⋯」



お母さんが私達の繋いだ手に視線を合わせる。







「こ、こんばんはお母さん」



俺は我に返り繋いでいた手を離した。


これはまずいどころの話しではない。


バレてしまったと言っても過言では無い。



「仲が良いのは分かりましたし、知っていますよ。そんなに焦らないでください。夢花、帰るわよ」



どういう⋯⋯⋯⋯ことだ?


夢花は俺とお母さんをチラチラと何度も見ている。







「大地さん、また!おやすみなさい!」



どうしよう、どうすればいいかわかんないよ。


お母さんに帰るって言われたから大地さんにお別れを告げた。


お母さんの元に言ってマンションへと向かう。



「それでは失礼します」


「は、はい、おやすみなさい。失礼します」



お母さんと大地さんも別れの挨拶をしている。







行ってしまったな⋯⋯⋯


自分で告げるよりも先に、お母さんに手を繋いでいる所を見られてしまうなんてな。


これはまずいんじゃないだろうか。


俺は立ち去る2人を見送った後もその場に佇んでいた。




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