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【完結】おじさんガチ恋物語〜私の初恋は会社の上司。この恋、社会的にアウトですか?〜  作者: 音無響一


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第37話 聞いてない!

やっと帰ってきた。


退院したんだなぁ。


荷物を部屋に置き、しばらくぶりの自宅の雰囲気を味わう。


⋯⋯⋯まずは掃除か。


1週間も放置してたんだ、埃がなぁ。


窓を開け換気をする。


退院して帰った最初の行動が掃除になるとはな。


それもやむ無しってやつか。


「大地、また遊ぼうね!」

「川崎さん、退院おめでとうございます」

「お大事にお過ごしください」


退院する時に看護師の方々が挨拶をしてくれたのはいいんだが、そこに咲ちゃんも混ざっていたのは驚いたな。


俺の事を呼び捨てで呼んでるのを知った看護師さん達は驚いた顔をしてたがな。


病院では個室だったが、時間になると看護師さんが来てくれる環境だった。


自宅ではそれがない。


退院したことは嬉しいが、少し寂しさを感じてしまう。


決して美人揃いの看護師さん達だったからではない。


咲ちゃんがいたからでもない、断じてない。


出勤は来週の月曜日からだ。


それまでゆっくり過ごさせてもらおう。


夢花が毎日ご飯を作ると言っていたが、あれは本気なんだろうか。


本気⋯⋯⋯⋯なんだろうなぁ。


ダメだダメだ、こんなことでストレスを感じるな。


好きな子が俺の食事の世話をしてくれるんだ。


大歓迎、むしろご褒美なんだ。


ストレスから解放されるためには、俺の心に素直に従うことなんだ。


会社でストレスはあまりないんだ。


全てはプライベートでの心労だ。


病院や会社には過労と思われてるが、そうでは無い。


だがそれを医者や社長には言えなかった。


言ってしまったら、心に抱えてる事も話さなきゃいけないと思ったからだ。


とにかく俺はもう悩むのをやめるんだ。


夢花の家に行くまでにやれることをやっておこう。







今日も私の集中力は絶好調ね。


昨日のうちに大地さんの食事の準備はバッチリにしておいた。


帰ったらあっためて、直前に用意するものだけやれば大丈夫だから、家に帰って急いで用意すれば大丈夫だもん。


お母さんには呆れられてたけど、なんでだろう。


大地さんの為にやってるって言ったら尚更呆れられてた。


私って何か変なことしてる?


でもいいの、私は決めたんだもん。


大地さん喜んでくれるかな。






俺はやることもないのでベットで怠惰に過ごしている。


せっかくの休暇だからだらけないとな。


と言っても、もう病院で1週間もしてたからなぁ。


『大地!聞いて聞いて!私も退院決まるかも!どうせなら大地と一緒に退院したかったよー!』


もう何通目だろうか。


暇さえあれば俺にチャットをしてくる咲ちゃん。


仲良くなりすぎだろうか。


年の離れ過ぎた友達だが、そんなこともあっていいか。


⋯⋯⋯⋯⋯怒られないといいなぁ。


さて、そろそろ時間か。


夢花の家に向かうかな。







「え、お母さん今日いないの?昨日何も言ってなかったじゃん!そんなの聞いてない!」



急いで家に帰ると、テーブルの上にメモ書きがあった。


昨日はそんなこと一言も言ってなかったのに、なんで急に?


家で大地さんと2人きりになるよ?


え、まって、ほんとに?


どうしよう、ほんとにどうしよう。


急に緊張してきてしまう。


帰りは何時になるか分からないって書いてあるし、本当にどうするの?


あーもう、料理したいのに頭が回らないよ!


お母さんのバカ!


どうしてくれるのよ~もー!







「大地さん、おかえりなさい、今開けますね」



部屋番号を押すと夢花がすぐにオートロックを解錠してくれる。


おかえりなさい、か。


病院の時とは逆だな。



「ただいま、ありがとう」



俺も病院の時とは逆の返事だ。


照れくささはないが、不思議な感覚だった。


夢花の元に帰ってきた。


そう思うと自然と顔が緩む。


家には夢花のお母さんもいるだろう。


だがそれがいいんだ。


夢花と2人きりも好きだが、あのお母さんがいると、さらに賑やかになるからな。






来ちゃった、来ちゃったよ大地さん来ちゃった!


わーもう、お母さんのせいで全然進まないじゃん!


ピンポーンと玄関のインターホンが鳴った。


オートロックの時も心臓に悪かったけど、こっちも身体がビクッと反応しちゃう。


とにかく出迎えないと。






「おかえりなさい大地さん!」



エプロン姿の夢花が玄関を開け出迎えてくれる。



「ただいま夢花」



夢花はいつもビジネススーツはスカートだ。


白のシャツに、黒のスカート。


それに白とピンクのチェックのエプロンをつけている。


その姿は少しやばい⋯可愛すぎないか?


ただいまと言えたのは良いが、見惚れてしまっている。



「大地さん?どうぞ」



夢花の声で我に返る。


なんだこれは、新婚さんか?






「あ、ああ、お邪魔します」



どうしたんだろ、やっぱり元気ないのかな?


今日の大地さんは紺のジーパンにポロシャツだ。


シンプルだけど似合ってる。


私はこんな格好だけどいいかな?


でも仕方ないよ、お母さんのせいで何にも出来なかったんだもん。







「大地さんはゆっくりしててくださいね、今用意しますから!」



夢花はキッチンへと向かう。


俺はソファに座りその様子を見ている?


いそいそと準備を進める夢花。


今日はお母さんはいないのか?


夢花1人で料理をしている。


夢花以外に人がいる気配も感じない。


まだお仕事なのだろうか。



「大地さん、胃に優しいお茶です!どんなのが好きか分からないんですけど、ルイボスティーがいいみたいなんでどうぞ!」


「そうなのか、助かるよ。頂くとするな」



こういうお茶は飲んだことないな。


カップを手に取り傾ける。


ほのかに香る甘い匂い。


バニラ⋯のような香りがするな。


優しい匂いが俺の鼻腔を刺激する。


色は紅茶に似てるが、ルイボスティーは紅茶とは違うと聞いたことがある。


確かカフェインレスだったような。


1口啜る。


啜ることで更に香りが鼻腔を吹き抜ける。


ほのかな甘い香りとルイボスティー特有のまろやかで深みのある味が広がっていく。


コーヒーとはまた違う美味しさがあるな。


これは好きになりそうだ。







「今用意しますからお待ちください!」



ルイボスティーは気に入ってくれたかな?


私も飲んでみたけど好きな味だった。


コーヒー好き同士なら味覚も似てたら嬉しいな。


あとはこれとこれを用意して⋯⋯⋯


あっ、これもやらないとね。


こっちをあっためて⋯⋯⋯と。







「大地さん、出来ました、こちらへ来てもらってもいいですか?」


「ああ、今行くな」



しばらくすると夢花に呼ばれた。


ダイニングテーブルに着くと色とりどりの料理が目の前にあった。


待っている間から美味しそうな香りが部屋全体に広がっていた。


料理を目の前にすると更に視覚も刺激される。



「ささ、座ってください!」


「とても美味しそうだな」


「大地さんの為に張り切って作りました!」



本当に美味しそうだ。


昼ごはんを軽めにしていたせいもあるだろう。


俺のお腹が大きな音を立てて鳴る。



「おっと、美味しそうで腹がなったな」


「ふふ、じゃあ早速食べましょ!」


「「いただきます」」



お母さんのことを聞き忘れたが⋯


料理も2人分しかないし、夕飯時には帰ってこないのか?


まぁいい、そのうち帰宅されるだろう。







「ごちそうさま」


「お粗末さまでした」


「ふう、美味しかったよ」


「ふふ、良かったです」



食後のお茶にはほうじ茶が出される。



「ほうじ茶も胃にいい飲み物らしいです!」


「ほう、そうなのか。お茶には詳しくないが、何が違うんだろうな」


「緑茶を焙煎するとほうじ茶になるんですって調べたら分かりました!」



そうなのか?


ってことは、ほうじ茶の元は緑茶ってことになるのか。


なるほど、焙煎するからこんなに香ばしい香りになるんだな。



「ルイボスティーといい、ほうじ茶といい、夢花にはたくさん教えてもらっているな」


「いえいえ、コーヒーは胃に良くないですから。大地さんと一緒に楽しめる飲み物何かなって⋯⋯⋯だから調べたんです!」



そんなことまで⋯⋯


ありがたいな。







「じゃあ私は洗い物しちゃいますね!」


「手伝おうか?」


「いいんです、大地さんのお祝いなんですから、座っててください!」


「そう⋯か?何から何まで済まない」


「気にしないでくださいね!」



本当にお母さん帰ってこないよ。


あーもうどうしよう。


家で二人きりなんてハードル高すぎだよ。


この後どうするか考えながら洗い物をするが、一向に考えがまとまらない。






「あっっっっっ!」



夢花の声とともに食器の割れる音が響いた。



「大丈夫か夢花!」



ソファに居たが、急いでキッチンへと向かった。



「大丈夫⋯です。ごめんなさい、驚かせちゃいましたよね」


「そんなことはいいんだ、怪我はないか?」


「はい、大丈夫です、今片付けますから」


「手伝おう」


「このくらい大丈夫⋯⋯いっつ!」



ああ、指を切ったじゃないか。







「ほら、言ったろう、気をつけないと。傷口を洗い流そうか。片付けは俺がやっておくからな」


「は、はい⋯」


「洗い物は俺も手伝うから、夢花は指に絆創膏を貼ってくるといい」



また私ったらドジなことして⋯


全部私がお世話したかったのに、逆にお世話されちゃってるじゃない。


絆創膏を貼りキッチンへと戻る。



「まだ滲んでるな。洗い物は俺に任せていいからな。どこに置くかとか教えてくれないか?」



優しいんだから大地さんってば。


このくらいどうってことないのに。


でも心配してもらっちゃった⋯


不謹慎かもだけど嬉しい。


駆けつけてくれた大地さん、かっこよかったな。


洗い物をしてくれる大地さんの横に並んで、して欲しいことを教えていく。


キッチンに並んで立つのも嬉しかった。


⋯怪我して良かったかな?


そんなこと思っちゃダメなのに、嬉しくなってしまう。



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