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【完結】おじさんガチ恋物語〜私の初恋は会社の上司。この恋、社会的にアウトですか?〜  作者: 音無響一


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第32話 社長命令

「ははは、何とかなってよかったな川崎くん」



社長、病院なんで静かにしてくれませんかね。



「皆さんにご心配をおかけして申し訳ないです」


「何言ってるんだ。君がそこまでストレスを抱えて疲れていたのを見てなかった私のミスだ」


「自己管理が出来てなかった自分のせいですよ」


「まぁいい、今はゆっくり休むんだ。いいな?これは社長命令だ」


「はい、わかりました」



社長命令なら仕方ないか。


まさか胃潰瘍とはなぁ。


倒れた記憶は曖昧なんだ。


夢花と会議室で話していて、そこで胃が猛烈に痛み出してから⋯⋯⋯


吐血⋯⋯⋯したんだよな。


口を押え咳き込み、手に黒っぽくなった血を吐き出したところは覚えている。


口の中に広がる鉄の味。


うわぁ、思い出したら気持ち悪くなってきたぞ。


なんじゃこりゃぁって言えば面白かったか⋯⋯⋯


いや、面白くしてどうする。


胃潰瘍くらいで死ぬことはないだろうが、一緒に居た夢花はそれどころじゃなかったろう。


社長の話だと俺は次の日まで目を覚まさなかったらしい。


集中治療室にも入ってたとか。


どんだけ俺の胃はやばかったのか。


はぁ、俺の身体はこんなにも弱かったのか。


若い頃は何の心配もしてなかったんだがなぁ。


歳を取るってこういうことなんだろうが、ダメージがえげつないんじゃなかろうか。




一般病棟に移されるタイミングで社長が色々と面倒を見てくれたようだった。


俺に身寄りがないことは社長は知っているしな。


仕事の時間だって言うのに迷惑かけっぱなしだ。


入院は順調だと1週間だって言うし、さっさと治して帰ろうじゃないか。


夢花には心配かけてるだろうしな。







大地さんが救急搬送されてから次の日。


私は泣き疲れた顔でも出社した。


でも気が気じゃない。


目の前で大地さんが血を吐いて倒れたの。


気が動転していた。


もう訳が分からなかった。


今も心配で心配で胸が張り裂けそう。


どうしてこうなったのか考えても分からない。


そんなに大地さんの胃は悪かったの?


4月から胃のことを気にしていたけど、今になってこんな⋯


怖かった。


死ぬんじゃないかと焦ってしまった。


私は何も出来なかった。


ただ怖くて泣き叫ぶことしか出来なかった。


救急車に一緒に乗ることも出来ない。


ICUに入ったって言ってた。


何かわからないけど調べたらもっと怖くなった。


大地さんは今は無事なの?


今すぐ大地さんのそばに行きたい。


一緒に居たいのに⋯⋯⋯


無力な自分に悔しさが込み上げてくる。


こんなことになるなら無理してでも胃に優しい食べ物をたくさん作って渡しておけば良かった。


毎日私がお弁当作っておけばよかった。


毎晩私が夕飯を作ってあげたかった。


なんでしなかったんだろう。


無事でいてください大地さん。


帰ってきたらもう⋯⋯⋯⋯







それにしても入院生活ってのは暇なもんだなぁ。



「川崎さん、こんにちは。担当看護師の吉田と申します」


「どうも、よろしくお願いします」



担当?そういうものがあるのか。


何をされるんだろうか。



「胃の調子はどうですか?それ以外になにか体調で気になるところなどございますか?」


「いやぁ、とりあえず何もないんですが⋯」


「気分が悪くないのなら良かったです」



何やらテキパキとこなしていく看護師の吉田さん。


ナース⋯⋯⋯⋯これは魅力的だな。


白を基調としたナース服。


パンツスタイルだが、とても綺麗だな。


⋯⋯⋯何を見ているんだ俺は。


はぁ、こういう煩悩のせいで胃を悪くしたんじゃないのか。


まだ俺も男⋯何だろうが、少しは自重しないとだろ。


体温やら血圧やらを測られ、看護師の吉田さんは去っていった。


あの後ろ姿がまた⋯


やめろ、見るんじゃない。


はぁ、懲りないなぁ。







社長が帰ってきた。


大地さんのところに言っていたのは聞いている。


容態は?平気なの?どうなってるんですか?


聞きたい、今すぐ社長の所に駆け込みたい。



「夢花、行くわよ」


「え?ど、どこに?」



アリサさんが立ち上がった。



「決まってるでしょ、社長のとこよ。待ってるなんてもどかしい。今すぐ聞きに行くわよ」


「は、はい!」



アリサさんのそういうところ、本当に尊敬します。



「わ、私も行っていいですか!」



玉木さん⋯


そうだよね、心配だもんね。



「みんなで行くわよ」


「「はい!」」



3人で社長室へと向かった。


早く知りたい。


無事でいて大地さん。




「なんだなんだ、どうした3人で」


「社長、川崎課長はどうなんでしょうか無事なんですか?早く教えてください!」

「社長、早く、早く教えてください!」

「社長お願いします!」



社長が歩いているのを見かけた。


こちらに向かって歩いてきていた。


好都合とばかりに3人で社長に勢いよく詰め寄る。



「わかったわかった、大丈夫だ、大丈夫だから!」


「何が大丈夫なんですか!」

「今もまだ集中治療室なんですか!」

「面会はできるんですか!」



3人で一斉に喋る。


何を言ってるのか自分でも分からない。



「あああ、もう!1人ずつ喋りなさい!川崎君は無事だから安心しなさい!ただの胃潰瘍だから!」



無事というセリフに3人がピタリと止まる。



「ただのってなんですか!」

「血を吐いて意識不明だったんですよ!」

「面会したいんです!」



そして一斉に喋りだした。



「わかった!君たちが川崎くんを心配してるのはよーくわかった!無事だから、面会もできるから落ち着きなさい!」



二度に渡る無事という言葉。


その言葉でようやく安堵する。


3人とも大きくため息を吐いた。


私は床にへたり込んでしまう。



「ほら、夢花、しっかりしなさい。仕事が終わったらみんなで面会に行くわよ」



そうだ、面会できるんだもんね。


1人で行きたかったけど、アリサさんも玉木さんも同じだもん。


みんなで行く方が大地さんの負担にもならないよね。







「川崎さん、まだICUから出て初日なので、点滴だけになります」



胃がやられてるんだ。


そうなるよなぁ。


はぁ、何とかならないもんか。


だがここはグッと我慢するしかあるまい。


ああ、暇だ⋯⋯⋯⋯








「お疲れ様でした!」



今日はバッチリだったはず。


午後の集中力は3人ともとんでもなかったと思う。


就業時間ピッタリで帰る準備もバッチリだ。



「行くわよ!」



駆け出すように会社を出る3人。


目指すは大地さんのいる病院ね。


待ってて大地さん。






夜ご飯もないんだもんなぁ。


飲み物も飲めないし、本当に辛い。


暇で暇で⋯



「失礼します。夜勤の担当の相川と言います。今日の夜はよろしくお願いしますね」



今度はもっと若そうな看護師さんじゃないか。


20代前半か?


それにしても⋯⋯ここの看護師さんはビジュアル重視で採用してるのか?


検温に血圧測定と。


もう何回かしたから慣れたもんだな。


事務的な会話のみで帰っちゃうのか。


おじさんの相手をもう少ししてくれてもいいんだぞ?


はぁ、だからやめようか。


それにしても後ろ姿が⋯


いい加減にしておこうか。


はぁ、暇だ。







「愛聖病院⋯ここね」



大地さんの入院している病院に着いた。


受付で面会の許可をもらい、大地さんの病室へと向かう。


6階の609ね。


エレベーター、早く来て!







「川崎さん、少しいいですか?」



なんだろうか、さっきの相川さんという看護師さんがやってきた。


色んなものを取り替える時間だそうだ。



「すぐ終わりますからお待ちくださいね」



話すことも思い浮かばないので、相川さんが作業しているのを見ている。


昼の看護師の吉田さんの方が手馴れている感じがするな。


少したどたどしさが見える。


途中で考えたり、「あっっ」と声を出したりしている。


考えるのはいいんだが、声を出すのは少し怖いな⋯


でも可愛い子だなぁ。


なんなんだろうか看護師さんって言うのは。


ぼーっとその姿を眺めている。


向こうの方から足音が近づいてくるのが分かる。


しかも複数人だ。


ヒールの音がするから女性だろう。



「心配して損した気分だわ」

「何してるんですか⋯⋯⋯」

「元気なら良かったです」



足音が止まったと思ったら声が聞こえた。


空きっぱなしのドアの向こうに夢花とアリサ、それに玉木さんがいるじゃないか。






「ど、どうしてここに?」



どうしてって、大地さんが心配だからに決まってるじゃないですか。


なのに看護師の女の人に鼻の下伸ばしてるなんて⋯⋯⋯



「入院生活は楽しそうですね」



アリサさんが怒っている。


そりゃそうだよ、みんな心配してたのに、看護師さんにデレデレして。



「川崎さん、これで大丈夫ですので、何かありましたナースコールでいつでも呼んでくださいね」



私達が来たからなのか、引きつった笑顔を見せてそそくさと部屋を後にする看護師さん。


大地さん、なんでそんなに名残惜しそうにしているんですか?








今から何を言われるのか怯えてしまう。


これは絶対胃によくないだろ⋯



「よく来てくれましたね、ありがとうございます」


「大地さん!」



夢花がベッドサイドに駆け寄ってきた。



「無事で⋯良かった⋯⋯⋯」



そうだよな、心配してくれたんだもんな。



「心配かけて済まなかったな。ただの胃潰瘍だから、すぐに良くなるさ」


「⋯⋯本当に無事で良かったです」



泣くほど⋯ことなんだろうな。


本当にごめんな。


俺は3人にこれまでの経緯を説明していく。



「命に別状がないなら良かったです。ゆっくり休んでください」


「社長命令もありますから、本当に休んでくださいね」


「また面会に来ます」



お礼を言い、ベッドの上から3人を見送った。


一気に寂しくなったな。


さて、また暇な時間の始まりだ。






「大事なさそうで安心したわね」


「はい、そうですね」


「入院生活って暇そうですよね」



そうか、暇なのね。


これはチャンスじゃないの?


たくさんメッセージしても大丈夫かも⋯


明日も絶対面会に行こう、大地さんのお世話したい。


もう後悔したくない。


決めた。


迷惑かもだけど⋯もうあんな思いしたくない。


待っててください大地さん。


迷惑でも押しかけちゃうんだから!


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