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【完結】おじさんガチ恋物語〜私の初恋は会社の上司。この恋、社会的にアウトですか?〜  作者: 音無響一


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第25話 ズキュン

今日は金曜日の夜だ。


俺は夢花と連絡先の交換をした。


夢花とお母さんとの外食の後の帰りの車内で、夢花の運転練習をどうするか話し合っていたんだが、お母さんに連絡先交換したらどうかと提案されたからだ。


俺の社用携帯の番号は教ええあったが、私用で使わないと厳命されているので守っている。


何かあればそちらを使えば、なんて思っていたが、直接連絡先の交換をする方が効率がいいからな。


そうだ、効率がいいから、だから連絡先を交換したんだ。


夢花と個人的に繋がりたいからじゃない。


そう思わないと苦しくなる。


もうダメなんだ。


旅館で腕を組んでから、俺の気持ちに歯止めが効かなくなってきている。


まだその気持ちに抗おうとする自分もいる。


そのせいで苦しい。


苦しいのに夢花を求めてしまう。


スマホを開く。


夢花とのチャット画面を見つめる。


返事が可愛らしく見えてしまう。


ただの文章なのに、その一つ一つに夢花らしさが感じられる。


嬉しそうに飛び跳ねているのが文字の向こうに見えるようだった。


日を重ねる毎に夢花からのメッセージが増えている。


それが嬉しかった。



『夢花です!よろしくお願いします!』

『おはようございます!大地さんの連絡先聞けて嬉しくて朝からメッセージしちゃいました!』

『今日は取引先の方に優しくしてもらえて嬉しかったんです!』

『今日はアリサさんが元気なかったんですけど、午後はバリバリ働いてました!やっぱりアリサさんはかっこいいんですよね~』

『大地さん、おやすみなさい!』



他愛のない会話が俺を癒してくれる。


おはようからおやすみまで来るメッセージに安心感すら覚えていた。



『明日の10時に夢花の家に行くからよろしくな』



明日の予定を再確認の為に送っておく。


夢花も家だったのか、直ぐに返事が返ってくる。


スマホから鳴るチャットの通知音。


普段なら全く気にならない通知音だ。


むしろ自分のスマホは通知音すらならないようになっている。


今は鳴るのが待ち遠しい。


5分としないで俺のスマホが鳴動する。



『分かりました!わざわざありがとうございます!楽しみに待ってますね!』



ふふ、元気で可愛いな。


思わず笑みが零れてしまう。








『事故しない事が大切だから、しっかり寝ておくんだぞ?』



大地さんからのメッセージ。


何度来ても嬉しい。


メッセージの一つ一つから大地さんの優しさが伝わってくる。


私の送るメッセージの一つ一つに、優しく丁寧に返信をしてくれる。


最初はすごくドキドキしてた。


メッセージを送る指先が震えてた。


送っていいのかな、迷惑かな、返事こなかったらどうしよう、既読つかなかったらどうしよう、何話せばいいんだろ、何時から送っていいんだろう、夜は何時までなんだろう。


色んな疑問で目が回ってしまう。


最初に『よろしくお願いします』と送ってから、次のメッセージが送れない。


その日はほとんど寝れなかった。


ずっとスマホにメッセージを書いては消し、書いては消し、ため息してスマホを放り投げて枕に顔を埋め、しばらくしてまたメッセージを書いて、また消して。


朝までずっとそうしてた。


5時になり6時になり、もうそろそろ起きないといけない。


朦朧としかけてた私はメッセージを送信してしまった。


『おはようございます!大地さんの連絡先聞けて嬉しくて朝からメッセージしちゃいました!』


目が覚めた。


なんてメッセージを送っているの!


こんなの恥ずかしすぎる⋯


もっとこう自然に、なんていうのかな、違うの、こんなのじゃないの!


ああ、もう何やってるのよ私ったら!


でも直ぐだった。


『おはよう夢花。早起きだね。俺も嬉しいよ。朝からありがとう』


大地さんも起きてた、返事もすぐだし、優しかった。


いつも優しい大地なんだけど、ずっとずっと、どんな時でも優しい。


メッセージを見る度に大地さんの優しさで、その温もりに触れている気持ちになる。



『分かりました!今日はすぐ寝ます!おやすみなさい大地さん!』



でもやっぱり本物のあなたの温もりに包まれたいです。


私はチャットのメッセージにそう打ち込んで、送信しないようにそのまま消した。


明日が楽しみで寝れそうにないな。







『おやすみ』と送信し、今日のメッセージのやり取りの終わった。


俺は名残惜しそうにスマホの我慢を見続けている。


何度も何度もスマホの画面をスクロールし、夢花のこれまでのメッセージを見ている。


加速する夢花への想い。


堰き止めることが出来なくなった理性。


完全に俺は恋してしまっている。


以前のように葛藤することが少なくなっている。


だがふと現実的なことを考えてしまう。


それでも今は夢花のことを好きだという気持ちが勝っている。


ダメなのに気分は晴れやかだ。


明日は夢花とドライブだ。


デート⋯⋯⋯になるのか?


何度が2人で散歩したりしたが、これが初めての本格的なお出かけではないか。


年甲斐にもなく気分が高揚している。


寝れるか心配になるな。


スマホを閉じ、目を瞑る。


とにかく寝よう。








⋯⋯⋯⋯今何時?


もう8時!起きて準備しないと⋯


あんまり寝れなかったけど、寝覚めはスッキリしてる。


『おはようございます!大地さんが来てくれるの待ってますね!』寝起きで直ぐにメッセージを送った。


今は私の朝の日課だ。


大地さんからの返信待ってたいけど、準備準備っと。


お風呂に入って綺麗にして、それから用意しないと。


リビングへ行くと、お母さんが仕事へ行こうとしていた。



「行ってらっしゃい」


「今日は遅くなるから夕飯1人でよろしくね、いってきます!」



そうなんだ。


じゃあ夕飯まで大地さんと一緒に過ごせる⋯かな?






ソファに座りのんびりしているとスマホが鳴った。


こんな時間に通知音が鳴るのは夢花からだろう。


スマホを見るのがこんなに楽しみになるなんてな。


ガラケ時代を思い出す。


好きな子や恋人からの着信音を好きな音楽に変えたりしていたな。


スマホはガラケより無機質な感じがしていたが、恐らくこういうワクワクやドキドキする感情を感じなかったからかもしれない。


今はスマホへの無機質感が薄れている。


それだけ夢花からのメッセージに温かさを感じているのだろう。


さて、そろそろ俺も準備するか。







『おはよう。時間通りに行って大丈夫か?』



初めてのデートに遅刻するわけない。


もちろん直ぐに『大丈夫です!』と返信し私は朝からお風呂へ向かった。


今日着ていく服もバッチリ決まってる。


メイクも勉強した。


下着は⋯⋯本当に勝負下着って必要なの?


ちょっと分からないんだけど、普段の味気ない下着じゃなくて、今日の為に大人っぽい下着も買っておいた。


お風呂から上がりその勝負下着を身につける。


いつもの下着とフィット感が違う。


着け心地もいい。


普段のより値段の高いものだからなのかな。


なんだか自然と気持ちが引き締まり、高揚していく。


これが勝負下着の効果なの?


すごい、大人ってこんな感じなんだ⋯


大人の男性が喜ぶ服装なんて分からないけど、スカートなんて運転に合わないと思う。


白のブラウスにベージュのハーフパンツ。


シンプルだけど、頑張りすぎてないドライブにはピッタリなコーデ、だと思う。


でも本当にこれでいいのかな⋯


変な私服って思われないかな。


でも今は違う。


勝負下着のおかげなのかな、このコーデで大丈夫って気持ちになっている。


本当に勝負下着ってすごい。






5分前には着きそうだな。


少し早いくらいなら大丈夫だろ。


夢花の住んでるマンションの入口が見えてきた。


遠目からでも分かった。


夢花がそこに立っていることに。


向こうも気がついたんだろう。


嬉しそうに手を振っているのがわかる。


俺も手を振り返す。


近づくほどにハッキリと見えてくる。


いつもと違う雰囲気だった。


髪型のせいか?


ハーフアップというやつだろうか。


それとも服装のせいなのだろうか。


⋯⋯⋯⋯可愛い。


向こうから走り寄ってくる。


その仕草がさらに可愛さを加速させる。


そのまま抱きしてそうになる感情を振り払う。



「おはようございます大地さん!今日はよろしくお願いします!」



俺の前で止まり、手を前で揃え、軽くお時期をする。


そんな仕草も可愛いらしい。


もうダメだ、完全に俺は夢花に恋している。


夢花の可愛らしさにクラクラしてしまう。


いつもと違う雰囲気の夢花に見惚れ、おはようと返事をすることもできない。


「大丈夫ですか?」と聞きながら小首を傾げる仕草も俺の心をぶち抜いてくる。


これがキュンキュンするって感覚か。


たまにネットやテレビで目にしたが、なんて的確な表現なんだろうか。



「大地⋯⋯さん?」



名前を呼ばれたことで、ようやく俺は現実に引き戻される。


キュンなんて生易しくなった。


ズギュンと撃ち抜かれて時が止まっていた。






「おはよう夢花、待っててくれたんだな」



待ちきれませんでしたから。


言葉が口から出てきそうだったのをグッと堪える。


どうですか大地さん、頑張ったんですよ?


頑張ったって、気付いてくれるのかな。



「今日はお願いします!」


「ああ、無理せず事故なく頑張ろうな」



やっぱり気付いてくれないか。


少し悲しくなりそうだった。






「じゃあ駐車場に行きましょ!」



夢花の案内で車へと向かった。


ボケっとし過ぎると事故ってしまうからな。


俺も気を引き締めよう。





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