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【完結】おじさんガチ恋物語〜私の初恋は会社の上司。この恋、社会的にアウトですか?〜  作者: 音無響一


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第24話 もっと押して!

「なんで⋯ですか?」



私は泣きそうだった。


真実なんて聞きたくないけど、アリサさんの為にも聞かなきゃなのかな⋯


やだ本当に聞きたくない。


私のお母さんと付き合ってますなんて報告したくないよ。



「なんでって、この前ご馳走様になったろ?そのお礼だよ」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「夢花にはお土産をあそこで買わなくても、ここで渡す予定だったんだからな?」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「ほら、これがお母さんので、こっちが夢花のだ。夢花だけ多めにもらってるんだからみんなには内緒だぞ?」



よかったああああああああああ!


叫び出しそうだった。


心臓が飛び出るかと思った。


私にお土産があることも嬉しい。


でも今はそっちじゃない。


本当に本当に本当に良かった。


こんなに安心するなんて、私はやっぱり大地さんのこと⋯⋯⋯


男の人に恋するなんて初めてで分からなかったけど、こんな感じなんだ。


友達が一喜一憂してたのをよく見てたけど、今まさに私がそうだよね。


はぁ、でも本当に良かった。







「どうした?」



テーブルに突っ伏してしまったじゃないか。


具合でも悪いのか?



「なんでもないですぅぅ」



よく分からんがなんでもないならいいんだ。



「何してんの夢花、シャンとしなさい。みっともないでしょう」


「わわ、そうだよね、ごめんなさい大地さん」


「大地さん?」


「違う違う、なんでもないよ!」


「変な子ねぇ。さぁ、どうぞ課長さん」



知られてもいいんだが、変な誤解を産むから気をつけてくれよ。


俺も気をつけないとな。


俺はお茶に口をつけ、一口頂く。






「これがお土産になります。この前の食事のお礼をと思いまして」



大地さんがお母さんにお土産を渡している。


お土産を選んでいる時にお母さんの好きなものを聞いてたのはこういうことだったんだ。


心臓に悪すぎるよ。



「私が頂いちゃってもよろしいんですか?」


「はい、お母さんの為に選びましたのでぜひどうぞ」



お母さんの為って言い方⋯なんか引っかかるよね。



「あら、とっても美味しそう、こういうの好きなんです。ありがとうございます」



そうだよね、だって私が教えたんだもん。


お母さんへの好感度上げる作戦なの?


本当にお母さんとはなんにもないの?


女将さんといいお母さんといい、やっぱり大地さんは大人の女性が好きなの?


だったら私に勝ち目なんてないよ⋯


ううん、諦めないんだもん。


お母さんにだって女将さんにだってアリサさんにだって負けない!







「課長さん、せっかくですから夕飯もご一緒にしませんか?」



魅力的な提案をしてくるんだよなぁ。


ぜひご相伴に預かりたい。



「いやいや、またご馳走になる訳にはいきませんよ。家族水入らずの邪魔をするのも悪いですから」



そうしたいのは山々だが、そんなに図々しく居座ることは出来ないからなぁ。







「あら、お気になさらないでください。ね?私達も嬉しいですし」



お母さんはグイグイ押すなぁ。


なんでこんなに大地さんを引き止めるんだろ。


私は嬉しいけど⋯⋯⋯


え?まさかお母さんも大地さんに気があるって言うの?


どんだけモテるの大地さんって。



「待ってお母さん!家に食べるものなんにもないよ!」


「あら、そう言えばそうだったわ」


「今から買ってきて用意じゃ遅いもんね⋯」


「じゃ食べに行きましょ」


「「ええ?」」



大地さんと一緒に驚いてしまった。


なんだか恥ずかしいけど嬉しい。



「2人で外食は寂しいでしょ。それに母娘で外食してもねぇ。だから課長さんに来てもらえたら私も夢花も大喜びですよ!」



お母さんったら⋯


確かに大喜びなんだけど、なんだけど、お母さんもなんだね。


はぁ、嬉しいけど複雑だよ。







「そ、それじゃあご一緒させてもらってよろしいでしょうか」



こんなに誘われてるのに断ったら野暮というものだろう。



「久しぶりにあそこに行きましょうか」


「あ、あそこだね!いいねいいね!」


「よく行く場所でもあるんですか?」


「どんなお店かは着いてからのお楽しみにしといてくださいね」


「分かりました」


「絶対美味しいから期待してて大丈夫ですよ!」



そんなに美味しい行き付けのお店があるんだな。


徒歩では遠いらしく、車での移動になった。


夢花のお母さんの運転で向かうのことに。







「そろそろ夢花も運転の練習したらどうなの?」



車に乗り込む前にお母さんに指摘される。


春休みの間に免許は取ったけど⋯⋯



「えー、免許は取れたけどまだ怖いんだもん」


「もう夢花は免許を取ってるんだな」


「はい!でも取ってから運転してないからもう怖くて⋯⋯⋯」



さすがにまだ1人で運転するのは怖い。


お母さんが運転席へと乗り込んだ。


私は運転席側の後部座席の扉を開け、大地さんに入ることを促した。



「どうぞ!」


「すまないな、助かるよ」



そのまま後部座席に座る大地さん。


えっと⋯⋯⋯⋯こういう時って、私はどこに座ればいいの?


お客さんの大地さんを1人にするのは失礼だよ⋯ね?


それに私も大地さんの隣に座りたい。


助手席側の後部座席から私も乗り込んだ。



「失礼します!」


「どうぞ、って俺が言うのもおかしいな」


「何よ夢花、そんなに課長さんの隣がいいの?お母さんが寂しいじゃない」


「何言ってるのお母さん!」


「すご怒るのねぇ。冗談じゃない」


「いいから早く車出して!」


「はいはい、行きましょうか」



もうやんなっちゃう。


恥ずかしくてどうにかなりそうだよ。







「夢花は運転の練習はしないのか?」



俺が免許取った時はその日から運転したくてしたくてたくさん乗り回したんだがなぁ。


女の子だとその辺の感覚が違うのかもな。



「休みの日にしたい気持ちはあるんですけど、いきなり1人で運転するってなかなかハードルが高くて⋯」


「確かに一人だと不安なことも多いからな」


「お母さんがいる時にやりたいんですけど、なかなか一緒にできる機会がなくて」


「それなら⋯⋯⋯」



それなら俺が教えようか?


そう言いそうだった。


何を考えているのか。


深く関わることをやめようとしているのに、俺の考えとは裏腹に、俺の気持ちは夢花を求めてしまう。


今日の今のこの状況もそうだ。


強く断ればこんな状況にもなっていない。


俺の気持ちが理性に勝てなくなっている。



「それなら?」



言葉を強制的に止めたことで夢花が続きを促している。


なんて答えればいいのだろうか。


いっそこのまま誘ってしまうか。


いや⋯⋯⋯⋯



「それなら、なかなか上手くなれないかもな」



何を言っているのか。


夢花のことを求めたいのに⋯すんでのところで理性が勝ってしまう。







「誰か一緒に練習してくれる、運転の上手い優しい人は居ないかなぁ」



大地さんに教えてもらいたい。


横に座る大地さんを見る。


どうやって言ったら大地さんとドライブできるかな。



「大地さんは運転は得意なんですか?」


「得意⋯かどうかは分からないが、運転は好きなんだ。今も車は持っているしな」


「そうなんですね!いいなぁ、私も早く運転できるようになりたいなぁ」



言いながらチラチラと大地さんを見る。


気付いてくれたのか目が合った。








「駐車が難しかったりするんだが、やらないと上手くならないもんな、夢花の家の駐車場は狭くないし、練習にはちょうど良さそうだけだな」



チラチラ見てくる夢花を見て答える。


ずるい男だ俺は。


確実に夢花は俺を誘っているんだろう。


自分から誘うとしない。


旅館の時もそうだ。


年下の、しかも親子ほどの女の子に対して誘ってもらおうとしている。


自分だって夢花に運転を教えたいと思っているのはわかっているのに。


分かっているのに踏み出せない。


自分から行こうとしないのに誘われたらNOと言わないんだ。


何がしたいんだ俺は⋯⋯⋯⋯



「課長さんは運転がお得意なんですか?それならうちの子にお時間ある時でいいんで教えてあげて頂けたら嬉しいですね」



まさかのお母さんからのお誘いだ。







「ちょっと、お母さん何言ってるの!そんなの大地さんに迷惑じゃん!」



お母さんナイスすぎるよ!


もっと、もっと言って!


グイグイ押してお母さん!



「あはは、俺でよければ教えましょうか。同じ会社だから休みも同じでしょうし」


「それもそうね、良かったじゃない。課長さんが教えてくれるって」


「もう!お母さん図々しすぎるでしょ!」



いいよ、お母さん、もっと図々しくなって!


誰にも負けたくないから。


私の初めての恋だから。


アリサさんとはライバルなんだもん。


ううん、アリサさんだけじゃない、私は誰にも負けたくない。


それほど大地さんのこと⋯⋯⋯








「それじゃあ来週にでも予定合えばやってみるか?」



夢花じゃなくてお母さんからの援護射撃か。


俺と夢花は高校生カップルと思われてそうだな⋯⋯⋯



「ほ、本当にいいんですか?」


「ああ、俺でよければ全然構わないぞ」


「迷惑書けない程度にするのよ」


「もぉ、わかってるよ!」



夢花が嬉しそうにしてるし、これでいいのかもしれないが⋯⋯⋯


やっぱり良くないんだよなぁ。


はぁ、なんなんだろうな。


夢花のお母さんはどう思っているのだろうか。






「大地さんはどんな車に乗ってるんですか?」



私は大地さんに質問しながらジリジリと座席の距離感を詰めていく。


あの旅館の夜の時のように。


あの時のようにくっつきたい。


もう大地さんの温もりが忘れられない。


大地さんの匂いに温かさに包まれたい。


触れても⋯⋯いいですか?






カーブを差し掛かったのだろう。


遠心力で夢花がこちらに倒れ込む。


踏ん張るために手を付いた。


付いたそこは俺の手の上だった。



「あ⋯⋯ごめんなさい」


「大丈夫?」


「はい⋯⋯⋯」



夢花は俺の手から自分の手を話そうとしなかった。


俺もそれに何も言わず黙って座っている。


ただ重なる手。


夢花の体温が伝わってくる。


心地よかった。


旅館のあの夜を思い出していた。


このまま離れたくない、そう思ってしまう自分がいる。


こんなことしてはいけないという気持ちが薄れていく。






もう⋯⋯⋯⋯


俺はもう⋯⋯⋯⋯ダメかもしれない。




面白いと一欠片でも思って頂けたなら、お手数ですがブクマと星評価をよろしくお願いいたします。


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