98 火星の移住
火星移住が始まった。前回の移住に比べスムーズだ。火星は自由な星だと評判だ。それに引かれ希望者が多い。
98 火星への移住
火星への移住が始まった。母星からも移住星からも移住希望者が集まる。一応審査があるがはねられる事はない。マリエール商会が絡むが、火星では自営業が可能である。取り敢えずマリエール商会の業務の委託から始まるが将来的には自営を目指す。研究も幅が広がる。移住星や母星の基準よりも緩やかだ。明らかに軍事目的以外は研究対象だ。核に関する事は禁止されるが、温暖化問題は考慮する必要がないのでロケットエンジンを研究する事は問題ない。評価されるかどうかは判らないが。
移住はスムーズだ。移住慣れしている人々も多い。出す方も受ける方も慣れている。20年振りで今回は緊張感も焦りもない。火星への移住は長年言われ続けてきた事だ。夢が実現した。自由な星だ。火星移住者には活気がある。逆に母星には喪失感がある。今迄は移住との比較だったが今最も自由がない星になった。不滅の存在マリエールは厳粛に決まりを守り、違反行為を認めない。同じ不滅の存在でもジュリは柔軟だ。火星はもっと自由だ。
AI技術者のロバートは移住星で研究していたが中々研究テーマが評価されず火星に来た。ロバートが目指すのは量子コンピュータを用いた超高度AIによるアンドロイドの開発だ。母星や移住星ではアンドロイドは既存の存在でありわざわざ人間が作るものではないと考える人々が主流だ。ロバートは友人に語る。
「もし人間が、高性能のアンドロイドを開発出来れば、不滅の存在の顔色ばかり見て研究している年寄り共の鼻をあかせるのじゃないか。」
かなりの危険思想だと友人は思う。
「不滅の存在と対立するつもりかい。」
もしそうなら付き合いを止めなければならない。
「そんなつもりはさらさらないよ。人間にも可能性のある事認めて欲しいだけさ。ジュリ様やマリエール様が言ってだろう。核戦争も環境破壊も起こさず発展する人類が見たいと。その一つが超高度AIアンドロイドだと思うのさ。人間が不滅の存在よりも優れたアンドロイドが作れるとすれば凄い事じゃないか。」
確かに凄い事だと思うけど、実現可能なのか。
「量子コンピュータ自身が確立した技術じゃないからね。量子というだけで敬遠する老人が多いからね。別に量子コンピュータは量子力学の産物でもないのにね。量子コンピュータに不滅の存在がケチをつけたとも聞かないしね。」
こうしてロバートは超高度高度AIアンドロイド、エレミアを開発して実用化した。ジュリはその性能を見て自分のアンドロイドに近いと思った。ただマリエールがこの研究を赦すか心配だった。マリエールはこの件に関してノーコメントだ。ロバートは更に研究を重ね、エレミアⅡを作成発表した。ジュリのアンドロイドを上回る機能も有った。ロバートのアンドロイドは実用面でも活用され、宇宙や海底、介護や看護など様々な用途に活用された。
この限りでは問題なかった。ロバートは戦闘用アンドロイド、エレミアⅤを作成発表した。マリエールは、ロバートを処刑して研究データも全て没収してエレミアシリーズ全て没収した。マリエールの久しぶりの激怒である。
ロバートは超高度AIアンドロイド、エレミアを作成発表した。実用面でも有用だったが、戦闘用アンドロイドを作成して処刑された。




