96 電力供給
送電開始か始まった。工事は着々と進む。ジュリは環境破壊の心配が無くなる新たな時代の幕開けを感じる。
96 電力供給
百ヶ所の発電所作り、送電設備作りが始まった。着々と進む。ジュリはもう一つの月100ヶ所の空洞作りを始めた。移住星では宇宙船と発電、送電の装置作成に忙しい。
ほど無く、送電開始が始まる。会場にはマリエールの姿もある。マリエールは、
「先を越されたわね。母星もまもなく完成するけれどね。」
同じように進めてきたけど僅かに我々の方が早かった。
「こちらが先を越すのを待ってみえたのでしょう。」
それには何も答えない。それが答えだ。待っていた。不滅の存在としてもアンドロイドの出来もまるで違う。しかしマリエールはジュリと共に歩むと決めた。まだ人間である事に拘るジュリと、
「明後日にはこちらも送電始めるわ。連絡するから来れたら来て。」
はい、伺いますと答える。アンドロイドの合図があったジュリは一歩前に出て、
「送電開始」
スイッチが次々と赤に変わり、送電が開始された。ジュリが感じるのは時代が変わる予感だ。人類が環境破壊から解放される。
2日後、ジュリは母星の月にいた。マリエールはジュリと並んでスイッチの前にいた。移住の月と同じように送電が開始された。 マリエールはジュリに、
「母星は移住星の人口の半分しかいないの。制約が多いと感じるもの多いわ。これで火星出来るともっと減るかも知れないわね。」
自分で作った移住星、自分で居住可能する火星に人が流れるのが寂しいのか。この人作る未来がこんなに輝かしいのに寂しさあるのだ。不滅の存在の孤高さか。
暫く母星の街並み歩いた。20数年前に生活していたはずなのに覚えがない。離れ難くて母星に残った友達の顔もはっきりは覚えていない。母星いた頃の記憶があやふやだ。移住星でペルセウス流星群を見た以降の記憶はしっかりあるのに、マリエールはテレパスして答えてくれる。
「人にとって意味ない記憶や忘れたい記憶は消えさるものなのだ。きっときみのように移住星の人々は母星にいた時の記憶が消えていくものが多いだろう。仕方ない事だ。」
マリエール少し寂しそうだ。母星の人口が少ないのも、移住星の人々に母星にいた頃の記憶が忘れ去られるのも自分のせいだというように。
「私が忘れたい記憶は私個人の物であってマリエール様のせいではありません。マリエール様には全て責任を一人で背負い込もうとしているところがあります。責任を感じる必要がない事まで責任を感じる必要はありません。」
マリエールは少し驚いたようだ。
「きみに教えられる事があるんだと知って驚いたよ。確か私は背負い込み過ぎるところがある。万能でもないのに全て責任は自分にあると思う時がある。あの時違ったやり方をすれば良かった。と思う事はしょっちゅうさ。」
何か失礼な事言われているように思うが気にしない事だ。兎に角気付いて貰えばそれでいい。マリエールに元気にしていて貰わないとこちらが困るのだ。
二つ目の月の空洞が出来て宇宙船が月にやって来た。ジュリは作業開始の合図をした。
20数年振りの母星だ。友人の顔もはっきり思い出せない。僅かに違う移住星に来てからの記憶ははっきりしているのに、マリエールは記憶する価値のない物忘れたい記憶は消えるという。




