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       82  第3の不滅の存在

 第3の星は芸術の星だ。不滅の存在がチャイナドレスを着てアピールする。星全体で芸術を推奨しているのだ。

          82  第3の不滅の存在


 ジュリの今回のマリエールと行くのは第3の不滅の存在だ。星の人々には会いにいかないので説明を受ける。ある程度文明が進んだ星で中世ヨーロッパ風だ。6万年前歴史が始まった事を思えば発展は緩やかだが厳しい統制をしているわけではない。この星の不滅の存在は不老不死者として為政者に意見を述べ間接的に国政に関わっている。また宗教団体の教祖のような立場で、欲せず、争わず、探究せずという教えは広く深く星の人々の心を捉えている。不老不死者の年格好はジュリくらいだそうだ。

 宇宙船の着地したのは館の外だ。マリエールは宇宙船を収納して館に向かった。門番は2人を迎え入れた。現れた不老不死者は落ち着いたチャイナドレスのような服装しており少し妖艶だ。彼女は2人を招き入れた。

 ややチャイナ風な部屋は、マリエールの話しと違うような気がした。テレパスされたのだろう。不老不死者は、

「この衣装やドレスはマリエール様の奥底の記憶から作りましたのチャイナドレスといいますのね。最近のお気入りですの。」

少し軽薄な気がした。

「人間、芸術的な文化は大事でしょ。装飾、衣装、建築、彫刻、美術、音楽、陶芸、文学-------------。そういった方面に人々の英知を誘導して評価して賞賛して経済的にも優遇していけば軍事や工業や科学に目を向ける事なく人間の知的好奇心を満喫させ、人間の生きる意義を感じることか出来るのではないかと思うわ。能力のある人々も能力を発揮して満足出来るのではなくて。私もこんな男心を煽るような衣装、不滅の存在として正直不本意だわ。でも私が率先して文化を誘導して行く事こそ、大切だと信じているからやっているのよ。」

ジュリはまたその人の真実を軽蔑してしまった。なんて情けない事だろう。マリエールは、

「彼女は最も良く人間の知的欲求をコンロールしていると思うよ。人々が何に知的好奇心を向けるかは、その置かれた環境によるからね。芸術を推奨する環境では芸術が育つ。彼女は人々の心理が良く判っている。」

芸術の星、不老不死者は芸術を推奨する。複製の魔法のあるこの宇宙には、同じものを大量に作り出す工業なんてナンセンスだ。農業もほどほどでいい。オリジナリティこそ大切だ。芸術はその最たるものだろう。不老不死者は、

「ある意味私は成功した。しかし、芸術至上主義が徹底してしまって人間が芸術以外に興味を失ってしまったのは私の失敗だったのよ。芸術しか興味のない人間というのも厄介なものよ。」

マリエールは説明する。この星の人々は生産活動に一切興味を示さなくなった。全ての物は他の星の物だ。この星の作品は他星でそれなりに評価を受けているが。それだけで星としてどうかと不老不死は思っているそうだ。ジュリは、

「それも一つのあり様ですよね。誰も自分が不労者だと思っているわけではないですよね。」

不老不死者は、

「それはそうだが、歪んでいるだろう。この星は。」

それはそうだ。と確かにジュリも思う。

 この星はある意味成功している。人間は工業にも軍事にも科学にも興味がない。しかし誰も働かない。

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