8 第1王妃の治療
一番毒の影響を受けた第1王妃の治療だ。身体的な影響より精神的な影響を危惧した。しかしその心配はなかった。
8 第1王妃の治療
マリエールは大きな仕事を終えた。1000体のアンドロイドを出して略奪の限りを尽くし、キャサリン王女に力を貸して、宰相、伯爵、その一派の所業を正し、キャサリンを女王にした。そのための力を国軍大将に借りたが彼の信認を得るための力をマリエールが援助したのは当然だ。
マリエールは王城に居る。多くのアンドロイドに囲まれ、反逆者を次々と処分するマリエールを王城の人々は恐怖の対象と見ている。既にキャサリン女王からマリエールの行なう事は一切罪に問わないとされている。マリエールはキャサリン女王に反逆の意思の有る者をテレパスして処分しているだけだからマリエールにしては問題ないのだが、人が見れば無差別殺人だろう。ただテレパスしているだけだから、他の理由は無い。
宰相達の手下なら幾らでもいるのだから、マリエールやアンドロイドの手が止まる事は無い。しかし、マリエールには目的がある。第2王妃達に毒を盛られた第1王妃その子ども達、麻薬を盛られた国王の治療である。
その中で第1王妃の状態は深刻である。意識も無く、ベッドに寝たきりだ。マリエール、キャサリンが見つめる。第1王妃の側近の幾人かは収納済である。現在いる側近は全てアンドロイドだ。マリエールは、
「これは酷い。長期間遅効性の毒を飲み物や食料に含ませ、飲食させられたのだ。悪意の有る者は排除したが、悪意が無くても毒が含まれていた事は知っていた筈だ。第1王妃の側近は全員処分が必要かも知れないな。」
キャサリンは頷いた。
「マリエール、王妃の治療は大丈夫か。」
キャサリンは心配そうに、聞いた。
「身体的には問題ない。問題なのは精神だ。長期間毒を盛られ続けた影響が少なければいいが。」
取り敢えずフィールをかける。マリエールは王妃にフィールを掛けた。王妃はゆっくり目を開けた。キャサリンは、
「お母上、ご機嫌は如何ですか。」
王妃はニッコリ微笑むと、
「とてもいいわ。長い眠りから覚めたよう。」
マリエールは、
「それは何より。眠りに付くことで精神を守ったのですね。もう大丈夫です。パーフェクトフィール。」
キャサリン、王妃を見つめる。マリエールは、
「キャサリン、王妃はもう大丈夫ですよ。病後ですからいきなり無理は出来ませんが、徐々に回復して行きます。」
キャサリンから涙が流れた。王妃は、
「キャサリン、この可愛いお嬢様が私を助けてくれたのね。お優しい方、ありがとう。」
キャサリンは涙を拭いて、
「お母上、騙されてはいけません。このマリエールは私の病を治した直後に、私を馬車馬の様にこき使ったのですよ。」
王妃は笑いながら。
「必要なら私も馬車馬の様に、働きましょう。」
と応えた。
その後、キャサリンの同腹の兄と妹にパーフェクトフィールを掛けた。2人は酷い状態には至っておらず。問題ない。
問題は国王である。昏睡状態だったので、フィールを掛けた。微かに目を開けたが、目は白く濁っている。マリエールは、
「国王陛下が正気に帰る望みは薄いですね。このままの方がお幸せかも知れません。」
マリエールは鎮痛な思いで言った。しかし王妃は、
「どの様になっても私が責任を持ちます。マリエール様治療をお願いします。」
マリエールは王妃が強い人だと思った。現実に向かい合えなくなった国王。それでも現実を見つめろと迫った第1王妃、現実を見なくてもいいと提案した第2王妃。第2王妃を選択した国王。第1王妃はその結果どうなったのか元国王に告げようとしている。どんなに残酷な事か第1王妃自身が一番知っている。しかし彼らの問題だ。
「パーフェクトフィール」
国王の目の濁りはなくなった。第1王妃は国王が麻薬に溺れていた間の国民や第1王妃と子ども達の苦境、宰相や伯爵一派、第2王妃の所業、どの様にキャサリン達が困難を乗り超えたか。そして我々はどうするか。国王は暫く瞑目して、
「ありがとう、キャサリン、王妃、マリエール。後は任せた。」
自害するのではないかと心配したが、その気配は今の所ない。国王自身現実を受け止めたようだ。マリエールが心配する事ではない。取り敢えずマリエールのここでの仕事は終わった。
国王が麻薬に溺れたのにはそれなりに理由があると思うのだが、王妃は治療を望む。強い女性だ。