62 アンドロイド007
007が賢人会議に出席する事にマルシアは懐疑的だ。シルビアのアンドロイドである007はマリエールのアンドロイドには異質だ。
62 アンドロイド007
007が賢人会議に出席する事に対して、彼女の研修を1年担当してきたマルシアはこう思う。シルビア様のアンドロイドの中では優秀だと聞くし、研修で問題があったわけでもない。マリエール様が武器製造で我を忘れた時適切な対応したそうだ。しかし、時々感情に囚われる言動や行動が見られた。行き過ぎた行動をする事もなかったので、シルビア様とマリエール様の交流の意味が高いこの研修に影響があるほどではなかった。しかし、賢人会議への出席者に相応しいかというと甚だ疑問だ。選定理由が、1年間研修を受け情報共有をした他者のアンドロイドと理由だ。それに該当するのが彼女しかいないだけで特に彼女の優秀さ認められたわけではない。マルシアの考えはマリエールのアンドロイドの総意の様なものだ。007に対するマリエールのアンドロイド達の感情は良くない。感情がないアンドロイド達の心のより所はマリエールだ。007は彼らから見れば異質だ。
賢人会議のメンバーは9名、4人が人間の大臣だ。残りの5人の内1人がマリエール、4人の内2人がマリエールの感情のないアンドロイド1人がマリエールの感情のあるアンドロイド、そして後1人が007だ。この賢人会議設立の理由が、昨年の武器製造で人間がアンドロイドに支配されているという意識が人間の武器製造を目指し、アンドロイドの破壊を企んだ事から打開策を探る目的で発足する事になった。今回、マリエールが人間をかなり抑圧する政策を取ったため、人間のマリエールへの不信感が広がっている。現政権は決して民主主義政権ではないし、人の命よりも大切なものは幾らでもある。それでも人間は大切なものだし、マリエール自身が人間だから人間よりもアンドロイドが大切だとは思ってない。共にあるべきものだと思っている。しかし、人間もアンドロイドも対立を望む。人間はアンドロイドに支配されていると思い、アンドロイドは自分達を敵視する人間が憎い。
賢人会議は、内閣総務省の会議室で開催された。この内閣という制度は、キャサリン女王の始めた事だ。キャサリン女王の時代は王権が強くなった。自ら枷を嵌めるため、貴族代表と市民代表による議会を作り、議会が作った内閣が政権を運営する制度だ。キャサリン女王から数代その制度が続いたが愚かで増長した国王によって、この制度が水疱に帰した。キャサリン女王の偉業を偲ぶため名前と制度の一部を残してあるが、議員とか市民代表という存在もないし民主主義政権があるように、マリエールが人間を錯覚させているだけだ。インターネットが出来て9万年経つが、これによって人間が政治に参画している錯覚を覚えさせてきた。インターネット上で論議させたり、自由なトークの場にしたり、インターネットの有用性は大きい。しかし、両刃の刃だ。正しく利用されていれば問題ないが方向を間違えると、今回のような事態を生む。幾ら自分が不滅の存在でも、自分の種族が滅ぶ事は避けたい。
人間社会は決して民主的ではない。インターネットを利用して自分達の意見が政治に反映されているように錯覚させているだけだ。しかしインターネットは両刃の刃だ。敵を作り出してしまう。




