29 東の大陸
元国王の回復は、王族にも貴族にも国民にも朗報だ。強権政権でいる必要があったが、安定政権に移行する。
29 東の大陸
元国王が回復して、王族や貴族、国民は安堵した。キャサリン女王は陸軍大将と共に強権を発動してきたが、安定した政権作りのため、元国王と長男である弟に王政に関わる事を求めた。陸軍大将は息子を陸軍少将に昇進させるのを条件に退位し、御意見番として陸軍に残った。強権を発動する政権から穏やかな政権に徐々に以降する。そのために父や弟の協力を得て、強権発動に協力してくれた陸軍大将に世代交代をお願いした。キャサリン女王も自分の役割もそんなに長くないと思っている。
政権が安定してくると同時に経済が盛んになる。KMドラッグストアの活躍だ。強権発動時、宰相や伯爵や第2王妃に加担した貴族や商人、有力者をことごとく粛清したので受け皿としてKMドラッグストアを立ち上げ、既得権益を主張する者は一味の者として宰相達の一味とした。これらの粛清は全ての領地や家屋、商店や財産を没収したので、影響は大きかった。しかも実行したのが、全てアンドロイドだった。悪徳役人、悪徳警官にも容赦はない。粛清した人々の家族は、半分は粛清して半分は捕らえ、精神支配と付与魔法により事業、産業、流通の担い手となった。
KMドラッグストアの最大の功績は、農民から作物を買い取れば、自動的に納税した事になる制度に切り変えた事だ。これには庄屋や徴税担当者の反発があり多くの粛清が起きた。流通も改革した。全ての商品は、KMドラッグストアを経由する。従わない商人は粛清だ。強奪した財産で上下水道事業、ゴミ処理事業、灌漑事業、開拓事業を実施し、強盗、山賊、野盗、犯罪者、スラム住人、生活破綻者などを精神支配し強引な付与魔法を掛けて優秀な人材が育成される場合もあるが、失敗して収納する場合もある。KMドラッグストアがこの国で力を持ったのは間違いない。
軍人、警官への魔法の付与が始まった。軍人は海の魔獣と戦う。警官は凶悪な悪の組織と戦う。KMドラッグストアが海洋開発を始めた時、かなりの部分開発地域の海の魔獣を狩ったのは軍人達だった。軍人や警官に付与魔法を施したのは当然である。能力が10倍から100倍上がる。
それぞれの場所でアンドロイドが活躍して、人間に魔法を付与したが、人間とアンドロイドで魔法付与の契約が出来れば、人間は500m以内のアンドロイドならどのアンドロイドからでも付与魔法が受けられる。
大規模海洋開発が終わっても各地で海洋開発は進んだ。一方で沖合に出て海の魔獣を狩る部隊もあった。
若手海軍東部第4師団所属のマイケルは、東の海の遠征に出掛ける事になった。一週間東の海を飛び。開発可能な島に転移陣を作っていく事である。もちろんアンドロイドも一緒だ。出発前日、2人で打ち合わせを行なった。アンドロイドが、
「沖合の狩りの情報により、ここから500kmほど東に、かなり大きな島があります。先ずここに転移陣を設置します。ここで一泊して、翌日出発します。概ね500km飛んで頃合いの良い島を見つけ島に転移陣を作ります。これを7回続け、終了後王都の海軍本部に帰還して本部に報告して任務終了です。」
マイケルは少し緊張した。こんな長距離を飛ぶのは始めてだ。何かが変わる切っ掛けになる筈だ。国に取っても自分に取っても。
「よろしくお願いします。」
マイケルは気合いを込めた。
東の海へ遠征に乗り出す。3500kmの旅だ。どんな世界が待っているか。




