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     25 エリクサーを入手するために

 マリエールはキャサリン女王に元国王の治療を依頼された。結果元国王は少年のように純心な心の持ちだった。

      25  エリクサーを入手するために


 キャサリン女王に元国王、つまりキャサリン女王の父親の治療を依頼された。マリエールは医者ではない。治療薬は作るが、処方するのは医者の仕事だし、マリエールは医者がする事を公然としてしまっている。今さら出来ないとはいい難い。元国王を退位に追い込みキャサリンを女王にした負い目がある。第2王妃に麻薬漬けにされ廃人寸前まで追い込まれたのは元国王の気の弱さが原因だ。全て第2王妃の責任というには無理がある。既に第2王妃も伯爵も宰相も関係者も全て処刑され財産も没収されているから責任がなかったなどと言えないが、第2王妃が一方的に悪かったとは思えない。元国王は騙されて麻薬に手を出したわけではない。キャサリン曰く元国王が死にたがっている。そんな状態から救済して欲しい。

 気持ちは判る、国王の気持ちもキャサリンの気持ちも、治療法も薬もある。元国王は麻薬かアルコールに逃げたい、しかし、キャサリンや元第1王妃は許さない。だから死にたい。キャサリンは元国王が元気になる事を望んでいる。マリエールには手はある。いやありすぎる。ただ元国王に有効なのは何かだ。

 例え話をしよう。これはキャサリンにもした。本当に落ち込んでいる人は自殺する事も出来ない。治療などして少し元気が出ると自殺する。中途半端な治療は危険だ。マリエールに中途半端でない治療が分からない。兎に角やれるだけやればいいと言われたたらやる。しかし自殺の引き金を引く事になりかねない事は覚悟して欲しいと告げた。

 取り敢えず、元国王の就寝前、古竜素材のエリクサーもどきを服用させ、明晰夢の魔法を掛けて、自殺防止の要員を配置した。翌日登城すると案の定元国王は自殺を企てたらしい。古竜素材と魔王素材のエリクサーもどきを交互に服用させ、精力剤を服用させて、性的な明晰夢を誘導する魔法を使った。更に亢進剤と精神安定剤を夕食後服用させる。取り敢えず自殺を企てたのは一回だけだったが状態の改善はない。幻影と明晰夢の内容をいろいろ変えてみた。結果子どもが喜びそうな幻影や明晰夢が合う事が判った。マリエールはキャサリン女王に、

「元国王は、大人になりたくなかったのでしょうね。治療で症状は抑えられていますが、自分なりに納得して己の道を見つけるには本当のエリクサーが必要ですね。自殺願望のある人に寿命を伸ばすエリクサーを与えるのはどうかと思いますが。」

キャサリン女王も何かを思うように、

「確かに、父は少年のような人でした。もう責任を負わなくてもいい。自由に生きていけばいいと納得するために必要ならエリクサーを父に与えて下さい。」

ただマリエールは思う。

「エリクサーは、麻薬で病んだ元国王の心を癒す事は出来ます。しかし、心が正常になってもなお、自分がなした事が許せないと思われたらどうされます。心を癒さずこのままの方が元国王陛下に取っても、キャサリン女王陛下に取っても幸せのような気がします。」

キャサリンは苦い物を口にした様な顔をした。

「母に相談してみます。」

エリクサーは誰でも入手したいが、入手する事で起こりえる問題がないわけではない。エリクサーを入手するために努力はするが、誰に使うべきかは違う問題だ。

 エリクサーの入手は必要だ。しかし、使う相手と使わない相手がある。

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