240 第1王子
第2王妃は第1王子にマリエールの残虐行為の事を知らされる。俄には第1王子は信じない。祭事の師匠の頑強に反抗した者が処刑されたという言葉を信じた。
240 第1王子
第2王妃は第1王子を呼んで、マリエールがこの国で行なった暴虐について語った。第1王子は驚いた。第1王子は、
「そんな話しは誰にも聞いた事がありませんよ。父上も仰いません。外の誰にも聞いた事がありませんよ。信じられません。」
第1王子は驚愕の顔をした。第2王妃は、
「マリエールの配下が聞いていれば殺されます。誰も言えません。この場には信じられる者しかいないですのでお話しできました。あなたが国王になるしか我々が生きる道がありません。どうか王位を望み国王陛下に申し上げて下さい。」
第1王子自身自分が国王になる事でこの国が良くなる道が見えて来ない。自分が国王になるしか生きる道がないとはなんだ。ロザリアが自分や母上を殺すという事か。
「母上、私は母上の言葉が信じられません。いろいろな者に話しを聞いてまいります。母上の言葉が真実ならば、父上に王位話しをします。」
第2王妃は話しが漏れるのを危惧しながらも了解した。第1王子は先ず旧国王派という第1王子や第2王妃に擦り寄る連中の話しを聞いた。彼らは第2王妃の言葉と同じ言葉を第1王子に伝えた。次に母方の祖父、祭事の師匠の話しを聞いた。彼の言葉は少し違った。
「彼らは明確な敵意のある者だけ魔法を放って収納した。血など流れておらん。綺麗な物だった。敵意のない者は地位も財産も奪われた。私が領主の地位を奪われ祭事省の長官になったように。恨んではおらんよ。お前を担ぎ出して復権を狙うようだが愚かな事だ。時間は遡らない。混乱を招くだけだ。」
祖父の言葉が一番相応しいと思った。
第1王子はロザリアに会って経緯を語った。第1王子は、
「ロザリアは私が国王に相応しいと思うか。」
ロザリアは思案顔だ。
「王子が国を思って国王になろうと思うなら応援する。第2王妃や旧国王派に担がれて国王になるなら反対する。」
真っ当な意見だ。祖父の話しが真実なら、虐殺など行なわれていない。強硬に反抗した一部の者の処分だ。現に旧国王派が存在しているのが何よりの証拠だ。第1王子は態度を鮮明にせず様子をうかがった。
より祭事には積極的になった。気候にも恵まれ、豊作が続いた。しかし第1王子が10歳の時干ばつがあり飢饉になった。マリエール商会の迅速な対応により餓死するような被害はなかったが、旧国王派の策謀により平民がマリエール商会を襲う事態があった。その一人に第2王妃の親族がいた。彼は、
「この国の悪政が招いた、飢饉、マリエール、ロザリアの横暴を許しては飢饉は更に続く。第1王子こそ国王に相応しい。第1王子を国王に立てる時だ。」
と叫んだ。関係した旧国王派の3分の2が処刑、一家取り潰し。扇動された平民も処刑された。第2王妃やその子ども達も貴族籍を剥奪されて祖父に身柄を預けられた。もはや反乱の目は摘まれたと思われた。
ところがイワン帝国の密偵達は足繁く第2王妃や第1王子のところへ通う。第2王妃も第1王子の心も箚さくれる。
何年も穏やかに過ごした。第1王子にとっては始めての飢饉だ。旧国王派が平民を扇動してマリエール商会を襲った。




