239 密偵
イワン帝国から密偵が入国した。マリエール商会を通しての依頼だ。アンモナイトの化石の虹色の宝石だ。
239 密偵
イワン帝国が新た密偵を送り込んできた。商人を装ってきた。ジュエリー細工だ。マリエール商会が独占しているので入る余地はほとんどない。イワン帝国製のジュエリーだってマリエール商会で扱っている。当たったのはイワン帝国の更に西の珍しい宝石で作られたジュエリーだった事だ。アンモナイトの虹色宝石と言うのだそうだ。マリエール商会を通して直接商いたいと言ってきた。第1王妃第2王妃第3王妃に献上した。顧客がついた。マリエール商会以外としては大きな商いをしている。ミハイル国王は名君だがマリエールの国よりはつけ入り易い。第2王妃辺りが狙い目か第1王子は祭事にはまり王権に関心が薄いと聞くが煽てに乗るかも知れない。ロザリア王女は平民ばかり気にして貴族や役人に気がない。周辺諸国はマリエールやロザリアの力に恐れを抱いているだけだ。ミハイル国王の国も一枚岩ではない。旧国王一派を担げば第1王子派が出来るかも知れない。この国をイワン帝国寄りに出来ればマリエールの国の周辺諸国は瓦解して崩れる。皇帝はお喜びになられる。急いではならない。相手は一人でイワン帝国を潰せると公言するロザリアだ。下手な怒りを買ってイワン帝国を潰されては元も子もない。慎重に事を運ばなければならない。
密偵グループは第2王妃、旧国王派閥に狙いをつけた。ポロポロと情報が漏れる。ミハイル国王と第1王妃がマリエールの国に居る間にどんな粛清が行なわれたか克明に教えてくれる。第2王妃にとってはどれ程マリエールの国が残酷な事をしたか良く知れる。第2王妃の家族は殺されなかったが、親戚や友人やその家族、近所の人達が殺された。ミハイル国王や第1王妃の活躍が伝わるけど第2王妃にとってはマリエールの国の残虐行為が真実なんだと判る。国王や公の場では言えないからイワン帝国の商人の我々には言えてしまうのだ。密偵から、
「次期の国王陛下は第1王子ですよね。国内も良く纏まるし、イワン帝国との関係も改善されますしね。」
第2王妃は思案顔だ。
「しかし、あの子祭事に掛かりきりで国王にはロザリアがなるべきだと言ってますのよ。」
密偵は考える振りをした。
「ロザリアが国王になっら旧国王派は皆殺しですよ。また悪夢の二の舞いですよ。ロザリアはあのマリエールの弟子ですよ。あなたも第1王子も殺されますよ。それに第1王子はマリエールがこの国で何をしたかあなたから聞いていないのではないですか。ただ国王サイドの情報しか得てないのではないですか。国王もその時いなかったですからね。その話しをすれば第1王子も国王になる決意をしますよ。第1王子が正当な後継者ですからね。」
第2王妃はその気になったようだ。この国が荒れてくれるとちょっと面白い。ロザリアが我々の動きに気付いてイワン帝国と事を構えるのは不味いが、あっさりと身を引くかも知れない。最悪我々が殺される程度だろう。
旧国王派にも第1王子擁立を呼び掛けた。旧国王派からも生々しい残虐行為の情報が入った。後は流れに任せるだけでいい。
密偵は第2王妃を唆し、第1王子を国王に祀り上げようと画策した。




