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        235 マリエール

 ロザリアは国を立った。国境を超え目的地に到着した。アンドロイドのリンダは機械的な話し振りだ。この国ではそれが許されているのだろう。

          235  マリエール


 マリエールは国境の近くのマリエール商会にいる。ロザリアは馬車で一泊二日の行程だ。ロザリアにとっては始めての会談だ。しかしマリエールの人となりは良く聞く。両親からは厳しい人だが信頼出来る人だと言われている。しかしマリエールを肯定的に捉えない人はそれなりにいる。マリエールは反対する者を皆殺しにしたわけではない。立場を奪っただけだ。反抗すれば命はないだろうが心で思う程度では罰されない。

 ミハイル国王はその点上手くやっている。マリエールに絶対服従の態度を取りつつ旧国王派の后を娶り、貴族にも役人にも取り立て彼らの不満を和らげる。圧倒的な勢力がマリエール派というのが理由だろうが旧国王派の反発はない。更に平民の人気が高い。新しい事業、産業を起こし平民の生活を豊かにしている。

 ロザリアはそんな国王が好きだ。30代のミハイルは気力も体力も充実している。国を思う心は人一倍強い。許されるなら父の元で働きたい。そして次代国王に使えたい。ロザリアには企画立案、根回し、外交の才能があると思っている。でも自分が国王になったり外国に嫁に出たりはしたくない。マリエールは何を思ってロザリアに能力の卵を与えたのだろう。そしてその卵を孵すかどうか判断するそうだ。

 国境を超えマリエール商会に到着した。ロザリアは側近のユリナと共に部屋に招かれた。マリエール商会にいる間世話をしてくれるリンダと言う女性の案内で部屋に入る。リンダは、

「ロザリア様は入浴して頂き、お召し物を着替えてマリエール様と謁見して頂きます。そのまま夕食を召し上がられお茶会の予定です。滞在期間は未定ですが、お連れの方は一部を除き帰国して頂く予定です。」

ロザリアはリンダの物言いがあまりにも機械的なのに気が付いた。これがアンドロイドの普通なのだろうと思った。国にいた時もアンドロイドには良く会ったが、国のアンドロイドは人間性を付与されていた。ここではその必要性がないのだろう。

 予定通りに事は進んだ。いよいよマリエールとの謁見だ。ロザリアは跪き初対面の挨拶をした。マリエールは無表情に最低限の対応をした。ロザリアは、北の国の言葉で話したがもしかして言葉が通じていないかも知れないと言う最悪のケースを考えた。マリエールは中の国の出身、ロザリアは中の国の言葉は知らない。ロザリアは北の国の言葉でこの国へ来た目的、国の状況、自分の話し、自分の考えを述べた。表情の変わらないマリエールに、

「マリエール様、返事を下さい。お願いします。」

マリエールの表情は少し和らいだ。

「私が北の国の言語が話せない可能性を思い至り、中の国の言語や西の国の言語を使うのではないかと思って黙っていた。結局きみは中の国の言語も西の国の言語も理解していない事が判った。きみは賢いと思ったが買い被りだったようだな。」

人の悪い笑みを見せマリエールはそう言った。ロザリアは、

「マリエール様は3歳の時何カ国後が話せましたか。」

マリエールは遠い昔を思い出すように、

「多分2ヶ国語だと思う。」

ロザリアからはマリエールの年齢は判然としないが、15歳の成人前のようだ。そんな年齢の人が何カ国も制服して言語を習得していく。どれ程の能力があるのだろうか。想像もつかない。

 ロザリアはマリエールに初対面の挨拶をした。ほとんど反応が返って来ない。マリエールには北の国の言語が通じないのだろうか。

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