197 未到達の遺跡
断崖絶壁の遺跡のドラゴンは紳士的だった。マリエールも丁寧に話す。年の話をされたのはしゃくだが出来るだけ正確に答える。
197 未到達の遺跡
広場に入るとドラゴンが居た。あまり見掛けない大型のドラゴンだ。遺跡の広場では空中戦は難しいと思った。ドラゴンと念話して青龍というドラゴンの仲間だと知った。赤龍よりもやや大きい。ドラゴンとしては中型だと思う。ドラゴンはマリエールに、
「遺跡の盗掘者よ。今なら見逃してやる。とっとと逃げ帰るがいい。」
青龍を倒さない限りお宝は手に入らないらしい。
「お宝を手に入れるためにここまで来たのよ。むざむざ帰れるわけがないでしょう。あなたと戦うわ。」
両者は戦いになった。やはり空中戦にはならなかった。ブレスと火炎、爪と牙の攻撃だ。赤龍よりも強い。空中戦になったら勝つのは難しいと思った。敗ける事はなくても逃げられるかも知れない。そうなると未到達の遺跡だと証明するものがないので少し悔しいかも知れないと思っただけだ。最初の一手はドラゴンに譲った。ドラゴンブレスだ。マリエール以外なら効果があったろう。マリエールはドラゴンブレスに吹き飛ばされて、広場の壁に着地した。青龍はノーダメージのマリエールを見て呆れた。
「ドラゴンブレスだぞ。しかも直撃を受けてなおダメージを受けないなんてありえないぞ。貴様人間ではないな。」
ダメージを受けないから人間ではないという理屈は納得し難いが、マリエールがドラゴンのいうところの人間ではないのは間違っていないから、姿を見せて名乗った。
「私は銀河系宇宙から来たマリエール。不滅の存在よ。」
ドラゴンは不滅の存在という一点に注目した。
「要するに不老不死者か。どれぼど生きた。」
女性に年を聞くのは失礼ではないかと思ったが、
「細い事は覚えていないわ。10万年ほどかしら。」
ドラゴンでも一万年生きるものは稀だ。10万年生きる存在はドラゴンも知らない。
「そんな存在聞いた事がない。その方万能者か。」
かつてそのように呼ばれていた事はある。しかし思い通りにならなくて逃げ出したマリエールがいる。
「決して私は万能者などではない。失敗ばかり重ねて来た。」
痛恨の極みだ。
「万能者でないなら勝ち目はあるな。」
そう言って青龍は攻撃を始めた。強敵と認めたのだろう。青龍は全力でかかって来た。マリエールも防戦だけでなく攻撃もした。しかしながらマリエールの攻撃は深く青龍を刻む。勝敗は明らかだ。マリエールは、
「私はお宝が欲しいだけだ。あなたの命が欲しいわけではない。そこを通してくれればそれでいい。通してくれないか。」
青龍は悔しそうな顔をした。
「我は遺跡を守る龍通るなら我の屍を越えよ。」
定めなのだ。青龍には死んでも譲れないものがあるらしい。マリエールは、
「次の一撃で最後にする。」
マリエールも青龍も覚悟を決めた。マリエールは貫通魔法に闇魔法と火魔法と風魔法を合わせた。青龍は笑ってマリエールをみた。別れを告げているようだ。マリエールは、
「さらば、強敵よ。いい勝敗だった。ありがとう。」
マリエールは青龍の眉間に貫通魔法をを放った。青龍の屍は笑顔を浮かべていた。
マリエールが優勢なのはお互いに判る。マリエールは通して欲しいと頼んだ。青龍には譲れないものがある。最後のとどめを刺した。