180 宇宙 1
声はマリエールに何故宇宙を望むのか聞いた。マリエールは核戦争も環境破壊もない世界で暮らすためと答えた。
180 宇宙 1
声は、
「何を思ってそなたは宇宙に出る気になった。」
マリエールは答えた。
「私の中のマリエールの記憶では、マリエールは常に核戦争や環境破壊を恐れていました。私はそんな恐れなど頂きたくあいません。私は、私の記憶のマリエールの記憶の中にシリウス第4惑星に意思のある動く植物の記憶があります。私はその世界で安心して暮らしたいのです。」
声は怒りを少し和らげた。
「そんな都合の良くいくとは限らないぞ。」
マリエールは答える。
「宇宙には核戦争で滅びた幾千の星々ある事を知っています。そういった星々に天地創造をかけるのも面白いと思います。いずれにせよ、記憶にあるマリエールは私に彼女のような人生を歩ませたくなかったのでしょう。私は私の人生を歩みます。」
声は、
「行くが良い。私は星から遠く離れる事が出来ないからここでおさらばだ。願いを果たしてくるが良い。」
声は消えていった。多分神様なのだろう。飛行は順調に進んだ。間もなくシリウス第4惑星だ。
マリエールは惑星に着いた。印象は緑が多い事だ。この惑星の生き物は、植物的な物と動物的な物を併せ持つ。全ての動植物は光合成が可能で植物的な傾向が強い物と動物的な傾向が強い物があるが全く片方の傾向だけの物はいない。
この惑星にも人間はいる。知的能力もあるが活動的とは言い難い。日の半分は日光浴、半分は根を張ってお休みだ。マリエールは彼らに話し掛けた。念話だ。
「ここは少し寒いわね。こんなに寒くては動植物の生育に影響が出るのではないかしら。」
この地は寒い。今は秋のようだが、最も気温が上がっも20度を超えない。念話が返って来た。
「暑い時もある。もっと寒い時もある。耐えられない物は滅ぶ。それが自然の摂理じゃないか。」
理に叶っているようないないような答えだ。
「例えばよ。これから冬になってもっと寒くなったら服や棲家はどうするの。」
テレパスで判った。冬場は彼らは落ち葉の中で根を張って冬眠だ。本意ではなく食料がないためやむ得ない。
「どうしようもないだろう。お天道様と勝負出来るわけがない。」
マリエールは、
「私は、きみ達に太陽の光りと食料を与える。今年の冬は冬眠しなくてもいいよ。」
この星の人間達は微妙な顔をした。
氷河期は間もなくこの星を襲う。氷河期は公転軌道の異常、地軸の変化、炭素濃度の低下などで起こる。最近定期的に起こる氷河期は炭素濃度の低下が主因だ。この星の生物は炭酸同化作用によって生活している。生活その物が氷河期を作り出しているというパラドックスを解消してやらなければ、この星の未来が見えない。
マリエールは何か所か核融合発電所を作り。その電力で石灰石等を分解して二酸化炭素を増産した。マリエールは更に土地や池沼の腐葉化させている。少なくとも今年の冬は乗り切れそうだ。
マリエールは一定数の人間の集落を率いるようになった。彼らに温暖な日光と豊富な食料を与える事がマリエールの役割だ。
シリウス第4惑星は氷河期を迎えようとしていた。マリエールは石灰石などを分解して二酸化炭素を排出した。