135 母星問題
ビルはバーチャルリアリティの世界から救出された。しかしビルはその世界が気に入り自らその世界に浸る。
135 母星問題
ナビゲーションが作動して観光サービスが止まった。ナビゲーションシステムを使えば観光サービスは使えるし、問題ないのだがビルはバーチャルリアリティに浸かった生活が懐かしい。生活上の支障はビルの場合特別にはないし、ビルは再びバーチャルリアリティに浸かった生活を始めた。
マリエールはビルのようにバーチャルリアリティに浸かって生活している者が1000人に及ぶと聞いている。彼らは独身男性で大人だという事は判っている。主にバーチャルリアリティを体験する業務に付いている。バーチャルリアリティの中でバーチャルリアリティを体験する事に付いて、大型コンピュータは新た体験として一定の評価をしている。仕事中だけでも止めさせるかどかは大型コンピュータの判断に任せる事になる。
長期間のバーチャルリアリティに浸かって生活する事、仕事中まで浸かっている事、母星が容認する事に付いて、移住星の女性団体や社会問題研究会が反体声明を出した。内閣は他星への干渉はしないとしたが、一般的には気持ちが悪いと感じているようだ。
母星に内閣はないのでマリエールのアンドロイドや不滅の存在に絶対服従するアンドロイドが政治を担う。つまりマリエール独裁政治だ。マリエールは、
「勤務中の禁止、許可は勤務場所の長が行う。」
とした。勤務場所で強制遮断されたビルは怒った。上司に喰ってかかった。上司は、
「マリエール様の決定を聞いてなかったのか、勤務中の利用を制限されただけだから、どうしてもやりたいなら仕事を辞める事だな。」
と言われた。観光サービスは金がかかる。実際に4体簡易型アンドロイドを借りるわけだし料理もお酒も本物だ。それ以外にお金は使わないビルだが蓄えがそれほどあるわけではない。仕事を辞めて観光サービスは受けられない。
かくして、長期間バーチャルリアリティに滞在する者は解消されたが、移住星や火星の締め付けが強まるほど母星観光や移住者が増える。母星は観光が基盤だから観光者が増えるのは歓迎だ。しかし移住者は歓迎出来ない。移住星や火星にすれば規制するのは結婚を望まない人間を減らすためだ。移住者が増えれば元の木阿弥だ。移住者には元々高い移住許可料をかして来たが、昨年から10年分の年収を取る事になった。どの星に取ってもいい事だ。母星にはあまり人は必要ない。可愛い簡易型アンドロイドがいれば殆どの事は解決する。移住者が減って母星の人口は安定した。300万人だ。教育機関は必要ないし、妊産婦や出産や保育の施設が必要ない、まあほどよい人口だ。観光収入と移住許可料だけで星は運営出来る。客のニーズに如何に応えるかが課題だ。
最近はバーチャルMMORPGゲームの開発が盛んだ。バーチャルリアリティのゲーム版だ。バーチャルリアリティは無限に広がる。しかも基本的に母星でしか開発出来ないし、体験出来ない。バーチャルリアリティや可愛い簡易型アンドロイド専用の大型コンピュータがあるのは母星だけだ。母星だけで使える端末やインターネット、連結したコンピュータが母星中で活躍して、新しい開発が進む。
移住星や火星の規制が厳しいほど母星観光や移住希望者が増える。母星は昨年から移住許可料を10年分の年収に切り上げた。流石に移住者は減った。