13 S級冒険者と共に
マリエールは素材に感情的になる事はない。しかしこのドラゴンには、感情的になった。
13 S級冒険者と共に
マリエールは素材に対して感情的になる事はない。オークに感情を抱いていたら毎日の生活に支障をきたすだろう。マリエールは感情的になる事は少ない。キャサリンにだって、第2王妃にだって感情的になったわけではないし、S級冒険者や生還者にも感情的になったわけではない。しかし、このドラゴンには怒りの感情を覚える。許さない。そんな決意をしてしまった。要するに侮蔑が自分に向けられたからだ。侮られて実力を見せようとしている。こんな気持ち始めてかも知れない。
先ずはウインドカッターで翼を切り落とす事にする。渾身の力でドラゴンの右の翼の付け根を切り裂く。翼の中程まで切れる。ドラゴンは飛んでいられず、着地する。怒りの目をこちらに向ける。ウインドカッターを連発して両翼を切り落とす。
「何か言い残す事はないか。」
マリエールはドラゴンに尋ねた。
「我の呪いを受けよ。」
ドラゴンはそう言って、最後のブレスを吐いた。その位置を保つのに少し苦労した。ドラゴンの呪いと言うか記憶や知識がマリエールの脳に入って来た。マリエールはウインドカッターでドラゴンの首を切断して全身を収納した。
洞穴に戻ると、S級冒険者達は随分良くなり、立って歩いている者もいる。彼らは口々に礼を言い、討伐の様子を聞きたがった。マリエールは問われるがまま応える。
「ドラゴンによると、3000年ほど生きた特別な個体なのだそうだ。種族も古竜と言うらしい。」
メンバーは驚いている。古竜と言うのは特別な存在だ。
「そう言う事なら、今回は依頼のミスだ。あなた達の単独で受けるような依頼ではない。これは依頼失敗でなく、我々への合同の依頼だった事にした方がお互いに箔が着くのではないか。」
S級冒険者にはプライドがある。自分達はただやられた。本来死ぬ筈だったのに命を助けられた。共同などしていない。
「私達には生還者くんの情報が凄く役に立ったし、きみ達は治癒師さんの判断とフィールがなければ死んでいただろう。私は仲間にそこまで思われるあなた方と協力していきたい。もちろんドラゴン素材は基本私の物にしたいけど、魔石や牙など私のいらない素材はあなた方が取ればいい。これから協力していくために私のメンバーを一人あなた方に預ける。今回、合同依頼達成と言う事で依頼達成の報奨金を半分づつにする事、古竜と言う特殊個体を討伐したのだから、報奨金を上乗せして貰う。私は薬師だからあなた達に素材を集めて欲しい。だからアイテムボックス持ちの仲間を貸し出す。これで話はお互いの得にならないかな。」
S級冒険者達は難しい顔をしていたが、リーダーと思われる男が、
「今回、一方的に恩を受けるが、今後のやり方次第で恩を返せると言う事でいいか。」
その後、5人にパーフェクトフィールを掛けて、ここに転移陣を作り、ここで数日休養した後、王都の薬屋の庭に転移陣を作っておくので転移して来るように言って、一体のアンドロイドを残してマリエール達は転移して行った。残ったアンドロイドは、ここに来た時はいなかった。マリエールが普通連れているのは、低級アンドロイドだ。戦闘や命じた事以外は苦手だ。単独での行動が難しい。中級アンドロイドは単独行動が出来る。高級アンドロイドはコミュニケーション能力が高いなど、人に好印象を与える。超高級アンドロイドは、更に高度な能力を持つアンドロイドで、残したアンドロイドは超高級アンドロイドだ。
S級冒険者達とは、上手くやっていきたいと思う。マリエールは彼らを気にいった。