129 重要人物護衛依頼
マリエール達は遺体一つ一つを丁重に扱った。遺体に対する礼儀作法を知らないから、ただ丁寧に取り扱った。
129 重要人物護衛依頼
番頭は倉庫の作業場にマリエール達を案内した。マリエールは棺か死体を包む布か袋を用意して欲しいと伝えた。店員が何人か布を用意して居る。遺体を一つ一つ出した。人の死を悼むという事が判らないので兎に角丁寧に扱った。送り人になったようだ。最後の遺体を出し終えると、マリエールは、
「後は荷物とか馬車の破片ですが出しますか。」
と聞いた。番頭は、
「遺品になる物もあるかも知れないですから全て出して下さい。」
マリエールは言われるまま全て出した。
マリエール達はさっきの部屋に案内された。
「これは、あなた達への商会としてのお礼です。依頼とは別です。生き残った者達からの報告で100人以上の盗賊が攻めてきてお嬢様を守り切ったと。あなた達以外ではあり得なかった事だと思います。誰かの悪意を感じます。これはそのお礼です。良くやってくれました。」
マリエールはリーダーの顔を見た。
「マリエール、それをお礼をいってアイテムボックスにしまってくれないか。せっかくの好意を無に出来ないよ。」
マリエールは番頭に礼を言って収納した。
今日は泊まっていくように言われた。部屋に案内され、入浴するように勧められた。お風呂に入るのは久しぶりだ。
入浴後は夕食だ。夕食の席には商会長が居る。商会長は、
「娘の先程の無礼お詫びしたい。私は、娘に依頼内容を伝えなかった。こんな事態になる事も想定していなかった。きみ達の死者に対する対応も聞いた。きみ達は依頼された娘の護衛を優先させただけで死んだ者達を軽んじたわけではない。」
マリエール達は守らなかったわけではない。守られなかったのだ。マリエールは商会長の娘の側を離れるわけにいかなかった。マリエールは、
「守りたい物を守られない事がこんなに悔しいと思いませんでした。全員守るつもりでした。守る優先順位が必要になるとは思いませんでした。割りと安全な道で盗賊も滅多に出ないと聞いていましたから油断していました。お嬢様に図星を突かれていい返してしまいましたが、依頼書にどう書かれていようが、今回我々は依頼失敗です。お嬢様の言う通りです。」
商会長は、
「お気持ちだけで十分です。あなた達がそんな事を言ったら死んだ者達が浮かばれません。彼らは娘のために死んだのです。商会は彼らや彼らの遺族のために尽くしましょう。あなた達も胸を張り堂々として下さい。」
商会長は依頼成功だと言ってくれた。
翌朝、朝食の席に商会長の娘も居た。商会長の娘は、
「昨日、酷い事を言ってごめんなさい。私の命の恩人なのに胸を突き刺すような事を言ってごめんなさい。あなた達が気にして依頼失敗だと思っていると聞いたわ。あなた達はあの人達を助けたかったけど私の護衛が優先だから助けられなかったと聞いたわ。あの人達の名誉のためにも護衛依頼の達成を誇って下さい。私の命を救った事を誇ってほしいのです。」
彼女の言葉は胸のシコリを解かしてくれた。堂々としていよう。
商会長の娘はマリエール達に詫びた。そして商会長の娘を助けた事に堂々と誇ってほしいと言った。マリエール達は胸のシコリが解けていくのを感じた。