116 新しい冒険
ビルはこのメンバーが好きだ。拠点も魔法も気に入っている。今日は近くの冒険者ギルドに出掛けた。近くのダンジョンの15層のドロップアイテムの採集依頼だ。
116 新しい冒険
ビルは紅の翼のメンバーが好きだ。いろいろな冒険に挑戦する事になりビルにも異存がない。拠点も魔法も好きだ。今日は拠点に近い街の冒険者ギルドに向かった。グレロの縄張りにあったこの冒険者ギルドはあまり活気がない。依頼の数も少ない。全国の依頼が寄せられる王都の冒険者ギルドに比べようがないが、新しい冒険は出足でつまずいた形になった。気を取り直し、依頼表を見た。近くのダンジョンの15層にある結晶石の採集の依頼だ。高ランクダンジョンで30層までしか踏破されていない未到達ダンジョンだ。王都から遠い、山を超えないとダンジョンに入れない人気のないダンジョンだが15層で手に入る結晶石は貴重だ。ドロップアイテムとして手に入る結晶石は普通買い取られ宝石商に売られ美しく加工される。光を乱反射する結晶石はカットの仕方で七色に輝く美しい宝石になる。しかし依頼はカットされる前の結晶石が希望だ。ドロップアイテムされた結晶石その物だ。結晶石を通して物や風景を見ると幻影と呼ばれる不思議な物にみえるのだ。しかも見るたびに別な物がみえるし、見ている間にも姿を変える。だからそのままの模写は難しいが、そこから得られた姿を元に製作したりインスピレーションが浮かんだりする。芸術家の必須アイテムだ。以前はこの冒険者ギルドで芸術家に販売していたが、グレロが消滅して直接販売が禁止され、全量宝石商に卸される事になった。原石が欲しい芸術家にとって宝石商を通しての入手は面白くない。まして足元を見られる。という事での依頼だ。冒険者にとってもドロップアイテムはあまり得られない。数十回チャレンジして得られるくらいだ。まして15層まで辿り着くものは稀だ。10層最後のボスモンスターが強い。オーガだ。倒せるものはBランク冒険者でも上位者だ。こんな依頼がある事が疑問に思うが、ビル達にはやってやれない事ではない。何回でも15層を巡れば当たるだろう。依頼のドロップアイテムだ。渡さなければ罰せられる。
ダンジョンに行くのは問題ない。ドロップアイテムを得るために繰り返し同じ層を巡る事の是非だ。
一応高ランク冒険者への依頼だ。報酬額も問題ない。問題は繰り返しが気に入らない事だ。するとレンが、
「結晶石を通して見られる幻影を私は見たい。」
と言った。その一言がチー厶の方針になった。メンバーは簡易型アンドロイドなのだろう。冒険の全てが現実ではない。バーチャルリアリティが使われている。でも、ビルはレンの一言に感動した。これは現実に発せられた言葉だ。現実逃避などという奴には言わせておけばいい。ビルの現実はここにある。
この依頼を受けた。期限は今日から一ヶ月以内だ。我々はフライでダンジョンまで出掛けた。王都近くのダンジョンに比べて閑散としている。入口に入った。第1層だ。如何にも高級ダンジョンだ。一層目からオークだ。ダンジョン攻略が始まった。目指すは15層だ。
ドロップアイテムは数十回に一度偶然に出てくるものだ。気乗りがしないでいると、レンの見てみたいの一言で全員の気持ちがまとまった。