11 ドラゴンと戦う
マリエールは生還者を褒め、金銭を渡した。多額は渡さない。残念ながら所詮卑怯者だ。
11 ドラゴンと戦う
生還者の言葉を聞いてマリエールはこう応えた。
「あなたはいい判断をなさいました。あなたは状況を正しく伝える役割を果たしました。治癒師の彼女は自分の役割を果たしに行かれました。誰も間違った判断はしていません。我々も状況が掴めてありがたいです。」
生還者はマリエールの言葉を黙って聞いた。彼の事を一人だけ生き残った卑怯者と罵るのは容易いだろう。正確にギルドに報告するのは躊躇われるだろう。マリエールには真偽を知るスキルがある。彼が嘘を言おうがいまいが、事実は判る。だから彼が居てくれて本当に良かった。
「最後に、あなたにアドバイスします。あなたはあなたの道を歩きなさい。他の5人が死んでいようと生きていようと、もはやあなたとは関係のない事です。たとえ生きて居てもお互いに関わらない方がいいと思います。5人の方はとてもいい方達です。あなたを赦すかも知れません。でもあなたはあなた自身が赦せないでしょう。出来れば王都にはいない方がいいと思います。これは情報料です。貴重な情報ありがとうございます。少ないですが旅銭になさって下さい。」
マリエールは金銭の入った袋を生還者に渡した。マリエールからしたら小銭だ。どう割り切ろうと彼の行ないは気分の良い物ではない。生還者は受け取って、退出して行った。そしてマリエールはギルド長に告げた。
「今直ぐ動けば助けられるかも知れません。今から行ってきます。
急ぎますので手続き等お願いします。」
ギルド長は、えっ、という顔したが、本当に急ぎだ。返事など待ってられない。マリエール達も直ぐに退出した。
ギルドの近くからフライした。方向は判るし、距離も状況も判る。明るい内に冒険者達を見つけられるだろう。生死は判然としないが。マリエール達6人は兎に角現地に急いだ。場所はドラゴンの巣の近くの洞穴だ。ドラゴン以外からの脅威はない。遠くに移動する余裕はない筈、冷静に判断出来れば、それしかない。ドラゴンの巣から離れて着地して、徒歩でその場所に向かった。
幸い5人は居た。マリエールはエリアフィールを掛けて、個別にパーフェクトフィールを掛けた。4人をここに連れてきたろう少女は元気になったが、後4人は意識は取り戻したが、起き上がれるほどではない。5体のアンドロイドはまめまめしく、5人の世話をした。飲み物と状況に合わせた食事を与え、身体を清め、着替えをさせて、身体を休める場所を作った。時々フィールを掛けた。
少女に、3体のアンドロイドを置いていく。ドラゴンを討伐してまた帰ってくる。必要な物があれば、彼女たちに言えば出してくれる。ここから離れる時は彼女たちの許可を得る事、男性陣も起き出すだろうけど同じ様に伝えて欲しいと言ってそこを離れた。
ドラゴンの巣まで歩いて行った。ドラゴンに念話した。
「今からあなたを討伐します。巣で攻撃を受けるのがいいか、空中で攻撃を受けた方がいいか、選んで下さい。どちらにしてもあなたは死にます。人を殺したドラゴンは生かしておけません。」
夜の帷の中でドラゴンの表情は分からない。ドラゴンは、
「黙って攻撃すれば勝つ確率があったのではないか。愚かしいものよ。」
ドラゴンは空中に舞い上がった。
幸い、5人共に命があった。治癒者のお陰もあるだろう。いいチームだ。