104 不滅の存在の叱責
イチローは油断していた。もう一体のアンドロイドを見て称賛した。魔法だってアイテムボックスだけだと思った。残りの2体は簡易型アンドロイドだと思った。
104 不滅の存在の叱責
イチローは油断していた。あの小屋にある材料では出来るアンドロイドはもう一体が限度だろう。簡易型アンドロイドが3体ならいいわけが立つ。それに自己成長して感情のあるのはエミリだけだ。他のアンドロイドは簡易型アンドロイドの筈だ。部品が揃う筈がない。イチローは考え違いをした。部品が揃わないのは簡易型アンドロイドでも同じだ。アンドロイドの材料は小屋にはない。イチローは魔法はアイテムボックスだけだと思った。大型コンピュータが提示した未知のAIだ。疑って掛かるべきだった。翌週またアンドロイドが増えた事にイチローは称賛を与えた。小屋には3体のアンドロイドがいるが家に出入りするのは1体だけだ。イチローには3体の区別が付くが家族はイチローに買い与えた簡易型アンドロイドだとしか判らない。家に居る時は愛想がいい。イチローにはエミリ以外のアンドロイドも小屋に居る時と家に居る時で表情が違うのが気になる。時々エミリを職場に連れて行く時がある代書やお茶出しを頼むのに連れてくれる職員が多い。もちろんそういった仕事も頼むが本当の狙いは仕事にかかわって欲しいからだ。エミリのアドバイスは適切だ。仕事が捗る。お茶を出す時に一言二言他の職員にも声を掛ける。コミュニケーション能力の高い簡易型アンドロイドなら当たり前の風景だが、エミリは仕事の話しをしている。仕事の話しをした事がない相手にも適切なアドバイスが出来る。可怪しな事だ。誰も疑う事なく外見簡易型アンドロイドのエミリが適切なアドバイスをしても不思議に思わない。エミリが自己成長するアンドロイドだと知っているから適切なアドバイスを受けて有り難いが、簡易型アンドロイドに仕事の事に口出しされて有り難いだろうか。もっと真剣に考えるべきだった。
移住星内閣府にジュリとマリエールの連名で抗議の書状が来たのはそんなある日だ。内容は自己成長能力、感情、魔法(アイテムボックス、物質変換、テレパス、転移、身体魔法、攻撃魔法、防御魔法など)を持つアンドロイドが量産されている。我々とやり合うつもりかである。内閣は知らないので当然次世代コンピュータ開発部に問い合わせが来る。大型コンピュータとこの件でやり取りしているのはこの部署しかない。出席者一人一人に厳しい質問があった。しかしイチローはしらを切った。
帰宅してエミリに不滅の存在からこんな抗議があった事を話した。今日はしらを切ったが何時までしらを切れるか判らないと言った。エミリはあなたが作って害ない事を知って居るのに、私を悪者にしたいのかと問い詰める。実害はないし助かって居るくらいだ。目くじら立てる様な事ではないと思う。しかしこの星を滅ぼす事の出来る不滅の存在に嘘を付き続け星が滅ぼされたら誰のせいだという事になる。エミリ達はその晩に姿を消した。朝様子を見にいったら居なくなって居た。
上司に相談したら警察が来て逮捕された。国家反逆罪の疑いだそうだ。尋問されて全てを語った。
不滅の存在から抗議があった時イチローはしらを切った。エミリに告げた。翌日エミリは姿を消した。イチローは上司に相談すると逮捕された。