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1-2 大事な話

関西弁出ます。これから先ずっと出てきます。

〜沢合side〜





「なあ聞いて!バイト受かってん!」




2人は大学内にあるいつものカフェで勉強の疲れを癒していた。




「……そうなん、よかったな。」




まるで興味無さそうな言い方だが、一瞬驚いたような顔をしていたのは気のせいだろうか。


こいつのこの無愛想さは中学の頃から変わってない。高校卒業まではこの無愛想が"かっこいい"と女子にウケていたが、彼はそういう人たちを嫌っていた。

ある日の放課後に嫌う理由を聞いてみると、


『別に。見た目で判断して寄ってくる奴らが嫌いなだけやで。』


と分かりにくいが嫌そうな顔して話してくれたので「そっか。」と言って話を終わらせた。

お詫び、とまで行かないがその日は彼の大好物のチョコミントを奢った。

普段全く笑わない彼もチョコミントを前にすると少し表情筋が緩むので、見てると面白い。




「にしても早ない?合否の結果出んの。昨日やったんやろ?面接。」


「なんかな、銃で真ん中に………」




しまった。

面接官に銃のことは言わないで欲しいと言われていたのについ舞い上がってしまったせいで破ってしまった。




「……なんて?銃?」




案の定聞き逃してくれるはずもなく、彼は珍しくムッとした顔をしていた。

彼はチラッと周りを見た後、オレにだけ聞こえるような声で話す。




「お前、捕まんで?」




オレも声のボリュームを落として慌てるように弁解した。




「ちゃ、ちゃうよ。ちゃんとBB弾やったからまだセーフやで。」


「セーフちゃうわ。家庭教師の面接でなんで銃使うねんおかしいやろ。」




ごもっともだ。返す言葉も無い。




「だ、大丈夫やって。辞める時はすぐ辞めるし。ほら、オレが罪犯すような奴やないってわかっとるやろ?」




オレは顔を引きつらせながらそう言うと、こいつはムッとした顔を近づけてきた。




「……ホンマに辞めんのか?」


「ほ、ホンマやって。こりゃアカンわって思ったら辞めるから。」


「ホンマに?」




最初興味無さそうに返事していた人間とは思えないほど詰めてくる。

心配してるのか興味無いのかどっちなのだこいつは。




「大丈夫やってホンマに。面接官の人も全然怪しい感じしーひんかったし。」




そう言うと、近かった顔が仕方なさそうにして引いていく。




「お前がそう言うんならええけど……アカン事はすんなよ。」




普段から何考えてるのかあまりわからないが、この時のこいつの顔は無表情のようで無表情ではない、真剣な顔をしていた。


"アカン事"

それはつまり"犯罪"のことだろう。

だから本当に、このバイトからそういう匂いがしたら辞めるつもりだった。




「お待たせいたしましたー。カルボナーラとハムサンドとナポリタンでーす。どうぞごゆっくりー。」


「ありがとございまーす!」

「どうもっす。」




彼はカルボナーラだけを自分のところに寄せて、オレはいつも通り、先に彼にフォークを渡す。




「……欲しいもんなんかあるか?お祝いになんか買ったるで。」




彼はカルボナーラに手をつける前に、いつものブラックコーヒーを一口飲んだところでそう言い出した。

彼がこうして奢ってくれる時はバイト受かった時とか受験で合格した時とかのめでたい時にしかしてくれない。

なので特別感が凄かった。




「マジ?やった!なんしよっかなー、何でもいいん?」


「何でもええけど、俺今金欠やからな。ちょっと気ぃ使えよ。」




そう言って5000円もする物を頼んでも買ってくれる癖に。

でもあの時は流石の彼も苦しかったのだろう、ほんの少し顔を歪めながらレジしていた彼の姿を見てちゃんと遠慮しようと思った。5000円はでかい。


オレは「わかっとるって。」と言って、ぬるめにしておいたホットカフェオレにスティックシュガーを5本入れて飲んだ。




「……入れすぎやろ。」


「そうか?」







──────────────────────────







〜No side〜




『正式にアルバイトとして働いてもらう日はまだ未定ですが、その前に大事な話をしておきたいので、一週間後にまたここに来てください。集合時間は朝の9時でお願いします。』




合格ですと言われた後、面接官からそう言われて沢合は『大事な話ってなんすか?』と聞いたが『当日にちゃんと言いますよ。』と爽やかな笑顔で言われた。


そしてちょうど一週間が経った日。面接の時と同じ格好は流石に……と思ったので、黒いズボンと白い羽織ものはそのまま変えずにTシャツだけ変えた。

運良くこの日は家に誰もいなかったのでイライラすること無く家を出れた。

父親は多分休日出勤だろうが、母親はどこに行ってるか分からない。興味も無かった。


集合時間の10分前。

一週間も間が空いてしまったが道は覚えていたので、地図アプリで設定しなくてもたどり着けた。

改めてこの豪華な家を目の前にすると、バイトに来たというよりパーティーに来たような錯覚を起こしそうだった。

カメラ付きインターホンを押して少し待ってると、家の中からあの面接官が出てきた。




「こんにちは沢合(さわい)さん。」


「こんちわっす!」


「どうぞ入ってください。」




開けてくれた門扉をくぐって、面接をしたあの部屋まで面接官について行った。


部屋に入ると、既に男女3人が椅子に座って待っていた。

学生服を着ている少し俯き気味の女子と、面接官から出されたであろう温かいお茶を飲んでいる背筋の綺麗な女性、両手をズボンのポケットに突っ込んだまま足を組んでいるスーツ姿の男性の3人だ。

沢合が「こんちわっす!」と挨拶すると、3人はこちらの方を見て軽く会釈した。




沢合(さわい)さんは空いてる椅子に座ってていいですよ。私はお茶を入れてきますね。」




面接官は爽やかな笑顔で言うと1階に降りて行った。

空いている椅子、と言っても空いているのはお誕生日席とスーツ男の隣しかなかったので、スーツ男の隣に座った。

座る際、横目で男の顔が見えた。

なんとなく嫌そうな顔をしていた気がする。よく見るとスーツの前ボタンが開いているではないか。




(なんつうか、メンタル強いな……。)




待ってる間に誰かと会話しようと思ったが、学生の子は誰とも目を合わせたくない様子だったし、男女2人は目を瞑っていたので話しかけづらかった。




「お待たせしました。」




ナイスタイミング!と沢合(さわい)は思った。

感謝を言いながら面接官からお茶を受け取ると、熱さを確かめるようにして口をつけた。

……やはりまだ熱い。少し冷ましてから飲むことにした。

面接官は、空いていたお誕生日席に座ると爽やかな笑顔で話始めた。




「えー、皆さんに事前に言っていた"大事な話"をする前に、私の自己紹介をさせて下さい。」




面接官は小さく咳払いをした後、自己紹介を始めた。




「私はこの雨瀬事務所の社長の"雨瀬慶冴(あませけいご)"と申します。呼び方はなんでもいいです。好きなように呼んでください。」




なんとなく察していたが、この面接官が社長のようだ。




「それじゃあ次に、皆さんにも自己紹介してもらいましょうか。名前を言うだけじゃ物足りないので……、趣味とかも言いましょう。じゃあまずは沢合(さわい)さんから。右回りでいきましょう。」




名前を呼ばれた沢合(さわい)は元気よく「はい!」と返事して椅子から立った。




「"沢合優矢(さわいゆうや)"です!趣味はまあ、遊ぶことです!おねしゃす!」




この文面だけで見ると小学生が自己紹介してるのかと勘違いしそうになるが、彼はこれでも大学2年の19歳だ。もうすぐ成人する年齢とは思えない。

彼は勢いよくお辞儀して終えると、スーツ男を除いた3人は小さく拍手してくれた。

沢合が椅子に座ると同時に「はぁ……俺か。」とだるそうに呟いて立ったのはスーツ男だ。




「"高岸歩(たかきしあゆむ)"趣味は………掃除。よろしく。」




ポケットに手を突っ込んだままお辞儀をすることも無く、彼はドカッと椅子に座った。こんなのをマナー講師が見たらブチ切れ間違いなしだ。

小さな拍手が静かになると、次の番である女子生徒はゆっくりと椅子から立ち上がった。




「ぁえっと……こ、"(ことぶき)……(あずさ)"、です。……しゅ趣味は、タイピング、とかです……。よ、よろしくお願いします……。」




終始俯き気味だった彼女は、自分の番が終わるとササッと椅子に座った。立つ動作より座る動作の方が速い。

ラストである背筋が綺麗な女性は、立ってから椅子をテーブルの下に入れて自己紹介を始めた。




「"清正早都美(せいしょうさとみ)"です。趣味…と言えるかは分かりませんが、走ることは毎日やってます。よろしくお願いします。」



そう言って彼女はお辞儀をした。とても上品だったが、少しだけ気になった点がある。

彼女の表情筋だ。

無表情でも眉毛がちょっと動いたり目を大きくさせたりと、どこかしら動く時があるのだが、彼女は一切動くところがなかった。動いていたのは瞼と口だけだ。


大木元(おぎもと)もいつも無表情で怖〜い顔をしているのだが、彼とはまたタイプが違うような気がする。

なんというか、ロボットのような感じだ。




(そういや、誰も目合わしてくれへんかったな……。)




一人一人が自己紹介してる時にちゃんと顔を見て聞いていたのに誰とも、一瞬も目が合わなかった。

少しだけ寂しく感じていると、雨瀬(あませ)は「ありがとうございました。」と言って椅子から立った。

そしてズボンの後ろポケットからスマホを取り出した時、横目でしか見れなかったが、清正(せいしょう)の体が少し動いたような気がした。

思わずそちらに目がいきそうになったが、「ここからは」という芯の通った雨瀬(あませ)の声で、沢合(さわい)の意識は完全に彼の方にいった。

彼の顔はもう笑顔ではなく、真剣な顔だった。




「今回のメインとなる"大事な話"を今からします。まずはこれを聞いてください。」




雨瀬(あませ)はスマホを少し操作した後、ガラステーブルの真ん中に置いて再生ボタンを押した。

押してすぐに流れ始めたのは、女の子の声だった。




『お月さまが、丸い………黄色のカバン、で、男の子……こう、えんに………かきの木…まんなかに、ひかりが、ある……男の人、が……何人もいて、黒くて、丸い………車、に…男の子が……のせ、られて………つれて、行っちゃ……………』




録音はここで終わっていた。

女の子は一定のトーンで呟いていたので不気味さを感じたが、最後の方は少しだけ苦しそうにしてた気がした。



「単刀直入に言います。」




覚悟が決まったような声だ。




「この今流したキーワードから未来に起こる事件や事故を阻止して欲しいんです。」



最後まで読んで頂きありがとうございます。

録音の女の子はまだ小学校低学年なので、セリフはひらがな多めにするつもりです。

それでは。

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